プロローグ
ここから二章です。
side???
「お前は僕様と友達になってくれるか?」
自身の目の前で、襲い掛かってきた魔獣を蹂躙し、返り血を浴びているにも関わらず笑顔でこちらを見据える少年を視界の正面に収める。
ちょうどその時は、神と名乗っていた存在が一切姿を現さなくなった時期だった。それと同時に今まであった保護領域が消え去り、人間の住む地域まで魔獣が姿を見せるようになってきていたのだ。そんな絶望的な状況の中、私はどうにか食い扶持をつなぐために近隣の森に入り、狩りを行っていた。
きっと家に帰ったら父や母に怒られるのだろうが、それでも食料を持って帰ることが出来れば笑顔を絶やすことなく過ごし続けることが出来るはずだ。子供ながらにそう考え次々と小柄な野獣を仕留めていった。しかし野獣の地のにおいにつられて、魔獣が近くまで来てしまい、絶体絶命のところを助けられたのだ。私と同じくらいの年齢に見えるものの、肉体は黄金の鎧をまとっており、凶悪に見えた魔獣を一切の傷を負わず、一撃で仕留めて見せた。
「うん!助けてくれてありがとう!]
私は目の前に居る少年に食い気味にそう返事をしてお礼も言った。救ってくれたことへの感謝もあるが、彼の強さに惹かれた。
「そ、そうかあ。僕様と友達になってくれるのか。えへへ、なんか嬉しいな。お前名前はなんて言うんだ?」
「名前はまだないよ。成人してないからね。でもおうちの名前はシデーロスって言うんだ!神様?から名付けて頂いたありがたい名前なんだって!」
私は目の前の少年に向かって、父や母から教えられた家名を教えた。何やら意味があるらしかったが、その時の私には理解まではしきれなかった。
「そうか!それはいい名前だな!僕様の名前はアーロンって言うんだ!自分で名付けたんだぞ!凄いだろ!」
私はアーロンという少年と仲良くなり、私の家族が住む家で一緒に暮らすようになった。彼は生まれた時から両親はおらず、村の中で世話係が入れ替わりながら育てられたらしい。しかし、ある時、力を入れ、魔獣や野獣を大量に持ち帰ったところ恐れられ、村で疎まれるようになった。そのうち追放をされ、流浪の旅をしていた時に私に出会ったそうだ。
「僕様はただみんなに喜んでもらおうと思っただけなのに……」
私は彼の気持ちが痛いほど理解できた。自分と同じで、誰かに喜んでもらおうとあの森に入ったからだ。それに初対面で彼は私に友達になってほしいと言ってきた。きっと一人で寂しかったのだろう。私と同じ少年であった彼の心細さなど察することが出来ないくらいには。だから私はあの時誓った。
「もう大丈夫だよ。アーロン。私は君を置いていかないし、寂しい思いをさせない。僕と君で一緒に遊び続けよう!君が喜べば僕は嬉しいし、僕が喜べば君も嬉しい、でしょ?」
私はアーロンに手を差し伸べた。今度は私が彼を付ける番だと、自身への誇らしさと嬉しさと高揚感を感じた。少し落ち込んでいたアーロンも私の顔を見て明るい笑顔を取り戻し、私の手を取る。
「うん。うん!そうだな!お前と一緒に居ればきっと楽しい!僕様たちはこれからずっと一緒だ!」
その時の私は知らなかったのだ。この時の両者の誓いとあり方がどこまでの影響を及ぼすことになるなんて、いつしか君を殺すことを目標にするなんて。でも楽しいね。やめられないね。君もそうだろ?アーロン。
♢sideノーマン
奴隷たちとの初顔合わせがあった翌日。早速個人個人の面談を行っていくことにした。書斎にて面談を執り行うことにしたものの、横では仕事机に全力で向き合っているマリーの姿が見える。初対面時の気品あふれた姿も、やつれすぎて全く持って見えない。早く救ってやらねば。
最初に面談するのは猫獣人の女性だ。前回の場で亜人の取りまとめ役をしようとしてくれた子だ。
「改めましてよろしくお願いいたします。ノーマン様。私は良く勘違いされてしまうのですが、獅子の獣人でございます。先述した通り、奴隷としての名前を持ち合わせておりません」
「そうか、獅子の獣人だったのか、君は皆のまとめ役のように感じたのだが、仕事としてはどういうのが得意なのだろうか?」
ノーマンは初対面の時に勝手に猫の獣人だと認識していたのを頭からすっ飛ばした。
「振っていただけるお仕事でしたら全てこなす所存ではございますが、しいて言うのでしたら。そうですね、戦闘を得意としております。獅子ですので」
基本無表情で語っている彼女だったが、この時ばかりは無常上の中のドヤ顔を感じられた。
「あ、それと私と同様に戦闘が得意な者もおります。というより、戦闘のみでしか活躍出来ないものもおるのですが……」
「そ、そうなのか」
「ノーマン様のご明察通りに私は長老の方々から今回の奴隷たちのまとめ役を任されております。ですので、他の奴隷たちがどのような仕事を得意としているのかは把握しております。過去のことや、個人のことは私自身から述べるのも意味がないように感じますので、どうかご自身でお聞きください」
ノーマンはその言葉に頷きながら、彼女から十二人の奴隷たちの得意分野について聞いた。
彼女を含んである程度任せれば何でもできるのはヒトガタ、ハイエルフ、天使族に悪魔族だそうだ。特に天使族と悪魔族は書類仕事は得意らしい。元々どちらも契約や管理関係の仕事をしていたらしい。彼らの種族の寿命はまだ明らかになっていない程度にはあるらしいから、奴隷になる前はどのような仕事に就いていたのだろうか?
「私を含め彼彼女らは、戦闘も大の得意です。しかし、出来ることならヒトガタの子は戦闘に赴かせたくありません。まだ幼いというのもございますが、もし戦闘の場面であの目隠しを外すようなことが起きてしまえば、今の彼の容量では堪え切れる気がしないのです」
ヒトガタは容量を超えると爆発四散して死んでしまう。特に戦闘では大勢がその場に居ることになるはずだ。確かに戦闘に行かせるわけにはいかないだろう。ただ、幼いながらに強いというのは潜在能力の強さが伺えて来る。
「分かった。彼を戦闘に連れて行かないことを約束しよう」
「ありがとうございます」
次に純粋に戦力で見た場合はドワーフやエルダードワーフ以外は単体性能として強いそうだ。獣人の彼女とリザードマン、ハーピー、ダークエルフは近・中距離戦闘を得意としている。エルフ、ハイエルフ、天使族に悪魔族は中・長距離戦闘を得意としている。最後に巨人族にはなるが、彼の本来の図体であれば全距離全方面に対して有効だそうだ。純粋にマリーを助けるために見世物小屋へと向かったはずなのだが、まるで亜人の軍団でも作ろうとしているのかという構成になってしまっている。話の内容を聞いていたマリーも、都合のいいことを言って自分のしたいことをしてきたのか!とでも言いたそうなくらいには怒りの形相でこちらを睨みつけている。これでも私は上司だぞ?
「なるほどな、ある程度の概要は理解できた。これから他の人達も面談していこうと思っているのだが、それまでマリーの書類仕事を手伝ってやってくれないか?言いそびれていたのだが、私は彼女を書類仕事の地獄から救うために見世物小屋に赴いたのでね」
マリーが嬉しくて今にも泣きそうな目でこちらを見つめている。いよいよ壊れてしまったのだろう。感情の起伏も激しければ手のひらもくるっくるだ。
「承知いたしました。私共の役割は理解しております。しかし、彼女らと面談する前にもう一度見世物小屋に足を運んでくださいませんか?急ぎで。長老たちにそうするように伝えて欲しいと言付けを預かっておりましたので。書類仕事に関しては面談前にはなってしまいますが他の子たちにも手伝ってもらうので安心してくださいませ」
私はそれを言われ改めて話すことなどあるのか疑問に思いながらも、面談も今の書類仕事も私にとっては火急のようではなかったため、他の奴隷との面談や書類仕事を放置して見世物小屋に向かうことにした。
いやあ二章に突入とさせていただきます。
拷問はこれからも続けていきますが、他にも色んな要素や場面を書けていけたらいいなと思っております。
それではまた次の拷問で。




