表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
清算するはデウス・エクス・マキナ  作者: 白いシロ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/7

終わりよければすべて良し。

 人々は皇帝を称える。幼いころから、自身が誰のおかげで今を生きれているのかを皇帝のおかげと教え込まれるからだ。唯一皇帝にして現人神だと。


 人々は亜人を蔑む。幼いころから、人間より下で下等な生物であると教え込まれているからだ。昔起きた戦争でかなりの被害を出した。元敵国の戦犯民族という認識もしている。故に差別されている。


 帝国で生きている人間は力こそ全て。徴兵制度はなく、志願制だがそれでも人が集まるレベルだ。別に集まるなら集めなくていい。女性や子供は次の世代の育成のために重宝される。武力だけで生産性や発展性がないのであれば他国を侵略して知識も生産力も何もかも領土ごと奪ってやればいい。


 そうやってヴァンデッタ帝国は建国三千年にして大陸統一を果たした。

 さらに、その途中。建国千年頃に起きた出来事によって拷問官という役職が作られ、ヴァンデッタ帝国を影から支える形が完成された。


 本来犯罪者や捕虜などは尋問官という役職が行うのが世間一般ではあった。実際帝国にも以前まではあ

ったのだが、皇帝の圧倒的強さが故にこの役職が作られた。


 皇帝は最強だが、性格は餓鬼臭く最悪だ。戦場に出て起きることは蹂躙。しかし、ただの蹂躙ではない。バラバラにして、変なアートを作ったり。数百年氷漬けにして装飾品として城に飾り付けたり。細胞をいじくりまわして人間の形を留めさせなかったりなど。簡単に言ってしまえば単純にやりすぎるのだ。見てるほかの人間などのことは一切気にしない。自分より弱い存在を遊び道具としか見ていないのだ。


 それに対して同情と同時に政敵の処理などにも使えるということで、ただ単に取り調べを行ってちょっと痛めつけて終わる尋問官ではなく、ある程度好き勝手にしてもよく、生かすも殺すも自由で宰相の次に裁量権の持つ拷問官という役職が作られた。皇帝には度々、ショーのように目の前で犯罪者を裁いたりも行われていたという記録が残っている。

 拷問官は歴代鉄の血族が宰相と兼任。または宰相が自身の息子や娘などを指名し、次に繋いでいった役職だ。鉄の血族以外の拷問官は歴代でもノーマンしかいない。

 ノーマンが自室にて朝起きて、着替えを済ませていると寝室のドアがノックされる。

 ノーマンは軽く返事をして入室の許可を出した。

「本日より秘書としての仕事を行わせていただく。名前はマリーナだ。マリーとでも呼ぶがいい。……よろしく」

 そう言ってマリーと名乗る女性はノーマンに頭を下げた。

「しかし、良かったのか?私を殺さなくて、拷問官としては私を殺すべきではなかったのか?特に宰相閣下に楯突くような形で居る侯爵派だった私を。」

「いや良いんだ。君の伯爵としての身分は既に無くなった。まあ存在そのものを亡くしたことにはしているのでね。私は君に対しての私怨はないし、侯爵ではなく私の力に希望を見出した君はただ死なせるよりも私の下で動いて欲しかったのさ。特に宰相閣下と違って私は情報収集の面ではまだまだ限度があるからね。」

 そう言ってノーマンは元コミステース・ヒッポス伯爵ことマリーに語り掛けた。拷問官という役職には独自の裁量権が存在する。宰相閣下には許可を得ているし、なにより今回は一切殺せといったような旨の指令は受けてはいない。特に彼女に対しては私怨も一切存在していない。というのが彼女が生かされ第二の人生を生きれている理由の一部である。それにノーマンとしては女性を手に欠けるようなことはあまりしたくはなかった。既に多くの数の人を直接的にも間接的にも殺してはいるが、自らの手で、心で、身体で、意思で、殺したくはない。妻のことを思い出して、自身が嫌悪している存在に近づいてしまうと思っているからだ。そのため自身で新しい名前と戸籍と役職を与えたというのがことの顛末だ。


 このような役職を引き受けて行動している以上はまともな思考など出来そうもない。きっと既に狂っているだろう。実際、私が村に居た時なら必ずしないであろう拷問や心の折り方を私はいくらでも思いつくし、実行している。ただの復讐者として行動をして、その上で次に私の妻のような被害を出さないために、あの皇帝は必ず処刑する。宰相閣下が私に拷問官の役職をくださったのは本気で私が皇帝を殺せると思ってくださったからだ。恐らく覚悟も力もなければ私は既に殺されていたのだろうな。


 ノーマンがそんな風に過去や自身の現状を想いふけっているところにマリーが心配そうな様子で話しかける。

「おい、大丈夫か?何考えているのか分からないが、とりあえず朝食の時間だぞ。食堂で使用人たちが待っているぞ」

こいつは本当に拷問の末屈服した私の秘書なのか? と口の悪さから感じながら朝食の席に向かう。


 普段であれば食堂の長机にてノーマンが食事を終えてから他の使用人たちが食事を始めるため、食事の時間は机周りを囲む使用人と一人で静かに食べるノーマンだけなのだが、今回からはマリーナも食事の席に連なっている。長机の両端に向かい合うようにして食事を行っている。


 流石は元王国貴族。血に飢えた帝国貴族の大半よりもきれいな所作で食事をしているな。口調だけ気になるものだが、王国の貴族だった時からあの喋り方なのであれば、素行が悪いのかそれとも文化が違うのか。下らんことだが、少々興味があるな。食後にでも聞いてみるか。

 食事を終えた二人は屋敷の中にある書斎へと向かう。と言っても実際に書斎として使いは始めたのはマリーナが来ることになってからだ。元々ほぼ一人で仕事をしていたノーマンは自室に手こもるように仕事をしていた。拷問の報告書や依頼書の承諾。そして貴族の義務としてある領地管理。ノーマンは宰相の裁量で一番手のかからない帝都近郊の都市の管理を任されているのだが、それでも一人でやるには少々ばかり手がいる。そのため、自室にて終末(デウス・エクス)|兵器(・マキナ)を展開して自身の手だけでなく、機械の腕をも利用して仕事を終わらせていた。ちなみに宰相は能力は知っているものの、拷問と戦闘用の用途しか教えていないため、亜人の使用人の中に読み書きができ、管理経営の出来る優秀な人材が存在していると思い込んでいる。

 復讐劇をしている最中にもそんな苦労する日常を送っていたノーマンにとってマリーナは天からの遣いのようにも感じた。

「さて、マリーナ。私は拷問官としての仕事も行ってはいるが、領地運営の仕事も貴族としてあるのは分かるよな。秘書として君の力を借りたい。頼めるかな」

「私に拒否権なんてないくせに何を言っているのだ。それにこの程度のことどうってこともない。貴族としての義務とは言うが、帝国だけでなく、王国でも領地経営の経験もある。大船に乗ったつもりで任せてくれ」

 そう言いながらも、拷問で見た無様な姿と屋敷に来てからの口調とかの素行から見て、どこまで信頼できるものか疑ったものではあるが、純粋に作業効率が上がる可能性があるのが好ましい。一度この時間でどの程度仕事を任せれるか検討しよう。と、思っていた。ノーマンは領地経営の仕事を全てマリーナに任せることに決めた。

「この領地はなぜ、畑作ばかりを行っているんだ? 土壌的もそうだが、近くにある川からの水源のことを考えても他の農業の導入を検討してもいいだろう。ちょうど近隣の都市に農民が仕事を失くして困っているらしいからそいつらを行かせて農業改革を起こしてやろう」

「あとこの書類は不備があるな。この孤児院横領しているんじゃないか? 計算も合わなければ無茶苦茶だ。まさか前まであまり気にせずに支援していたわけではないだろうな」

「おい、これ恋文ではないか!? こ、婚約だとお! それも複数の女性からいくつも届いている……私なんて、王国でも帝国でもそういうのなかったのに、クソォ……」

 最後はともかく全体的に良く仕事ができているというかはっきり言ってほぼズルをしている私と比べてみてもスピードも処理の仕方も私以上のものだった。ただの村長の息子だった私にそういった教養や才能がないのは理解していたし、効率厨だからほぼ最低限の処理しかしていなかった私だが、圧倒的な差を感じた。心の底から殺さなくてよかった。()()()のようにこれは天啓なのか。


「マリー。お前実は妖精だったりしないか?」

「なんのだ?」

「領地運営及び事務作業の」

「そんなもの居てたまるか!お、それより書類の山の中に次の拷問の依頼書が入っているぞ。宰相からだ」


 私はマリーから宰相の依頼書を受け取り中身を見た。どうやら今回の依頼の相手は何の躊躇もなく殺すことになるだろう。私は手紙の内容を見ながら徐々に自分の口角が上がっていることに気づいた。復讐や正義。何かしらに妄信や傾倒してしまった以上は、自身の今までのやってはいけないことという価値観よりも、やらなければならないという義務感が働く。そしてその義務を果たして喜べる。


「マリー。さっさとこの書類仕事終わらせて仕事の準備といこう。今回の拷問は俺一人では決して行えない。出来るだけ大準備を整えてから行おうと思う」

「へえ。そんなに大物なのか。相手は誰なんだ」

「帝国きっての大商人だよ。奴隷商売のね。それに私の妻であるフィオを販売していた張本人でもあるらしいね。私個人の私怨と亜人という種の恨みを次々とはらせそうだ。出来るならここから人間至上主義の撤廃の希望を見出したい。一仕事を任されてくれるかい? マリー」


「まあ、仕事だからな。調査も含め任せておけ。どうせこれからあんたの仕事に携わることになるだろうから拷問部屋も付き添うぞ。トラウマを克服したいし。あ、ただあの改造兵士は出さないでね。あれだけは生理的に無理。少なくとも当分は見たくはないわ」

 マリーの顔は一瞬頼もしく思えたし、拷問を乗り越えた勇気と自信を感じたが、改造兵士を思い出して酷く怯えた表情をしている。別に私が何かを言ったわけでもないのにそんな被害者みたいな顔と態度を出されても困るんだが。


 そうしてノーマンはマリーと一緒に商人の拷問の準備のために能力をフル活用しながら書類仕事を終わらせ屋敷を後にした。

最近自身の貯金を拷問している作者です。

ギャンブル勝てないかな。勝ちたいな。あ、ダメですかそうですか。……そうかあ。

あ、次回拷問編です。それではまた、次の拷問で。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ