第14話「だいふくくんのゆうき」
おつきさまクッキーの事件があった次の夜。
あずきちゃんとだいふくくんは、光るボタンに導かれて古いオルゴールの前にやって来ました。
そのオルゴールは、お部屋の棚のいちばん上に置かれています。
月あかりを浴びて、静かに輝いていました。
「きれいだね。」
あずきちゃんが言いました。
「うん。でも、なんだか少し不思議な感じがする。」
だいふくくんは小さく答えます。
実は、だいふくくんは少し怖がりでした。
暗い場所も、高い場所も、急に大きな音がするのも苦手です。
でも、あずきちゃんと一緒なら大丈夫。
そう思っていました。
そのとき――
♪ りんりん…
どこからか、小さなオルゴールの音が聞こえてきました。
「あれ?」
ふたりが耳をすますと、音は棚の奥から聞こえてきます。
そして、
「たすけてぇ……。」
かすかな声も混ざっていました。
「あっ!」
あずきちゃんは声のする方へ走り出しました。
しかし棚の奥には細いすき間があり、その先は暗くてよく見えません。
「あずきちゃん、待って!」
だいふくくんが呼び止めます。
でもそのとき、
つるっ!
「あっ!」
あずきちゃんの足がすべり、小さな箱の向こう側へ落ちてしまいました。
「きゃあ!」
「あずきちゃん!」
だいふくくんは急いで駆け寄ります。
けれど、すき間は狭くて暗くて、向こう側が見えません。
胸がどきどきしました。
足も少し震えています。
怖い。
本当はすごく怖い。
でも――
「あずきちゃん、大丈夫!?」
だいふくくんは大きな声で呼びました。
すると遠くから、
「だいじょうぶ。でも、一人じゃ上がれないよ!」
という返事が聞こえました。
その声を聞いた瞬間、
だいふくくんはぎゅっと拳を握りました。
「ぼくが助ける。」
小さな声でしたが、とても強い気持ちがこもっていました。
だいふくくんは周りを見回します。
すると近くに、長いリボンが落ちていました。
「これだ!」
だいふくくんはリボンの端を棚の飾りにしっかり結びます。
そして勇気を出して、暗いすき間へ進みました。
一歩。
また一歩。
怖くないわけではありません。
でも、大切なお友だちが待っています。
その気持ちが、だいふくくんを前へ進ませました。
やがて暗闇の向こうに、あずきちゃんの姿が見えました。
「あずきちゃん!」
「だいふくくん!」
あずきちゃんはうれしそうに手を振ります。
だいふくくんはリボンを差し出しました。
「つかまって!」
あずきちゃんはしっかり握ります。
「せーの!」
ふたりで力を合わせて引っぱると――
よいしょ!
「あっ!」
ぽんっ!
あずきちゃんは無事に上へ戻ることができました。
「助かったぁ。」
あずきちゃんはほっと一息。
そして、だいふくくんを見てにっこり笑いました。
「ありがとう。」
「えへへ。」
だいふくくんは少し照れました。
「本当は怖かったんだ。」
「でも、あずきちゃんが困ってると思ったら、行かなきゃって思ったの。」
あずきちゃんは優しく言いました。
「それが勇気だよ。」
そのとき。
♪ りんりん…
オルゴールがやさしく鳴り始めました。
そして中から、小さな光がふわりと飛び出します。
それは音符の形をした光でした。
「わあ!」
音符たちは空をくるくる回りながら、
だいふくくんの頭の上で輝きました。
まるで、
「よくがんばったね」
と言っているみたいです。
ぴかり。
光るボタンがまた輝きました。
今度は窓辺の近くにある大きな観葉植物を照らしています。
葉っぱの奥には、まだ見たことのない小さな扉がありました。
「あれ?」
だいふくくんが目を丸くします。
「あんな扉、あったっけ?」
あずきちゃんもわくわくしてきました。
どうやら次の冒険が待っているようです。
でも今夜は少し特別でした。
だいふくくんが、自分の勇気を見つけた夜だったからです。




