何か光った
小屋の前に戻る頃には、俺とネルは離れていた。何故かはわからないが、あの姿をみんなに見られたくなかったからだ。
ネルは相変わらず下を向いて、落ち着かない様子だった。
旗を持った三チームと、何故かニヤニヤしているシアが合流し、今日の肝試しは終了となった。そして、三つの旗を回収しているシアに訊いてみることにした。
「なぁシア。お前森に用事があるって言ってたけど何だったんだ?」
「あぁ、それなら。面白いものを見に行ってたんだ」
「面白いもの? 見れたのか?」
「もちろん。三回も見れたよ……君たちくっつきすぎじゃないか?」
それを聞いたネルが、隣で顔を赤らめるも、俺はシアの言ってることが理解できなかった。まぁ、面白いものが見れたならよかったか。
すると、そこへアランとユアが俺たちの元へやってきた。そして、アランが俺たちの顔を見て言う。
「……何かあったのか? みんな、表情が弱ってるみたいだが」
シアは平然と答えた。
「何もなかったよ? ね、みんな?」
ちなみに部屋に戻った後、シアはレオに呼び出されて、怒られていたらしい。何についてかはわからないが気の毒に……まぁ、レオに怒られて動じるような人間でもないか。
俺もネルと共に部屋に戻ったが、しばらくの間何も話さなかった。何故だろう、頭の中ではずっと、森の中の光景が流れていた。
なんだか、落ち着かない……俺は、居ても立ってもいられなくなって、ネルに提案した。
「デッキに出て、星でも見ないか?」
「え……? うん。見よっか」
俺たちは部屋を出て、デッキにある椅子に腰掛けた。満天の星空の下、二人でしばらく静かにそれを見ていた。
「ねぇ、クロード」
「どうした?」
「私ね、今年の学イチは絶対に獲りたいと思ってるんだ。だから、放課後時間がある時にでも魔法について教えてくれない?」
「もちろんだ」
でも、学イチか。俺は獲りたい理由もなくなってしまったが、ネルはまだ狙っていたんだな。
「で、学イチを獲ったら何を頼むんだ?」
「もちろん秘密だよ」
「だろうな」
「でも、多分そのうちわかるよ」
「そうなのか?」
なんだろう……食堂に新たなメニューでも作るのだろうか。「ネルのおすすめ定食」とか? だとしたら毎日食べる。
そんなわけはないと思いつつも、少し楽しみになった。
すると、背後で扉が開く音がした。見ると、アランとユアがデッキにいた。アランが、俺たちの方を見て言う。
「なんだ、先客がいたのか」
俺とネルの座っていた反対側に、二人が腰掛ける。俺はふと、アランに聞いてみた。
「なんでデッキに? 星でも見に来たか」
「まぁ、そういうことだ。俺はよく、家族と旅行に行っていたんだが、みんなで星を見る時間が好きなんだ」
「そうか」
アランの家族……魔獣のスタンピードによって命を落としたんだったな。彼は皮肉にも、その大嫌いな魔獣と星を見ているわけだが……。
「クロードは肝試し行ったのか?」
「あぁ、ネルとな。ただ、何も起こらなかったよ」
「だよなぁ」
すると、ユアが隣で安心した表情を浮かべた。よほど怖かったんだろうな……しかし、ここでシオの作り話だったというわけにもいかないので黙っておく。
すると、ネルが言った。
「アランくんは、今年の学イチは狙ってるの?」
「うーん……もう狙う理由はないな。けど、クロードに負けるのは癪だから狙うつもりだ。本気で挑むよ」
なんで俺に負けたら癪なんだ。前回はそのおかげで勉強会に入れただろ。それに、勝負を挑んできたのはアランの方からだったはずだぞ。
相変わらずだな、コイツは。
すると、ネルが立ち上がって言った。
「今年は私が穫るけど、許してね?」
その言葉は、ネルにしては珍しく、自信に満ち溢れていた。
俺も同じく立ち上がると、言った。
「いや、俺が穫るかもな」
久々だな、この感覚。そういえば俺たちは学イチを競い合うライバルだったな。勉強会の活動も、これから活発になるだろう。この臨時の休暇を満喫して、学イチに備えよう。
すると、ユアが言った。
「何か光った」
ネルはハッとして言った。
「もしかして火の玉……?」
「ううん、流れ星。ほら!」
彼女が指さした先は夜空だった。吸い込まれそうなほどに広い大空を、無数の星が流れる。しばしの間、俺たちは無言でそれを眺めていた。
俺は心の中で、そっと願い事をする。
『ネルと、もっと一緒にいたい』




