再登場からドン引きまで
ドアを勢いよく開け、その人物はこちらを睨んできました。
「ここに居ましたか!!」
おや、誰かと思えばさっきの。
「みずきちさんじゃないですか」
「誰ですかそれは!って指をささないでください!」
元気ですねぇこの人も。
「探したんですよ!どうして部屋から居なくなったんですか!」
「ホッケの一夜干しが食べたかったんですよ」
「そんなものはないです!」
断言されました。なにこの人、怖いわぁ。
「あれ、その子は誰ですか?」
「恵美ちゃん」
「いや、名前言われましても」
「誰と聞かれたので」
「えぇ!そうですね!聞きましたよ!」
「さっきから元気ですね、みずきちさん」
「あなたのおかげさまで!あと名前!
というよりどうしてさっきから敬語なのですか?」
あ、僕が記憶喪失だと知らないようです。
…。
……。
…………。
「なるほど。確かに、起きたら別世界になっていたら混乱しますよね」
「そう言いつつなんで首絞めてくるんですか」
「私のことも綺麗さっぱり忘れやがって」
「貴女以外のことも綺麗さっぱり忘れてるのでご心配なく」
「……そーゆー問題じゃないのよ」
「ギブギブギブギブ!……ケコッ」
おっと、少し飛んでいたようです。えっと、なんだっけ。なにがありましたっけ。
そうそう。首を絞められて落とされて。
ベッドで寝ていた、もとい意識を強制的に失わされてベッドに転がされていたようです。
おそらく5分ほど寝ていた、もとい意識を強制的に失わさ(略
あれ?そういえば二人はどこに?
診察室にはいないようですね。
ベッドから降りようと手をつこうとすると急に視界が落ちました。そしてベッドに肘をついて停止。あ、そういえば左腕が折れてましたね。忘れてたよごめんね左腕。
診察室から出ました。見ると入り口に診察室5と書いてあります。だからなんだって話ですが。
二人はー、と、あ、いました。
受付奥の職員専用室かなにかでしょうか、そこに入っていくみたいですね。気配を殺してこっそりついていきましょう。
やはり職員専用室のようですね。ファイルのつまったキャビネットや事務机が並んでいます。学校の職員室みたいですね。
二人はその部屋を越えてさらに奥へ。扉を開けその奥の通路へと歩いていきます。
スニーキングに定評のある僕も中腰で足音を殺し、息を潜めながら後ろを歩いていきます。
話し声が聞こえます。
「この先、なんだよね?」
「は、はい、裏口?みたいなところから」
「てことは他の人や……ゾンビが入るかもしれない。塞がなきゃ。ここで待ってて」
「いえ、着いていきます。一人にしないで」
「……分かったわ。全くなんで卓弥さんいないのかしら」
みずきちが絞め落として放置してるからじゃないでしょうか。
恵美ちゃんはこの病院の裏口から入ったらしいです。つまり裏口はバリケードが無い、ゾンビが入り込んでもおかしくない。だから今から塞ごう、そういうことみたいですね。なんで僕は置き去りなのでしょうか。いじめ?
ゾンビが既に入り込んでいるかも、とは思わないのですかね。
というより未だにゾンビが信じられないですね。まだこの目で見てない、というのもありますが。ゾンビなんてアメリカやらの軍がパパっと制圧してしまいそうなものを。こんな全世界に広まるほど能力が、生命力が、移動力が強いものなのでしょうか。あんなんゲームやらアニメやらの中でしか出ませんよ。
と思っていた時期が僕にもありまして。
わぁ、まごうことなきゾンビですね。
どこからどう見てもゾンビです。本当にありがとうございました。
二人の後に続いて行くと霊安室がありその奥に裏口があるようですがその霊安室にいました。どうやらお食事中らしくぽっかりと穴が開いて血も流れ尽くした背中をこちらに向けたままなにかを貪っています。某ゾンビゲームの初代のゾンビ初登場のシーンに似てますね。このままゾンビが顔をこちらに向ければ完璧ですが出来ればご遠慮願いたいところで。
二人はというとドアを開けたところに立ち尽くしてゾンビをボケーっと眺めています。僕が真後ろにいても気がつかないようで。
とりあえず二人を後ろに下げてドアを閉めさせましょう。
ゆっくり二人の肩を掴むと
「「ヒィィ!!」」
あ、そりゃそうなりますよね。
そしてこっちを向くゾンビ。額あたりの骨が露出し口元は血だらけ。とても気持ち悪いですね。こっち来ないで欲しいわー。
とりあえず手を振って意思の疎通をはかってみました。
立ち上がってこちらに突進してきました。
交渉決裂みたいですね。泣ける。
ふぅ、やるしかないみたい。
とりあえず凍ってる二人を後ろに下げて自分が前に出る。
ゾンビは手をこちらに突きだし真っ直ぐ走ってくる。
3.2.1.今。タイミングを合わせぶつかる直前にサイドステップ、そして横からゾンビの足を思いっきり蹴り飛ばした。
走ってきた勢いそのままに顔面を激しく床にぶつけながら転倒するゾンビ。その倒れたゾンビの後頭部を掴み思いきり床に叩きつける。顔面破壊とも呼ばれるそれを何度か繰り返す。鼻が陥没し眼窩も平らになってくる。顔が完全に平らになってもまだ動いている。
なるほど。普通の人間だと痛みにより気絶するはずだがゾンビは気絶しないようだ。
それと自分が後ろに立ってからは大人しくなった。おそらく人を感知するのは視覚と聴覚のみ、匂いでは反応しないようだ。
とりあえず試したいことは済んだ。ゾンビの顎と頭頂部に手を添え思いきり捻った。音とともに首の骨が折れる。
そしてゾンビは大人しくなった。
やはり首を折ると生き絶えるようだ。
あーー。疲れましたー。
集中するとすごく疲れるから嫌ですねー。
と、振り向くと二人がすごい目でこちらを見ています。
「えっと、倒してくれたのはありがたいのですが。なんというか、えげつない殺し方しますよね、卓弥さんって」
「………………あ、ありがとう、ございます?」
なんで僕が罪悪感を感じなくちゃいけないんですか。




