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神の魔術師~Fall MOON and Golden FLAME~  作者: 壱ノ瀬和実
先導者

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102/125

anger

 見田德士(けんだとくじ)は、金沢からやや離れた郊外の病院を訪れていた。


 ようやく見つけた。やはり、千林高城は殺し損ねていたのだ。


 出海夕夏を、つまり、出海夕夏を装って鉄堂光泉のいる町に現れたのは双子の結ということになる。


 見田はその懸念を千林に伝えていたが、千林は「どちらにせよ殺せばいい」と言って聞かなかった。別にそれでいい。こちらにいる片割れはこちらで始末すれば良いのだから。


 真っ暗な早朝の病院。魔術師だけが入ることを許された特別病棟は、魔術に精通した看護師たちの屯する部屋以外、灯り一つついていない。


 さて、このことを連絡するか、それとも出海夕夏を殺すか。どちらが早い?


 どちらにせよ殺すのだ。ならば、殺してから伝えればいいだろう。


 見田は闇夜に隠れるように纏った真っ黒な甚兵衛姿で、懐から刀を抜いた。


 特殊な魔術の施された扉を、解錠魔術で強引にこじ開ける。


 が、開かない。


 何故だ。見田は眉を寄せ訝った。


「開けられないよ。あなたには」


 静かな廊下に声が響く。


 聞き覚えがあった。


 それは、


「やあ。久しいね、出海雪路君。いや何、妹さんのことを聞きつけてね。お見舞いでもしようかと考えたんだが、どうしたことか扉が開けられないんだ」


「人を見舞うのに刀を抜く必要があるとは随分変わった風習ですね」


「そうかな。私は何度もこうしてきたよ」


「残念だが、その扉は担当医にしか開けられない特殊な魔術で閉じられている。治療には不便だが、状況をかんがみればこうするしかなくてね」


「状況、とは?」


「あんたがここを突き止めるような状況が来たときのことを考えてだよ、見田德士。てめえ、どの面下げてここに来た。見舞い? ふざけんなぶっ殺すぞ」


「そう強い言葉を使うのは品がなくていかんな。はて、なんのことだか。私は北陸分所に認められた魔術結社の一員として、分所の魔術師を案じただけのことだよ」


「報告を受けてな。ここに来るまでに、全てを結から聞いた。『先導者(ヴァンガード)』いや、『先遣』。……てめえら、よくも夕夏を傷つけてくれたな」


 見田は肩を上げて、口許の皺を深く刻んだ。


「よくも刀を、ではないのかね」


「どんな宝も妹の命には代えられん。見田德士……死んで償えるなんて思うなよ」


「何もかも、君を殺してしまえば良いだけのことだ」


 二人の魔術師の刀が交差した。


 北陸分所長、魔術師、出海雪路が手にせし刀。


 名工、鉄堂光泉により生み出されたその一振りの名は、



『一切を薙げ――〈天叢雲(あめのむらくも)〉』


次回もよろしくお願いします。

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