はじめてのおつかい
一話も少々ばかり訂正しました!どこかな二ヤリ。
「はあ、はあ。やっと帝都に着いたか」
森を抜け出した先で目覚めたノーマンは走り続け、やっとのことで帝都に到着した。門番に通行手形を見せた上で帝都に入ると帝都中がお祭り騒ぎだった。帝都にある中央広場では様々な露店とステージのようなものが置かれていた。何が起きているのか分からなかったノーマンは周りの人達にどういう状況なのかを聞いた。
「何やら皇帝陛下が今日を終戦記念日にするっておしゃったそうで。帝都中大盛り上がりなのよねえ。露店を構えている人たちも今日は儲かるぞっておおはしゃぎよ。私の主人もはしゃぎすぎてどこか行っちゃって、どこかで見かけてない?」
「なにやらショーをやるらしいぞ?今回は皇帝陛下も直々に我々の目の前にご降臨なされるそうだ。早く俺も陛下のご尊顔を見てえ!!」
どうやら今日は昔にあった亜人連合との終戦記念日だそうだ。住人の人から聞いたところ今年からというか割と直近で今日を終戦記念日にすると決まったらしい。ショーと言っている人もいたが、何のどういうショーなのかは誰も知っておらず、盛り上がるショーを執り行うという話だけが出回っているようだ。露店の中には奴隷商売を行っているものも多くあり、今は国中の奴隷たちが露店に出品されているようだ。
私は帝都中にあるすべての露店を回った。フィオの特徴と名前を出し、色んな露店を回り歩いたが、そのような奴隷はどこにモ居なかった。
「おそらくは帝都に向かった馬車がついてから三日程度しか経っていないはず、売却されるにしてもそのようなスピードで本来ならいかないはずだ。それにただの奴隷ならば殺すよりも売った方が利益が出るはず。ならば一体どこにフィオはいるんだ!」
そうやって一人で悩んでいたところ中央広場にあるステージの方から歓声が上がる。気になって観てみたところ皇帝陛下その人が降臨されていた。
「帝都に住まう低国民諸君。今日は祝いの日だ。私の力において命令を下す!全力で楽しめ!わッはっはっは!!それじゃあ朴様はそこらへんで適当に見とくからあとはショーを楽しみな!コラクス侯爵が用意したらしいから楽しみにしてろよ!」
私の目で捉えた皇帝というのはまるでただの自信家で調子に乗っている少年という風にしか見えなかった。身長もしかり声もしかり雰囲気もしかり。あれが伝説と聞かされている皇帝だとはその場で信じ切ることは出来なかった。しかしその後。そんなことよりも衝撃的なことが起きた。
ショーが始まったのだ。それは亜人奴隷の処刑ショーだった。獣人にリザードマン、ヒトガタ、エルフ、ハイエルフ、ダークエルフ、巨人族、ドワーフ、エルダードワーフ、ハーピー、天使族、悪魔族。統合亜人貼合の種族それぞれの奴隷が鎖につながれてステージに出てくる。その中にはフィオの姿を見つけた。
「フィオ!フィオ!僕だ!ノーマンだ!フィオー!」
私の声がフィオまで届かない。帝都中の人がいてステージに近づけなければ、周りの歓声で声がかき消されてしまうからだ。それでもそうにか。近づこうとして民衆をどかしながら前へと進み出ようとする。
「フィオ!こっちを見てくれ!気づいてくれ!フィオ!」
既に獣人としての特徴である耳も尻尾も切り落とされてしまって生々しい傷跡が残っている。一人。また一人と種族名と国の名前を言われながら、並べられた奴隷たちの頸が斬り落とされていく。そうしてフィオの順番まで来たところでノーマンは先頭であるステージ前まで出て来れた。そしてフィオと目が合った。
「フィオ!僕だ!ノーマンだ!今「待って。それ以上言わないで。」
助けると口走ろうとしたノーマンをフィオは止めた。人間至上主義である帝国の首都で皇帝陛下と侯爵が用意したショーで亜人奴隷を助けるという行為は死を意味するに他ならない。フィオは嬉しく思いながらも、この愛しい夫を守りたかった。それに、楽になりたかった。結局奴隷としての道しかいきれる道はなかったのだと。幸せを手にしてしまったら、それから離れる時がこの世で一番つらいことだと。奪われる側である亜人には幸せなど辿り着けないのだと。そうやって自身の生を諦めきっていた。
「ここまで来てくれてありがとう。でもごめんね。子供も死んじゃったし、私自身も汚されちゃった。せめてあなただけでも幸せになってね。私はもう疲れちゃった。助かってあげれなくてごめんね。愛してる。」
フィオはノーマンの目の前で首を斬られて絶命した。最後の最後に笑顔になった彼女の頸が目の前に転がってきてこちらを見ている。私はその場に泣き崩れた。気づいたころにはショーが終わており、周りに居た帝都の住人に心配されていた。
「大丈夫かい?兄ちゃん。確かに最近にしては珍しい処刑だし、皇帝陛下もご覧になられているからってテンション上がって飲みすぎだぜ?そんなに感動して号泣しちまうなんてよお」
ノーマンは人がある程度少なくなった舞台の前で話しかけてきた男の胸倉をつかんだ。しかしすぐに掴みかかった腕を離され。
「飲みすぎだって兄ちゃん。そう言えばさっきそこで処刑された女獣人五話かけられてたじゃねえか!盛り上がりすぎてたお前を見た司会の奴がお前を弄って会場は大盛り上がり、その獣人の死体はくれてやるってさ」
それを言われたノーマンは泣き崩れた時に聞こえて来た会場中の大きな笑い声が自身と妻に向けられたもののように感じて悔しかった。しかし、妻が自信を生き延びさせるために最後の言葉を吐いた上で、助けさせなかったことを思い出し、そんなことよりもまずは妻の遺体を回収して、せめて埋葬しようと考えた。ショーの前後で人の数が変わり、人通りが少なくなってきた帝都の中心街を離れて、帝都の外に出る。腰には袋に入った妻の頭の入った袋がかかっており。胴体はお姫様抱っこをして持っている。
思えば生前はお姫様抱っこなどさせてもらえなかった。私よりも彼女の方が力が強く、そんな恥ずかしいことされたくないよーっていっていたもんだしなあ。
そうしてきた道を戻っていた途中で貴族の馬車に止められた。それが公爵閣下との出会いだった。私が妻の遺体を運んでいる様子を見た公爵は馬車に乗るように言い。村まで送ってくれた。最初はどの爵位の方かもわからなければ亜人を差別する筆頭である貴族にさそわれたものだったので、断ろうとしたが、半ば強引に馬車に入らせられてしまった。しかし公爵閣下は私に優しく語り掛けてくださり、また亜人や獣人に対する理解と現代の人間至上主義にまつわる話を道中でしてくださった。帝都にて改めて亜人のあり方を観てしまったノーマンとしては少しでも自分寄りの意見が自身の心の中にある重さを少しでも軽くしてくれるようで話すのが心地よかった。
そうこうしている間に数日が過ぎ。馬車が焼き焦げた村に到着した。私は妻の遺体とその場で焼け残っていた他の遺体を集めて埋葬しようとしたところ、公爵閣下が手下たちと一緒に手伝ってくれた。最愛の人を悼む気持ちは一度清算しきった方が良いと言ってくれて、他の人達の遺体を集めている中。私は先に妻の居たいと向き合っていた。
「ごめんよ。フィオ。私が少し村を離れている隙にこんなことになってしまった。それに君をこんな目に合わせてしまった。必ず救うと誓ったのに。せっかくダンジョンで得た報酬も使い方が分からなくては宝の持ち腐れというやうだな。僕は愚かだ」
私は妻の遺体に触れた。
「それでも、思うんだ。君がどんな姿になっても。君と離れたくない。それに君をこんな目に合わせた連中をそのままに野放しにしたくないって。とはいっても僕には今何の力もないけどね。せいぜい公爵閣下になにかお願いするくらいしかできないのかな。悔しいなあ……本当に悔しいな」
妻の亡骸を眺めながらつぶやいてると自然に涙が込み上げてきた。それと同時にゆっくりと沸々とした怒りも。
「いや。このままじゃ良くない。君のような人がこれ以上出て欲しくない。あの愚かな連中はきっと同じようなことをする。絶対にそれだけは許せない。僕が絶対にどうにかしないといけない」
私は妻の遺体に触れながら自身でも理解の出来ない使命感。果てには帝国を滅ぼしたいとまで行きそうな激しい復讐心とは破壊衝動を感じた。そうしていると目の前にボタンが現れた。赤いぽっちのついたボタンだ。押すべきだ、と声がした。私は衝動的にそのボタンを押した。
そうしたら私の目の前に居た妻の死体が歯車仕掛けの球体となって消えてしまった。
「あれ、フィア!?一体!?どこに!?」
錯乱していたノーマンに後ろから侯爵が駆け寄る。
「ノーマン君。村に残っていた遺体はある程度埋葬が完了した、ってどうした!?そんなに慌てた様子で!奥さんのご遺体もどこにやったのだ!?」
私は駆けつけた公爵に事の顛末を離した。その結果。私は自身の能力によって妻の遺体を機械の魔物に変えてしまったことを理解した。
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今日もいつも通りの日課を送っている。朝の支度を終え、マリーから報告を聞いて、一緒に朝食を食べる。そうして書斎で書類仕事だ。
大商人エンボロスが私との面会後に失踪したことを知った貴族たちは状況を察して口をつぐんだ。次はわが身になることを恐れたためだ。表舞台からエンボロスが消えたことで経済は混乱するかと思われたが、事前に宰相閣下の手配によって臨時の商人が宛がわれることとなった。その人物は私だ。なーんにも話を聞いていない。確かに元々商人をやっていたとは言っていたが全く持って規模が違いすぎる。田舎の小売商と帝国の大商家なんて比べるまでもないどころか比べる対象にすらならない。だが、やらなければ帝国が理想とは違う方向に傾いてしまう。それに、エンボロスの物品の回収や、奴隷たちの管理に関して私が行えるのは非常に僥倖ではある。調査も出来る上で、奴隷の方に関して被害を出すことも多少は抑えれる。文字の読み書きや文官系の仕事が出来る者や武力に長けるものだとかが居るのであれば是非とも引き抜きたいしな。
特に文官は必須だ。なぜならここ最近マリーが死にそうな目をしている。私が出来るはずもない領地運営の仕事の八、九割をマリーが処理してくれている。急に叫びだしたり、吐いたり、数字を見ながら「おっほ」と呟きだしたり、このままではまずい。拷問官としての仕事は他でしてたり、書類関係もやっているはずなのに、ナチュラルにマリーを拷問している様でさすがに罪悪感が限界になってきた。しかしながら現状他に書類関係の仕事を他の人に振れないので、私は涙ながらにマリーを置いて書斎を離れることにした。書斎を離れる際に一瞬、拷問していた伯爵時代の殺気が背中に刺さった気がしたがきっと気のせいだろう。きっとそうだ。
私は屋敷から離れて帝都にあるエンボロスの見世物小屋まで足を運んだ。まさか私がここまでは足を運ぶことになるとは全く持って思っても見なかったが、そこまでたどり着けるようになるくらいには努力をして来れたということなのだろう。ショーの時はいち見物人にしかなれなかったからなあ。
見世物小屋に入ると宰相の手下が数名駐在していた。なんでも私の補佐や支援、ひいては護衛をも兼ねているらしい。最も私に護衛など不要なのだが、少しでも厄介事を引き起こされないようにするための対策らしい。最初に通された部屋は商談室で、貴族たちが持つ客室と同じような豪華さを放っていた。商談室にてソファーに座り、宰相の部下から顧客リストと売られている奴隷のリストが渡された。その中には亜人と呼ばれている一二種と人間、魔物が表記されていた。
前提として言っておくが決して人間の奴隷売買は禁止されていない。戦争捕虜がそのまま奴隷になったケースや借金を払いきれなくて奴隷となったケースもある。ただ、亜人たちと違い人間は法的な保護がある。非道徳的な扱いをしてはならないというのだ。自分たちはするくせにされるのは嫌と考えてるようにしか思えなくて虫唾が走る。いつも感じるが、何かを差別できるほど自分たちは優れているのか?自身が差別をやり返されたときに君たちはどう反応してどう対応するんだ?相手の気持ちや事情や背景をくみ取ったことがないのか?と。一度は気づくべきなのだ。種族ではなく、言葉で通じることのできる同じ生命体としての対話が必要だと。偏見の目を外して、レッテルを外して、攻撃的な意識を退けて。誰もが加害者で被害者であることに気付くべきだ。生命体が生命体である以上はみな平等に歴史の奴隷だ。自分自身に関係なくても国や種族、町や、村ひいては家族だって、それぞれが積み重ねてったものを背負いながら生きるのだ。ただ、誰かが誰かの過去を貪り続けるだけではだめなのだ。一生終わらない泥沼に陥る。それを繰り返していけば簡単に埋まる可能性のあった溝も巨大に広がってしまうのだろう。
おっと、リストを見ながらまた考えにふけってしまった。本当に良くない点だ。なにやら宰相の部下たちがこちらを見つめている。流石にリストを見て思いふけってしまいすぎたようだ。
当初の予定通り、調査は宰相の部下たちに任せて見世物小屋の奥にある奴隷居住区にリストを頼りに足を進めていった。
ノーマン可哀想。私の脳内キャラデザでは受けになるくらいは可愛いのに。
ただこのままではマリーが過労死しちゃうわ!おつかい成功させようね!
それではまた次の拷問で。とはいえ次回も日常回かな。




