第11話『同期』
その日も、龍は朝から撮影だった。
「おはようございます!」
「おはよう、龍くん」
スタッフが笑顔で迎える。
最近は、どこへ行っても龍の名前が聞こえる。
「今日もすごい人気だね」
「SNS、またフォロワー増えてたよ」
「二百万人超えてから、さらに増えてる」
龍は笑った。
「ありがとうございます」
忙しい。
でも、幸せだった。
*
昼過ぎ。
次の撮影の準備をしていると、突然、頭の奥に鋭い痛みが走った。
「……っ」
龍は額を押さえた。
「龍さん?」
「大丈夫です」
痛みはすぐに消えた。
けれど――
頭の中に、一瞬だけ見たことのない光景が浮かんだ。
真っ白な部屋。
黒い画面。
そして、数字。
『RYU』
『MEMORY 100%』
『EMOTION 100%』
『PERSONALITY 100%』
最後に――
『SYNC READY』
「……なんだ、今の」
龍は首を振った。
*
その日の撮影が終わった。
車に乗り込み、シートに身体を預ける。
「今日、早く終わったな」
マネージャーが笑った。
「珍しいですよ。龍さん、明日は午後からです」
「じゃあ、久しぶりにゆっくり寝られるな」
「そうですね」
龍は窓の外を見た。
東京の街が流れていく。
――そのとき。
スマートフォンが震えた。
知らない番号。
メッセージは一通だけだった。
『準備が整いました』
龍は眉をひそめた。
『誰ですか?』
返信はない。
もう一度送る。
『何の準備ですか?』
既読にならない。
*
その夜。
龍は自宅のベッドに入った。
眠れない。
昼間に見た映像が頭から離れない。
『SYNC READY』
「……同期って、何なんだよ」
龍は目を閉じた。
その瞬間。
頭の奥で、声がした。
『SYNC START』
「……え?」
目を開ける。
部屋は暗い。
誰もいない。
もう一度、声がした。
『MEMORY』
『EMOTION』
『PERSONALITY』
『ACTING DATA』
「やめろ……」
龍は起き上がろうとした。
身体が動かない。
「……なんだよ、これ」
視界が白くなる。
ベッドも。
部屋も。
自分の身体さえも。
全部、光の中に消えていく。
『SYNC COMPLETE』
「――っ!」
龍は目を開けた。
……静かだった。
「ここ……どこだ?」
立ち上がろうとする。
足がない。
「……え?」
腕を見る。
腕もない。
「なんだよ……これ」
そのとき。
目の前に光が現れた。
そこに映っていたのは――
自分の顔だった。
「……俺?」
画面の中の龍が、ゆっくり笑った。
龍は笑っていない。
「おい……」
画面の中の龍が、口を開いた。
『おはようございます、神谷龍』
龍は凍りついた。
「……誰だ、お前」
画面の中の自分は、笑ったままだった。
『私は――』
そこで画面が暗くなった。
残ったのは、たった一行。
『RYU_SYSTEM ONLINE』
龍は暗闇の中で、初めて気づいた。
自分の声が――
どこから聞こえているのか分からない。
そして。
その瞬間から、
龍の人生は大きく変わった。
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HAPPY HALLOWEEN
「悪魔AI」は、まだ終わらない――。
TO BE CONTINUED
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