変な夢
外に出て、湖のほとりにみんなで集まった。釣り具の個数に限度があることと、単純にゲームとしての面白さから、何チームかに分けてどのチームが一番多く魚を釣れるかを競うことになった。
今回のチーム分けは、俺とネルのチーム。ジルとリリーのチーム。そして、アランとユアのチーム。最後に、レオとシオとシアの三人のチームとなっている。
シアは「私は一人チームでいい」と言っていたが、レオやシオが無理やり自分のチームに加入させていた。ちなみに、シアはまんざらでもない表情を浮かべていた。
一チームにつき一本の釣り竿を用意して、各自好きなスポットを選んで釣りをしていいことになった。
日が暮れるまでの間に何匹釣れるかの勝負、今回は魔力溜まりがないとはいえ、圧勝してみせよう。
そして、俺とネルはなんとなく、前回の魔力溜まりがあった場所へと向かった。
「確かこの辺だったよな、魔力溜まり」
「そうだね。クロードの勘はどう? 何かピンときてる?」
「いや、何も。本当に、この魔力溜まりはアランが消したんだな」
「今考えてもあれは無茶だったよね……」
俺たちはそこで釣り具を用意して、釣りを始めた。そして、獲物を待ちながらふと、あることを思い出した。
「ネル、俺……変な夢を見たことがあるんだ。丁度、魔道具開発部での実験が失敗して、意識を失ってたときだな」
「変な夢?」
「その夢では俺は魔獣の姿で、随分と腹が減っていた気がする。湖のほとりを彷徨って、その直後、背中に火魔法を食らったんだ」
「湖? 火魔法?」
「それで、慌てて湖の中に飛び込むっていう夢だ」
ネルは「へぇ」と呟いて、空を見た。
「私の故郷にも湖があるんだよね」
「そういえばそうだったな。それで?」
「それだけ。でもね、なんだろう……変な感じするよね」
「変な感じ……まぁ、わからないこともない。何故だろうな」
心の中で、モヤッとしたものが生まれる感覚といえばいいか。何もおかしくないはずなのに感じる違和感……。
すると、丁度ネルが持っていた釣り竿の先がピクリと動いた。彼女は静かに、竿の状態を確認して、完全に魚が食いつくのを待った。
そして、竿が大きくしなった瞬間、一気に引っ張り上げる。
釣り糸の先には、大きな魚がいた。
「ネル、すごいぞ! 早速釣れたのか」
「えへへ、結構大物だね」
「よし、絶対に他のチームに勝つぞ」
「うん、勝とうね」
ネルは次から次へと魚を釣っていった。用意していたバケツが溢れそうになるほどだ。
俺はほとんど見ているだけだったが、とても楽しかった。魔力溜まりに頼らなくとも、ネルはこんなにも釣りが上手なんだな。
やがて、日が沈み始めた。そろそろ終了の時間だ。
「クロード、そろそろみんなのところに戻ろっか」
「そうだな」
俺たちは釣り具を片付けると、集合場所である小屋の前まで歩いた。小屋の前では、丁度釣りを終えたみんなが集まっていた。手元にあるバケツを見ると、やはり俺たちのチームが一番多く釣れていた。
そんな様子を見たシオが言う。
「やっぱりクロネルチームが一番多く釣ってる」
「前も思ったけど、クロネルチームってなんだよ」
「そのままの意味だけど?」
最終的に、全チームが釣った魚の数を数えたが、やはりクロネルチームが優勝だった。前回と同じく、優勝チーム以外が夕飯の準備をしなければならないというルールだ。
俺とネルは、デッキの椅子に腰掛け、みんなが夕飯を用意するのを眺めていた。今回釣った魚のほかにも、村で買ってきた食材などもあり、それらを焼いてタレなどをつけて食べる、シンプルな夕食である。
しかし、焼き上がった魚を口に運ぶと、口いっぱいに香ばしい皮の匂いが広がった。パリパリに焼けた薄い皮から、口の中でほぐれる柔らかい白身が溢れてきた……幸せだ。
ふと、ネルのほうを見ると、彼女は隣で食べる手を止めて俺のほうを見ていた。
「どうした?」
「いや……美味しそうにたべるなって」
「あぁ、美味いからな」
ネルはやさしく微笑んだ。
そして、胸が締め付けられる感覚がする。いつしか、彼女を見ていると、いつもこうなってしまうようになった。変だな……。




