魔術師 5
日本魔術協会中部支部、大魔術廃絶部に所属する魔術師、涼風和奏は、大の都会嫌いだった。
それはもう重傷で、毎年のように駆り出される防衛会議も、ただ都会が嫌いだからという理由で初日にばっくれてしまう程だ。そもそも何故上京する上司に高校生である自分が付き添う必要があるんだーと毎回のように叫んでは、呆気なく東京行きの新幹線に放りこまれるのが毎年のお約束、という、そんな少女だった。
そして少女こと涼風和奏は、今年も例に漏れず帰って来た。それはもう長旅だった。
彼女は都会嫌いともう一つ、弱点がある。
俗に方向音痴といわれるそれは、方向音痴で片付けてしまうのが方向音痴の人々に失礼なのではと思うほどで、本部からばっくれた後東京駅に行くまで本来三十分で済むところ、涼風が要した時間なんと三時間。そこから駅構内で一時間迷い、帰って来たのは日付が変わった後だった。
今日一日何故か通信札が使えなかった為、携帯で中部支部に電話をしてみると、上司である松来には「遅い!」と叱られた。いつもなら、「なんで帰ってきているんだ」と怒られるのに、どういうことだろう、と思っていると、自分が中部支部を離れている間に起こったことを、事細かに教えられた。
紛れもない、テロだ。
鳥肌が立った。恐怖した。
だが同時に、涼風はこうも思ったのだ。
――自分がいれば、夕方までにはそのテロ、不発に終わらせることが出来たのに――と。
和川以上のチートと言ってもおかしくない?彼女の存在が全てをひっくり返す!
次回もよろしくお願いします!




