ボードゲーム
しばらく四人で雑談しながら待っていると、暗闇から足音が聞こえた。森の方角から聞こえている……見ると、コダマがこちらへやってくるところだった。
彼女は号泣しながらゆっくりとこちらに来て、俺たちの前で立ち止まると、その場に座り込んでしまった。
その時、俺たちはコダマの告白が失敗したことを悟った。
代表して、ニアが声をかける。
「あの……コダマ、その感じさ。失敗だったってこと?」
「……うん、フラれた」
「そ、そっか」
コダマは涙を拭い、言った。
「でもね、シオくんは『引き続き友達でいよう』って言ってくれた……それで、よかったなって思うと泣けてきて」
「あ、そっちなの?」
「フラれるのはもう、そんな気がしてたからね……」
結局シオはコダマをフッて終わったのか。これって、作戦がバレたからとかじゃなくて……単純に彼はコダマのことを友達としか思ってなかったってことだな。
しかし、恋愛というのは難しいものだな……誰かを好きになっても、相手が自分のことを好きである必要がある。当たり前だが、難しい。
俺はコダマに言った。
「すまない、今回の作戦……というか俺の正体も、シオにバレていた」
「そっか……そうだよね、流石に」
「悪かった。俺の演技のせいかもしれない」
「ううん、むしろ協力してくれてありがとう」
コダマは礼を言うと、立ち上がった。
「みんな、協力してくれてありがとう。お陰でその……まぁフラれはしたけど。ありがとう」
俺たちは「どういたしまして」と言って、その日は解散することになった。コダマはもう少し夜風に当たりたいらしく、サヤとニアは代表して決闘の場所を片付けてくれるみたいだ。
結果、俺とネルが二人で寮に帰ることになった。
ゆっくりと、ひんやりとした夜風に吹かれながら歩く。
「あの、ちょっといいか?」
「どうしたの?」
「ネルには好きな人っているのか?」
「えっ! ……ど、どうして?」
「なんとなく。気になっただけだ」
「うーん」
彼女はしばらく考えてから、小さな声で答えた。
「クロードには秘密ってことで」
「え、教えてくれないのか?」
「……うん」
「そうか、まぁそう言うなら無理に聞く必要もないか」
俺は複雑な気持ちになった。もしネルに好きな人がいて、その人と付き合うようなことになれば……俺とこうして二人で歩いてはくれなくなるのか。
人間のことを教えてくれると約束したが、それも無しになる……とか? それは嫌だな。
ずるいことなのかもしれないが、俺はネルともっと一緒にいたい。
「……ネル」
「どうしたの?」
「いや、なんでもない。やっぱり」
「え? 気になるな、なんて言おうとしてたの?」
「いや、本当になんでもないんだ」
言わなくてよかった……。
『もし俺と付き合うことになったら?』なんて言ったら、この関係が壊れてしまうかもしれない。そもそも、俺は付き合うということがよくわからない。
ダメだ、いつにも増して冷静さを欠いている。変な気分だ……。
そんな俺の様子を見て、ネルが言った。
「大丈夫? 悩み事? 私で良ければ……聞くよ」
「いや、そうじゃないんだが。でも、ありがとう」
「心配だなぁ」
すると、ネルが寮近くの掲示板の前で立ち止まった。
「ねぇ、クロード。これ見て。魔法学園史上最大級のボードゲーム大会が開催、だってさ」
「ボードゲームの大会?」
「そうみたい。校長の気まぐれで行われる、通称:ボドイチだってさ」
「なんだそれ。ボードゲームって、この学園で流行ってるあれか?」
「そうみたい。実際にボードに魔法を込めて駒を動かすってやつだね。確か二対二のルールだったかな」
俺は火魔法で張り紙を照らし、大きく書かれた文字を見た。
「ネル、どうやらこのボドイチで優勝したら、学イチで優勝した人と同じ権利がもらえるらしいぞ」
「えっ! ……なんだか興味が湧いてきたね」
「あぁ、俺もだ。突然興味が湧いてくるな」
俺たちは学イチを必死に争ってきただけあって、この項目は魅力的でしかなかった。
俺とネルはその張り紙をじっと見ながら、規約や参加方法などを読み上げていく。参加するには、まず二人で一組になる必要があるとか。
「ネル、俺と二人で参加してみないか? 優勝は流石に無理だろうけど……」
「いいね! 楽しそうだし、クロードとなら頑張れそう」
ネルもどうやら乗り気だったみたいだ。よし、そうと決まれば……。
「ネル、このゲームのルールを教えてくれ」
「え……? そこから?」




