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【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします  作者:


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「ロザリーお待たせしたわね」


 エリルシアは薄膜に手を掛ける。

 だがやはりと言うか…ネデルミス側に入る時と違って抵抗を感じない。

 ここで思い出したのは『管理者以外に何故、調整者が必要だったのか』だ。


 恐らくエリルシア以上にこの薄膜を越える事が、魔法大戦以前の各地管理者には、難しかったのではないだろうか…。

 土地に縛られる呪いと表現したくなりそうだ。


「通れそう?」

【ううん……やっぱり無理ぽい】


 ならば、思いついた方法を試してみるまでだ。

 エリルシアは手に少しだけ魔力を集める。

 その様子をロザリーは、首をコテリと傾けて見つめていた。

 手を取るよう促し繋がった事を確認してから、手に集めた魔力をロザリーへと流し込む。


 そしてそのまま引っ張った。

 かなり抵抗があるが、それでも少しずつロザリーが境界の薄膜を越え始める。


「っく……」


 他に思いつかず、強引な手法を選択したのだから覚悟はしていたが、それにしたってこれはかなりな重労働だ。

 ロザリーの全身をネデルミス側に引き込み終えた頃には、肩で息をしている始末。


【エリルシア、大丈夫?】

「……はぁ、何とか…ね。

 それじゃ行きましょうか」

【うん】


 繋いだ手は離せない。

 多分だが……手を放して魔力が途切れた瞬間、ロザリーは薄膜の向こうに引き戻されるか、最悪四方八方に弾き飛ばされる。

 そんな予想図を簡単に思い浮かべる事が出来た。


 氷の道は脆く、ネデルミス側の川辺に辿り着く頃には、半分以上崩れ消えていた。

 川辺に降り立ってから、エリルシアは来た方向――ロズリンド、その先の領に向けているのか、遠い目で見つめる。


【エリルシア?】

「ぁ……ごめんなさい。何でもないわ」


 エリルシアはロザリーと手を繋いだまま、待たせていた者達の方へ向かう。

 だが、想定外の事が起きた。

 全員の目がエリルシアではなく、その横に向けられている。


(……ま、さか……見えてる…?)


 魔素の塊であるロザリーの姿は、エリルシアにしか見えないのではなかったか?

 気配はファング達、感覚の鋭い者なら感じ取れていたみたいだが、ロザリーそのものを指摘される事はなかった。


 いや、気配も最初の間は誰も気付いていなかったと思うのだ。

 だから、気配がどうのと言いだした時に酷く驚いた記憶がある。

 けれどそれも今となってはどうでも良い事だ。時間に余裕があるのなら検証してみたかったと思わなくもないが、現実として時間の猶予はない。


「……ウィスティリス嬢…その少女は何ですか?」


 レヴァンが冷静に訊ねてきた。

 その声を契機に、その場の視線がロザリーからエリルシアへと向けられる。

 まぁ…見えていると言うのなら、当然の反応だろう。


 形は人間…しかも年端も行かない少女の姿だ。

 しかし纏う色は薄緑一色。

 今は瞳の色が不穏な色に代わってしまっているけれど、元はその瞳も透き通ったビードロ玉だった。


 普通の人間ではないと、どうしたって思ってしまうだろう。

 そしてその考えは正解だ。

 なにしろ彼女は本来言葉を交わせるなんて思い至る筈もない、魔素の塊なのだから。


 エリルシアはふぅと小さく息を吐いた。


「彼女は敵ではありません。

 見ての通り人外である事に違いはありませんが……この地を救ってくれる存在です」


【エリルシア、早く行こ

 急がないと……わたしの魔素じゃ相性が良くないから】

「あぁ、そうね。

 浄化はゆっくりでも、抑え込むのも厳しいかしら?」


 エリルシアはロザリーの方へ顔を向けて問いかけるが、どうやら声はエリルシアにしか聞こえないようだ。

 尤も、エリルシアも最初は何を言っているのかわからなかったから、おかしな話でもないのかもしれない。


「抑え込むのも無理と言うのは……その少女が抑え込む? …何、を…?

 ぃゃ、それより…その子が救世主だとして、無理だと言うなら……まさか君が…?」


 声を震わせるラフィラスに目を向ける。


(『察しのいい奴は(以下略)』……ね…)








ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。

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