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楽しいからこそ

 部屋に戻り、しばらく話していると、ネルが大きなあくびをした。


「そろそろ寝るか?」

「うん……クロードは眠い?」

「俺もそこそこ眠いな」


 俺はベッドの上から毛布を一枚取ると、床に敷いた。そして、靴を脱いで寝転ぼうとするが……ネルに止められた。


「待って、クロード! ……床で寝るの?」

「そうだ」

「いやその、ベッドにしたら? ほら、床は寒いし」

「魔獣だった頃は森の地面で寝ていたんだ。これくらいなんてことない」

「それは魔獣だったときの話でしょ……?」


 確かにそうだが……俺は本当に床で大丈夫だ。枕とかも必要ないし。


「ネルは今日、沢山釣って疲れているだろうし、ベッドを使っていいぞ」

「でも、クロードが床なのは嫌だよ」

「床でもなんとかなる。それよりネルを床で寝かせるほうが俺は嫌だ」

「う……なら! 二人で、その……二人で寝れば解決じゃない?」

「……それもそうか」


 俺は立ち上がると、毛布を持ってネルの座っている隣りに寝転んだ。そして、毛布を身体にかけて言う。


「狭かったらごめん」

「えっ……! も、もちろんいいよ……というか、いいの?」

「何が?」

「一緒に寝ていいの?」

「あぁ、むしろネルの側なら安心できそうだ」


 ネルは壁の方を向きながら布団を被ると、そのまま全身を包んで喋らなくなってしまった。俺が水魔法を使ってランタンを消し、そっと目を瞑ると、小さなネルの声が聞こえた。


「……クロード」

「どうした?」

「おやすみ」

「あぁ、おやすみ」



 ……目が覚めると、ネルはもう起きていた。ベッドの縁に腰掛けて、俺が起きたのを確認すると「おはよう」と微笑んだ。


「ネル、早起きだな」

「私はいつも早起きなんだよね。学校がある日も、ない日も」

「そうだったか。で、よく眠れたか?」

「うん、眠れたよ。クロードは?」

「俺はもうぐっすりだ」


 俺はそっと起き上がると、大きく伸びをした。そして、今日のスケジュールを思い出してみる。村に戻って買い物をするのだったか……ということは昼食も村で何か美味しいものが食べられるのだろうか。楽しみだな。



 部屋を片付け、荷物を準備し、小屋を後にした俺たちは村へ向かった。

 村でお土産を探したり、全員で昼食をとったりしていると、時間はあっという間に過ぎていった。勉強会組が、こうして全員で集まって何かをしたのは今回が初めてだ。


 これからは試験が迫っているので、こんなに長い休みはもうしばらくはないだろう。


 俺は少し、寂しくなった。楽しい時間は、楽しいからこそすぐに過ぎ去っていくものだ。



 帰りの馬車で、他の三人はぐっすりと眠っていた。ネルも、早起きしたんじゃなくて、普通に眠れなかったんじゃないか……? ……ちなみに、ジルとリリーはレオたちと枕投げを遅くまでしていたらしい。なんだそれ。


 俺はみんなの寝顔を見ながら、ふと思った。


 学イチを獲ったら頼みたいことを見つけたかもしれない……。

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