間接的
間接的
今日は久々に全員集合して、勉強会が開催された。前半はいつも通り、授業の予習や個人に合わせた復習をして過ごした。学年が上がった今、次の試験のことも考え始めないといけない。
しかし、後半は、またリリーが考えた謎のゲームが行われた。そのゲームに負けた者は、誰か一人を選んで〝日頃の感謝を伝える〟というものだ。なんとも変わったゲームだったが、意外にもヒリついた。
結局、負けたのはネルとシオだった。シオはその場でさらっとレオに感謝を伝えており、ネルは……帰り道に俺に言ってくれるとのことだった。
そして、外が暗くなり勉強会が解散した後……俺はネルと二人きりになった。いつも通り寮を目指す中、彼女はずっとソワソワしていた。
「ねぇ、クロード。勉強会組でクエストを受ける件だけど、メンバー決まったね」
「あぁ。俺とネル、それからジルとレオだったか」
「レオくんも参加してくれたから、かなり高い難易度でも大丈夫そうだね」
「そうだな。いっそダンジョンにでも潜るか」
「いいかも。私ダンジョンとか行ったことないなぁ」
するとネルが立ち止まって、俺の目を見た。
「どうした?」
「いや、その……今日のゲームで負けたから、約束通りクロードに感謝を伝えなきゃなと思って」
「無理に言わなくてもいいぞ、別に」
「無理にとかではないよ! むしろ、この機会に言いたいこと言えるなって……」
そもそも、ネルが俺に感謝することなんてあるのだろうか。逆ならまだ分かるが……。
「あの、クロード。いつも私と一緒に帰ってくれてありがとう……私、ずっと一人だったし。ほら、変な噂のこともあって誰かと帰るなんてできなかった」
「それは……どういたしまして?」
「うん。とにかく、私なんかと一緒にいてくれてありがとう」
「私なんか」か……そんなこと思わなくていいのにな。むしろこっちが感謝を伝えたいくらいだ。
「それに、クロードはいつも私に優しくしてくれるしさ。だから、その────」
その瞬間、俺たちを呼ぶ声が聞こえた。
「おーい! クロード、ネル!」
振り返ると、サヤの姿があった。どうやら俺たちを探していたみたいだ。
「どうした? サヤ」
「ごめん、もしかして邪魔しちゃった?」
「まぁ、ネルの話を遮ってはいたな」
「それは悪かった。ただ、噂で聞いたんだけど、今度勉強会組でクエストを受けるらしいね?」
「あぁ、その予定だ」
サヤは強く頷いて言った。
「なら、私も参加させてくれないかな? それに、受けたいクエストもあるんだけど」
「ほう? 参加したいし、クエストも選ばせてくれということか」
「そうなるね」
「でも何故?」
そこまでして受けたいクエストって一体なんだ?
「実は、とあるダンジョンに隠されたアイテムを使えば、クロードの呪いについてなにか分かるかもしれないんだ」
「本当か? ……いや、しかし。無茶なことをすればまた前回のようになるんじゃ」
「それなら安心してくれ。今回のアイテムはクロードの呪いを無理やり消そうとするあの魔道具と違って、もっと間接的なんだ」
「間接的?」
「そう」
よくわからないが、確かに気になるな……そう考えていたところ、横にいたネルが心配そうに言った。
「そのアイテムって使っても身体に害はないの? またクロードが倒れたりしない?」
すると、サヤが答えた。
「そのアイテムは〝モノ〟を依り代にして記憶を引き出すものだ。かつて、クロードと同じく記憶をなくした魔法使いが、自分が何者かを知るために開発した魔道具の一種らしい」
「それ、本当なの?」
「さぁ。嘘かもしれない。ただ、試してみる価値はあるはずだ。そのダンジョンを攻略すれば、普通に報酬も貰えるし」
「うーん……」
しばらく考えていたが、デメリットが浮かばなかった。
「なら、俺から勉強会のみんなに頼んでみる」
「あぁ、それは助かる。また日程が決まったら教えてくれ」
「わかった」
ネルはやはり心配そうにしていた。前回のことがあったから仕方ないだろう。しかし、やはりどうしても自分の過去が知りたいみたいだ。断れなかった。
「そういえばサヤ、今回の件でお前にメリットはないはずだが?」
「いや、あるんだよね、実は。その魔法使いが残した魔道具は他にもあって、そっちを私がもらう代わりにクロードたちにダンジョン攻略を手伝ってもらう寸法だ」
「なるほどな。で、その魔道具ってのは?」
「それはあえて、見てからのお楽しみということで」
「なんだそれ」
サヤは「邪魔して悪かったね」と言って手を振ると、翻った。彼女がどこかへ行ったことを確認すると、俺はネルの方を見て言った。
「で、さっき何を言おうとしていたんだ?」
「え! それは、その……えっと。なんでもない」
「でも、確かに何か言おうとしてただろ? サヤに遮られてたけどさ」
「何も言おうとしてないよ! 多分クロードの勘違いだから……」
「そうだったのか」
少し気がかりだったが、本人がそう言うなら仕方ないか。
ダンジョン攻略か。今まで受けてきたクエストとは一味違うものになりそうだな。楽しみだ。
それに、今回は魔道具を入手するという目的もある。気合を入れて挑もう。




