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《以下、原文そのまま》
《お父様へ
大変なの! エリィがどっか行っちゃったみたい
リコが駆け込んできて発覚よ!?
冒険者ギルドの魔具が使わせて貰えないようなら、鳩になるからお父様がこれ見るのは何時になるのかしら
あ、それとなんか変な部屋まで増えてて、どうしたらいいのかわかんないの!
なんか、書いたのはお祖母様っぽい
それに見た事もない様な、多分魔具だと思うんだけど、ずらっと置かれてて意味不明のちんぷんかんぷんなのよ
パラパラと見たけど、蔓がどうのとか、瘴気がどうのって…これ、何かしら?
兎に角、もう色々と訳がわかんない事になってるから、一回戻ってきて!
追伸・お母様ったらまだ到着してないの! 途中で絶対に寄り道してるわ!
ティルシーより》
エリルシアは無言で額を押さえた。
家族内の手紙だから、別に形式に乗っ取れとまでは言うつもりはない。
しかし……これはあまりに酷過ぎないだろうか……。
仮にも次期侯爵夫人が書く文面ではない。
とりあえず分かった事は、姉ティルシーは祖母の部屋にあった物を、殆ど理解していないと言う事。
部屋を見つけるに至った経緯やタイミングがわからないので、もしかしたら読み込む時間がなかったのかもしれないが、それにしたってまるで子供が友達に宛てたような…そう言って差し支えない文面は、どうにかした方が良いと思われる。
(つ、つまり…よ、お父様はさっぱり何にもわからないまま、此処迄駆け付けたと言う事……申し訳ない事をしてしまったわ)
止められるのがわかっていたので、例え時間を巻き戻せたとしても同じ選択しかしない自信はあるが、ほんのりと罪悪感は感じ……なくもない。
案内されるまま建物内に入ると、少し大きめの部屋に置かれた長机を避ける様に、壁際に騎士が数名並んでいた。
一瞬緊張が走るが、見れば騎士達は両手を後ろで組んだ姿勢で、帯剣もしていない事が見て取れる。
ネデルミスサイドの護衛なのだろう。
話に加わる事はないと思われる。
ロズリンド側6名…ラフィラス、レヴァン、マーセル、ティルナス、ヨナス、そしてエリルシアは見かけた事のない人物が一人、その向かい側にプルガが只一人腰を下ろした。
タッパーと他の騎士達は、さっきまでの姿勢で立っている。エリルシアは短辺…置き方次第ではお誕生日席と言われる箇所に腰を下ろした。
全員が席に着くのを見て、プルガが徐に口を開き、予想だにしなかった行動に出た。
「図らずもこうしてロズリンドの要人と対面出来た事に感謝する。
そして…まずは謝罪したい。
我が国の愚か者が、貴国に多大な迷惑を掛けた…不愉快にさせた事を詫びさせて欲しい」
そう言ってプルガは座ったままではあるが、ゆっくりと頭を下げた。
「王!?」
「へ、陛下…」
壁際に並んだ騎士達に動揺が走る。
「控えろ」
それをプルガは一睨みで黙らせた。
「すまない。
正式な謝罪については、後日改めて使者を立てるつもりだ」
それに対し、口を開いたのはマーセル・ギアルギナ。
外交を担当している事もあり、次期とは言え公爵家の彼が口を開くのは順当だろう。
「それは…偽の書簡について…と考えて宜しいですか?」
「そうだ。
我が国にとって恥でしかない…だがこれほどの迷惑を掛けた貴国に対し、一切説明しないと言うのは許し難い事であろうからな……我が不肖の子等が、本当に済まない事をした。
我はあの愚か者どもを捕らえ、処罰するためにケメデ迄来ていたのだ」
「なるほど。
貴国からの謝罪について、今は言及しない事をお許しいただきたい。
勿論、我が国を愚弄するような書簡を安易に許すつもりはない事は、頭の隅にでも留め置いて欲しい所ですが……」
マーセルは、居心地悪そうにしているエリルシアの方へ顔を向けた。
「御令嬢の迎えが主目的でしてね。
何故彼女がネデルミス側で、しかもプルガ王陛下と居たのかはわかりかねますが……連れ帰っても宜しいでしょうか?」
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