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永遠の仮入部

 長期休みが終わり、すべての生徒たちが魔法学園に戻ってきた。学年が上がってもクラスは変わらないし、部活にも入っていないので後輩などもできない(魔道具開発部は永遠の仮入部である)。


 つまり、学年が上がろうが、やることは今までと変わらないのである。



 登校し、場所だけが変わった教室で、いつもの位置に座る。隣にジルがやってくる。本当に変わらない生活だ。


 そしてジルは、いつものように愚痴を言っていた。



「なぁ、クロード……休み終わっちまったよ。勉強嫌なんだが」


「成績のためだから仕方ないだろ」


「それはそうだけどさ。せめて! 後三日くらい休み欲しいんだよな」


「気持ちは分かる」



 授業が始まり、いつも通り真剣に話を聞いていると、ふと魔道具についての話題が出た。


 魔道具か……そういえば、休みの間は魔道具開発部の活動もなかったんだよな。今日から再開するとかなんとか。放課後、久々に顔を出してみるか。




 こうして、一日の授業を終えた。久々に授業を受けると、やはり楽しいなと感じる。少なくとも、長期休みの暇な時間よりは充実していたな。


 そして、いそいそと教科書を片付けるジルに聞いてみた。



「帰るのか? 勉強会はなしということか?」


「今日はなしだとみんなに伝えてある。何故なら、久々の勉強で疲れているからだ!」


「なるほど。そんな気はしていた」


「というかさ、授業で散々勉強した後に後に勉強会してた過去の俺達って相当凄くないか?」


「半分雑談だけで終わる日もあるがな……」


「それはまぁ、確かに」



 そうして、ジルは教室を後にした。それだけ勉強が嫌いなのだろう。休み明けにモチベーションが上がらない気持ちは少し分かるので、無理に勉強会に誘うようなこともしなかった。それに、俺は魔道具開発部に顔を出す予定だったからちょうどいい。



 すると、ネルが俺の教室にやってきて、俺の席の前に立った。



「クロード、今日勉強会なしだけどどうする? 一緒に帰る?」


「それが、俺はこの後魔道具開発部に行く予定だったんだ」


「そっか……」



 ネルはしゅんとしてしまった。そういえば、以前こんな風に断って彼女に迷惑をかけたことがあったな。



「なら、ネルも一緒に行くか? 魔道具に興味はないかもしれないが」



 すると、ネルの顔はぱあっと明るくなった。



「私も行っていいの? 本当に?」


「あぁ。なんならあの部活は常に部長……というか部員を募集している」


「そうなんだ。じゃあ見学という名目でクロードについていっちゃおうかな」


「そうしよう」



 俺達は教室を出て、魔道具開発部の部室へと向かった。




 魔道具開発部の前にやってきた。ここに来ると、いつも悪巧みをしているような気分になる。実際、今まではそういった用事でここに来てばかりだった。先生に隠れて魔道具を作ったり、不良集団の悪事を暴いたり……しかし、今回は違う。ただの挨拶である。



 俺は扉をノックして、中に入った。すると……教室の真ん中にある鍋のような物から火が上がっており、それを囲んでサヤ、ニア、コダマがあたふたしていた。



「何してるんだ……?」



 すると、サヤが言った。



「お、クロード! いいところに来た! 実験に失敗して鍋が燃えてしまったんだ! 消火を頼む」


「はぁ……」



 俺は呆れながら水魔法を使い、鍋を消火した。相変わらず変な奴らだなぁ……。


 サヤは火が消えて安心したのか、その場に座り込んだ。そして、俺たちの方を見て言う。



「よかった、ありがとうクロード……って、隣にいるのはまさか!?」


「ん? ネルのことか……あ」



 そういえばコイツ、変人だった。


 サヤは立ち上がると、ネルに向かって深くお辞儀をした。



「お会いするのは三回目だな、ネルさん……私はサヤ。変人です」


「へ、変人!? ……というか、三回も会ったことあったっけ?」


「前回はクロードを助けるためにシーナ先生を呼んでくれたとき、最初はネルさんがかわいいメイド服でお出迎えしてくれたときだな」


「……そ、そうだっけ! ちょっと忘れたい記憶だったから覚えてないかも」


「かわいかったぞ? 慣れてない感じが」



 ネルは恥ずかしそうにして、サヤから目を逸らした。でも確かに……あの服はその……かわいかった、よな?



「なぁネル」


「どうしたの?」


「あのメイド喫茶とやらについてが、忘れたい記憶だったのか?」


「まぁね……う、蘇ってくる……嫌な思い出が」


「すまんな、思い出すようなことを言ってしまって。でも、サヤの言う通りあの服を着たネルはかわいかったぞ?」


「かっ……! えっ!」



 ネルは動揺したのか、顔を隠してその場にうずくまってしまった。何か悪いことをしてしまった気がする……。



 すると、ニアが言った。



「変な三角関係してないでさ……クロード。今日はなんの用事なの?」


「三角……? 今日は、特に用事はないが顔を出してみたんだ」


「そっか。この部活に馴染んできたってことだね」


「そうなのか? まぁ、馴染んではいるか」



 すると、コダマが言った。



「あの、クロードくんかネルさんは今日、シオくんに会った?」


「シオに? そういえば会ってないな。ただ、今日から自由になるらしい」


「そうらしいよね……うん」


「シオに何か用か?」



 俺が聞くと、コダマは驚いて二歩ほど後ずさりした。



「べ、べ、別にシオくんに用があるわけじゃ……!」


「?」



 すると、サヤが言う。



「いいんじゃない? この二人には話しても」


「うーん……でも」


「この二人は勉強会組だし、何か手伝ってもらえるかも」


「そうだけど……そっか」



 コダマは手で帽子のつばを弄りながら小声で言った。



「あの、私ね……実はシオくんのことが気になってるというか……好きというか」


「そうだったのか」



 まぁ、知っていたが。テンがそういったことを言っていた気がするからな。



「それでね……その、シオくんに告白しようと思ってて」


「あぁ、そういうことか。なら俺たちが場を設けてやろう」


「そ、そう……? いいなら、お願いしようかな」



 すると、ニアが補足した。



「コダマはね、今回シオがいなくなって初めて、自分の気持ちに気づけたみたい。クロードもネルも、優しく応援してあげて」


「あぁ」



 すると、元気を取り戻したネルが言った。



「なら、場所とシチュエーションにはこだわったほうがいいんじゃない?」



 サヤもニアも、それに同意する。


 しかし場所とシチュエーションか。告白というものがよくわかってない以上、決めるのは難しいよな。



「なぁネル、告白ってどんな感じなんだ?」


「えっ! ……うーん。その人に好きであることを伝えて、その後了承してもらえたらそのまま付き合う……みたいな感じかな?」


「なるほど、それが告白か」



 すると、サヤが言った。



「場所はね、星がよく見える丘がいいと思うんだけど。ちょうど、魔法学園の裏にはそういう場所があった気がする」



 星がよく見える場所……そういうのが告白に向いているのか。普通に相手の部屋に行って伝えるのは駄目なんだな。



 それを聞いたニアが挙手する。



「シオは植物が好きだから、それを活かした作戦とかどう?」



 ネルはそれを聞いて首を傾げる。



「それはどうなんだろ……何か、もう少しロマンチックにしたいよね。例えばその、告白までのストーリーとか」



 告白にはロマンチックというものが必要で、ストーリーが要る……と。覚えておこう。



 俺たちは、というかサヤとニアとネルの三人は、長時間議論して、コダマがシオに告白する方法を考えた。


 彼女らは、コダマの意見も尊重しつつ、壮大な告白の台本を作り上げていった。いつの間にか、俺も協力することになっているし。というかこれ、本当に大丈夫なのか……?



 俺は少々心配になりながらも、彼女らの作戦会議を熱心に聞いていた。

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