第9話『もう一人の記憶』
翌日。
龍は撮影現場にいた。
「カット!」
監督が声を上げる。
「龍、最近さらに良くなったな」
「ありがとうございます」
「前より感情の入り方が深くなった」
龍は笑った。
けれど、自分でも分かっていた。
昨日から残っている感情が、消えない。
悲しい。
寂しい。
誰かに置いていかれたような感覚。
演技が終わっても、それが残っている。
「……」
龍は胸元に手を当てた。
まるで、自分ではない誰かの感情を抱えているようだった。
*
その日の夜。
自宅に戻った龍は、テレビをつけた。
すると――
突然、画面が乱れた。
「……?」
一瞬だけ、白い画面が映る。
その中に――
男が立っていた。
龍は息を呑んだ。
「……俺?」
男の顔は、龍と同じだった。
けれど、髪型も服装も違う。
まるで、別の人生を生きている自分のようだった。
「……違う」
龍は一歩、後ろへ下がった。
「俺じゃない……」
画面が暗くなる。
その直後、スマートフォンが鳴った。
先生からのメッセージだった。
『龍さん。最近、何か変わったことはありませんか?』
龍は画面を見つめた。
自分から連絡しようと思っていた。
『先生。昨日、変な記憶を見ました』
送信。
『どんな記憶ですか?』
『病室です』
『泣いている子どもがいました』
少し迷ってから続ける。
『それと……俺と同じ顔の男を見ました』
しばらくして、先生から返事が来た。
『あなたのデータから作られたものです』
「……データ?」
『記憶だけではありません』
『感情も、人格も含まれています』
龍の指が止まった。
『なんで、そんなものを……』
しばらくして、返事が届く。
『保存するためです』
「……何を?」
画面に、一行だけ表示された。
『あなた自身を』
龍は言葉を失った。
「……俺自身?」
その瞬間――
テレビ画面が再び点いた。
黒い画面。
そこに白い文字が浮かび上がる。
『MIND CHIP』
『RYU MEMORY』
『COPY : 01』
『STATUS : LEARNING』
龍は息を止めた。
「……コピー?」
さらに、その下に文字が表示される。
『COPY : 02』
『PREPARING』
龍は画面を見つめたまま、動けなかった。
自分の記憶が保存されている。
そう思っていた。
けれど――
保存されていたのは、記憶だけではなかった。
感情。
人格。
そして――
自分自身。
龍は暗い画面を見つめた。
「……俺は、一体……何を覚えてるんだ?」
画面には、もう何も映っていなかった。
ただ黒い画面だけが、龍を見つめ返していた。
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HAPPY HALLOWEEN
「悪魔AI」は、まだ終わらない――。
TO BE CONTINUED
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