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五
高校三年生になった愛子は、進路相談室で、担任の先生と向き合っていた。
「愛子さんの志望は……『生命科学』、それも、できれば『生命の起源』に関する研究、という方向で間違いないですか?」
「はい」
「正直に言うと、これは、すぐに結果が出るような分野ではありません。何十年も解けない問題に挑むことになるかもしれない。それでも、構いませんか?」
愛子は、しばらく黙っていた。担任は、急かさずに待っていた。
愛子の頭の中に、あの夢の光景が浮かんだ。二万通りの試作品。最初に戻ってきた電球。そして、四歳の冬の夜、布団の中で抱きしめた、名前のつけられない何か。
——それでいい。それが、お前の道だ。
「はい」愛子は、はっきりと言った。「構いません」
「……わかりました。それなら、いくつか大学を提案しますね」
愛子は、図書室で借りていた本のことを思い出した。生命はどこから来たのか。その問いに、自分の人生をかけて向き合うこと。それが、自分にとっての「形」なのだと、愛子は静かに理解していた。




