最終話「おやすみ、おうちのみんな」
葉っぱのトンネルを抜け、
たくさんの不思議な夜を旅したあずきちゃんとだいふくくん。
気がつくと、光るボタンの道はゆっくりと短くなっていました。
「なんだか、いつもと違うね。」
だいふくくんが言いました。
「あたしもそう思う。」
あずきちゃんは光るボタンをそっと見つめます。
その光は今までよりもやさしく、
まるで何かを伝えようとしているようでした。
ふたりが窓辺へやってくると、
そこには今まで出会った仲間たちが集まっていました。
ビー玉の妖精さん。
くもっこたち。
おもちゃの国の王さま。
くまさんたちぬいぐるみの仲間。
みんながにこにこ笑っています。
「こんばんは!」
だいふくくんが手を振りました。
「みんな集まってる!」
あずきちゃんもびっくりです。
すると王さまが前へ出てきました。
「今日は特別な夜なんだ。」
「特別な夜?」
ふたりは顔を見合わせます。
そのとき。
りん。
星のベルがやさしく鳴りました。
すると窓の外に、たくさんの光が現れます。
きらきら。
ふわふわ。
光は夜空をゆっくり流れながら、
おうちのまわりを包み込みました。
まるで星たちのパレードです。
「わあ……。」
あずきちゃんは思わず見とれてしまいました。
「きれいだね。」
だいふくくんも目を輝かせます。
「ふたりはたくさんの優しさを届けてくれたんだ。」
ビー玉の妖精さんが言いました。
「困っている人を助けてくれた。」
くもっこたちが続きます。
「おもちゃの国も救ってくれた。」
王さまもにっこり。
「だから今日は、お礼の日なんだよ。」
すると。
きらり。
きらり。
今まで集めた宝物が光り始めました。
銀色の星。
ガラスの星。
雲のしずく。
金色のボタン。
星のベル。
そして光るボタン。
みんなの光がひとつになって、
お部屋いっぱいに広がります。
すると天井に、大きな星空が映し出されました。
その中には、
これまでの冒険の景色が浮かんでいます。
クッションのくもじま。
くつしたトンネル。
おもちゃの国。
虹色のしずく。
星あかりパーティー。
そして――
おもちくんから届いた手紙。
「あんなこともあったね。」
だいふくくんが笑いました。
「うん。」
あずきちゃんも微笑みます。
「全部、宝物だね。」
そのとき。
窓の向こうの空が少しだけ明るくなりました。
朝が近づいているのです。
「あっ。」
ふたりは同時に気づきました。
すると光るボタンは、
最後に一度だけ――
ぴかり。
と光りました。
そして、
ふわり。
小さな星の光になって夜空へ飛んでいったのです。
「あ……。」
だいふくくんが見上げます。
「あたしたちを案内してくれてたんだね。」
あずきちゃんが静かに言いました。
仲間たちは優しくうなずきました。
「また会えるよ。」
くまさんが言います。
「夜のどこかでね。」
王さまも帽子を取っておじぎしました。
「冒険は終わりじゃない。」
ビー玉の妖精さんも笑います。
「これからも続いていくんだ。」
やがて仲間たちは、それぞれの場所へ帰っていきました。
おもちゃはおもちゃ箱へ。
ぬいぐるみたちは棚の上へ。
くもっこたちは夜空の雲へ。
妖精さんは月の光の中へ。
そして、
あずきちゃんとだいふくくんも、
お気に入りのおうちへ戻ります。
ふかふかの寝床。
安心できるにおい。
大好きな場所。
ふたりは並んで丸くなりました。
「楽しかったね。」
だいふくくんが小さく言います。
「うん。」
あずきちゃんは目を細めました。
「また明日も、すてきな日になるよ。」
窓の外では、
朝の光がゆっくり広がり始めています。
おうちは静かに目を覚まし、
新しい一日が始まろうとしていました。
でも、
誰も知らないのです。
夜になると、
またどこかで小さな冒険が始まることを。
「おやすみ。」
「おやすみ。」
ふたりは安心して目を閉じました。
たくさんの思い出を胸に抱いて。
そして、
優しい夢の中へ――。




