表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
85/116

負けず嫌い

 次の日、授業中も放課後も、終始ジルの機嫌が良かった気がする。放っておいてもよかったのだが、なんとなくその理由を聞いてみることにした。



「なぁ、ジル。お前なんでそんな機嫌いいんだ?」


「え、そう見えるか?」


「お前顔に出るタイプだからな」


「そうか……実は、近々ボードゲームの大会が開催されるんだよ」


「ボドイチのことか?」



 なんだ、ジルもそのことを知っていたのか。



「そうだ。実は俺……そのゲームが得意なんだ! それも、想像を絶するくらいな!」


「ほう?」


「あまりの得意さに、クロードも驚くはずだ」


「なんでそんなに自信があるんだ?」


「得意だからだよ」


「その理由を聞いているんだがな……」



 しかし、これはチャンスかもしれない。



「なら、ジル。俺にそのゲームのルールを教えてくれないか? 俺もネルと組んで参加する予定なんだ」


「おお! お前らもか! なら、いいぜ。俺が教えてやるよ」


「助かる……ちなみに、お前は誰と参加するんだ?」


「俺はリリーと参加することになっている。実は、俺の故郷ではボードゲームが流行っていて、俺とリリーはいつも一緒に組んで村の子供達と対戦していたんだ」



 ジルとリリーは昔から仲が良いというのは知っていたが、ボードゲーム友達だったとはな。



 その後、俺はジルの部屋からボードを取ってきて、図書館の自習室でルールを教えてもらうことになった。ネルとリリーも誘い、四人でボードを囲む。


 ジルがマス目のある四角いボードを机の真ん中に置くと、駒を取り出した。



「このゲームはこの駒を使い、二対二で行われる。まず、四つの角に駒を配置するとこからスタートだな」



 ジルが、俺達に駒を渡し、各々が初期配置に並べていく。ルールを知らないのはどうやら俺だけのようだ……。



「で、この並べた駒は、その種類によって一定の方向に移動することができる。順番にターンが周ってくるから、相手のチームの王の駒を取ったら勝ちってルールだ」



 すると、ジルが駒に魔力を込めた。彼の目の前に並べられていた複数の駒のうち、一本が宙に浮く。



「駒を動かす時は魔法を使わなきゃいけない。駒は特殊な素材で作られているから、魔力が干渉しやすい。だから、繊細な魔力コントロールが求められるってわけだ」



 魔法は苦手なのにゲームはできるんだな……。


 その後も、ルールを入念に教わって、ついに実践してみることにした。俺とネルチーム、ジルとリリーチームに分かれて対局する。


 見たところ、このゲームの重要度は戦略七割、魔力コントロール三割といったところだろうか。作戦を決めることはできるが、対局中は喋ってはいけない。チームメンバーとの連携も、勝利の鍵なのだろう。



 俺は人生初のボードゲームの対局を始めた。



 まず、あらかじめ決めておいた順番に沿って、一ターンにつき一手を順番に打っていく。俺はまず何をすればいいか分からないので、とりあえずジルのほうに駒を進めておいた。


 流石の俺でも、王の駒を守らなきゃいけないことぐらいは分かる。



 皆、黙々と駒を進めていき……やがてジルが俺の最初に配置した駒を取ってしまった。


 俺は自分のターンになり駒を移動させようとするが、魔力のコントロールがぶれて、駒が倒れてしまった。



 俺の持ち駒はどんどん減り、やがて一つ残らずなくなってしまった。ネルはジルとリリーに追い込まれて、王の駒を明け渡すことになっていた。



「ジル、リリー。お前ら強いな? ……いや、俺が弱いだけなのか」



 すると、リリーが言った。



「まぁ、故郷では一番強い二人だったからね。簡単に勝たれても困るよ」


「そうか。それにしても呆気なかった気がするがな」


「まぁクロードくんは今回が初めてだからね」


「そうだが……もう一回やらないか?」


「お、いいね。やろうやろう」



 俺たちは次の対局をスタートさせた……しかし、結果は同じだった。圧倒的な差をつけられて負けてしまった。



「なぁジル、コツを教えてくれないか」


「そうだな。まず、全ての駒の特性を把握することだな。クロードが最初に使っている駒は、防衛の方が向いてるんだ」


「ほう? なら、それを知った上で再戦だ」


「おう、やってやる」



 次の対局も……やはり俺たちが負けた。



「もう一回やろう」



 そして負ける。



「もう一回やれば何か分かるかも」



 しかし、また負ける。



「もう一回────」


「ちょ、ちょっと待って!」



 リリーが俺の話を遮った。



「クロードくん、もう何試合やったか覚えてないよ……そろそろ終わっておかない? 外も暗いし」


「え、まだやりたかったんだがな……」



 すると、ネルが笑いながら言った。



「クロードは負けず嫌いだからね」


「そ、そうなのか? 自分では分からない」


「また今度やろうよ。ボドイチまでまだ何日かあるから」


「そうか。まぁ、ネルがそう言うなら」



 こうして、俺の初ボードゲームは終了した。寮に帰るまでの間も、帰った後も、俺はずっと敗因を考えていた。ジルに駒を借りたので、それを動かす練習なんかもした。


 なぜ負けたのか、相手の作戦はなんだったのか、どんな作戦なら勝てるのか……考えれば考えるほど、あのゲームの奥深さに気がついた。



 しかし……ネルが言っていた負けず嫌いとは、こういうとこだったのか。少し自覚できた気がする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ