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今も同じ気持ちでいるのか?

 長期休みの間、俺はネルと図書館で予習をしたり、料理をしたりしながら過ごした。去年よりも短く感じる休みは、あっという間に過ぎていった。



 やがて、帰省していた生徒たちがちらほらと学園に戻ってきて、とうとう休みが終わるんだと感じ始めた頃。




 その日、俺たちは帰省から帰ってきた勉強会組を集めて、小規模の勉強会を開催していた。メンバーは俺とネル、ジルとリリー、レオとシアだ。



 しばらく、各自で黙々と自習をしていたが、レオが勉強の手を止め言った。



「なぁ、みんな。もうすぐ学年が上がるだろ? そしたら、シオの罰の期間が終わって、また授業にも戻ってくるらしい。もちろん、勉強会にも参加できるようになる」



 俺はそれを聞いて嬉しい気持ちになった。



「シオか。しばらく会ってないが、とうとう戻ってくるのとはな」


「あぁ。特にお前には礼を言いたいだろうよ」


「レオは会ったりするのか?」


「いや、この期間中は数回だけ話した程度だ」


「きっと、お前に礼が言いたくてウズウズしてるんじゃないか」



 レオは頷いた。



「俺のお陰でなんとかなったようなものだからな!」


「じゃあ、また次の学年になってから、例の観葉植物を渡すのか?」


「そうなるな」



 すると、シアが挙手した。



「なぁ、シオが帰ってくるなら勉強会で何かしてやらないか? パーティ的な」



 それにリリーも賛同する。



「いいね、それ! 何かしよう! 私もそう思ってたんだよね」



 しかしレオは首を傾げた。



「アイツ、そういうのノッてくるのタイプか?」


「ノッてこないにしても嬉しいでしょ」


「まぁ、そうか」


「当日はレオくんによる、日頃の感謝の手紙を読み上げるイベントとかする?」


「やらん」



 俺はふと、そのことを魔道具開発部のメンバーに報告しようと思った。彼女らもきっと、シオの帰りを待ちわびているはずだ。


 それはまた、この後の空いた時間にするとして、シオが戻ってきたらパーティか。



 どうせなら、俺も何かシオにプレゼントするか? ……いや、そういうのはレオからが一番嬉しいか。


 すると、ジルが言った。



「で、今からはレオがシオとの思い出やらを俺達に語る会ってことか」


「はぁ? なんでそんなこと、お前らに話さなきゃいけないんだよ!」


「だって、お前とシオ、めちゃくちゃ仲いいじゃないか。何故か気になるだろ? みんな」



 すると、ネルもリリーもシアも、みんな頷いた。そして、期待の眼差しでレオの方を見る。



 追い込まれたレオは、しばらく迷っていたが……渋々二人の過去について話し始めた。



「俺は、シオと会う前から名前だけは聞いたことがあったんだ。アイツは不良たちの中ではそこそこ有名で、どうやら強いのに一人でいるっていう噂だった」



 その時既に、小規模だがレオ・ファミリーを名乗り不良集団として名を挙げていたレオたちは、そんなシオの存在が気に食わなかったらしい。



 しかし、それはやがて興味に変わり、シオを仲間に入れたいと思うようになったという。その後決闘をし、レオが勝てば「レオ・ファミリーに加入させる権利」を、シオが勝てば「今後一切関わらないこと」を賭けたという。



 シオは強く、最初はレオを圧倒していた。しかし、何度攻撃を食らっても立ち上がるレオの姿勢を見たシオは感銘を受けて降参し、そのまま仲間になったという。



 シオは幹部であり、レオの部下ということになっているが、対等な関係だと思っているらしい。



「……と、まぁそんな感じだ。別に面白くもなんともない話だったろ?」



 レオは話し終えると、照れくさそうにしていた。しかし、それを聞いたネルは首を横に振る。



「ううん、ちゃんといい話だったよ。感動しちゃった」


「そうか?」


「けど、シオくんは、レオ・ファミリーに入るまでずっと一人だったんだね」


「そうだな。旧・薬草学棟でも、自分の部屋がほしいって言ってたし……根本的には一人が好きなのかもな。今回の罰も、本当は嫌じゃなかったりしてな」



 すると、ジルが言った。



「俺、一回寮でシオと会ったぞ。その時は『早くレオさんに会いたいなぁ』って言ってた」


「俺に会いたい……? 絶対嘘だろ」


「いや、本当だって」


「ジルの発言じゃなくて、シオの発言が嘘だろって話だ。アイツ、そうやって思ってもないこと言うからな」


「いやいや、本当に会いたがってるんだろ。照れるなって」



 みんな、仲良くなったな。勉強会なんて、最初は無理やりやらされていたようなものだったからな……。


 俺はふと、もうすぐ学年が上がるということを思い出した。学年が上がれば、俺達は最高学年になり、やがて最後の試験が来る……そして、ずっと後には卒業というイベントも待ち構えている。



 卒業の日の約束……今だって忘れてはいない。



 俺はネルの方を見た。彼女もこちらを見て、不思議そうに首を傾げる。



「どうしたの?」


「いや、何も……」



 あの日の会話が鮮明に蘇る。



『じゃあ、こうしよう……卒業の日にお前を食ってやる。だから、それまで俺の正体を秘密にしておいてくれ』


『いいの?』


『逆に、いいのか?』


『うん』



 これだけネルと仲良くなった今も、彼女が食べられたがっていた理由はわからない。



 今も、同じ気持ちでいるのか?

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