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実感がわかない

 この村を俺たちが救ったのか。実感がわかないな。



 俺はネルへの贈り物を探すため、店に行ってみることにした。しかし、どの店も昨日の混乱のせいで閉まっていて、結局何も買えなかった。



 今日の夜にはこの村を出ることになっている。俺は食事処へ入り浸り、無料の食事を楽しみながら、ゆっくりと過ごしていた。


 ここが、村で一番高級な店らしい。どうせ無料なら高級なほうがいいよな。



 店内には様々な植物が飾られており、確かにいい雰囲気だった。



 すると、店の扉が開く音がした。見ると、そこには村長の姿があった。そして、俺と目が合うとこちらにやってきて、俺の目の前の席に座る。



「君がクロードか。アランから話は聞いている。手紙に何度も名前が出てきたからな」


「手紙に? アランが?」


「そうだ。ライバルだとか友達だとか、とにかく君のおかげで人生が変わったと言っていた」


「アイツらしくないな。そんなことを言うなんて」



 村長は小さく笑って、カウンターに向かって俺と同じものを注文した。



「君はアランの過去について知っているか?」


「アランの? いや、知らないな。本人は話そうとはしないし」


「そうか。実は、この村でスタンピードが起きたのは二回目なんだ。前回は十年以上も前だ……」



 そういえばアランも前例があると言っていたな。



「それで?」


「アランの両親は戦士だった。だから、まだ幼かった彼を逃がすために魔獣の群れと戦って命を落とした。それ以降、アランは魔獣というものが心底嫌いになったらしい」


「なるほど、そんな理由があったのか」


「そうだ。彼が無茶をしてみんなに迷惑をかけたという話は聞いてるが……引き続き、アランとは友達でいてやってくれないか?」


「もちろんだ」



 俺は最初からそのつもりだったし、別に今回の件で印象が変わったりもしていない。むしろアイツらしい行動だなと思う。


 しかし、俺が魔獣だと知られた場合は、きっと向こうから俺のことを……それこそ殺そうとしてくるかもな。



「なぁ、村長」


「どうした?」


「……関係ない話なんだが、この村で友人にプレゼントできるようなものは売ってたりするか? 以前からずっと、お返しになるようなものを考えていたんだ」


「あぁ、それなら沢山あるぞ。店は閉まっているが、村長命令で特別に買い物できるよう頼もうか」


「まぁ、その。内容によるけどな」


「この村にはよくお土産として買われる変わった魔道具が売っているんだ」


「変わった魔道具?」



 すると、村長がカウンターに向かって「この店にオルゴールはあるか?」と言った。すると、店員が手のひらサイズの小さな箱を持ってきた……この装飾や見た目には見覚えがある。



「オルゴール? これ、魔法学園の近くの街にある魔道具の店で見たことがあるな」


「恐らくそれはこの村から輸入したのだろう」


「なるほど。ということは、これも魔力を込めると音が出るのか?」


「そうだ。内部の金属が弾かれて、曲が流れる仕組みになっている」


「その時買うか迷ったんだよな……試していいか?」



 俺はオルゴールに魔力を込めてみた。すると、素朴だが癒される素敵な音楽が流れた。心地よい、艶のある高音にしばしの間夢中になっていた。



「村長、これをネル……友達にプレゼントしたら喜ぶかな?」


「あぁ、きっと喜ぶ。人を喜ばせるためだけに作られた魔道具だからな」


「なるほど……じゃあ後で店に行って買わせてもらおうかな」


「ぜひそうしてくれ。我々のできる恩返しというのはそのくらいのものだからな」



 すると、村長がオルゴールを見ながら言った。



「ネルというのは、つまり君の彼女か?」


「え……いや、違う」


「そうか。贈り物をし合う仲ということは、そういうことなのかと思ったが」


「そういうものなのか?」


「まぁ、人によるが」



 ネルが彼女か……もしそうだったら、一体どんな生活になるのだろうか。やはり、沢山遊んだり、沢山話したりできるのだろうか。しかし、それは今でもやってるしな……。


 人間の付き合うという行為は、やはり難しいところがあるな。



「まぁ、とりあえずお言葉に甘えて、後ほどオルゴールを買わせてもらう」


「もちろんだ。村を救った英雄のためだ、無料にしよう」


「いや、ちゃんと払うことにするよ。人への贈り物だからな」


「それもそうか」



 すると、扉が開く音がして、レオが店に入ってきた。俺は俺を見つけると、隣に座って言った。



「クロードがここで飯を食ってると聞いてな。腹が減ったから来てやったぞ」


「レオか。すまん、誘えばよかったな」


「いや、まだ間に合うだろ」



 そう言って俺と同じものを注文すると、辺りを見渡して言った。



「しかしいい店だな? 観葉植物も綺麗に手入れされている」



 すると、村長が嬉しそうに言った。



「そうだろう! この店は私にとってもお気に入りでね。旅人たちにはぜひこの店にとおすすめしているんだ」


「ほう。確かに雰囲気は良いな。後は味だ……楽しみだぜ」


「ぜひ味わってくれ……しかし、君は観葉植物に興味があるんだね。珍しい」



 レオは首を横に振った。



「俺じゃなくて、友達がな。観葉植物を育てるのが趣味だったんだ。けど、先日訳あって全部枯れちまった」


「それは……気の毒に。それなら、この店の植物を一つ、持って帰るか?」


「いいのか? それ」


「もちろん。あの植物たちは私が育てたものだ」


「ほう? なら、その。良さそうなやつを持って帰らせてもらおうか」


「あぁ。大切に育ててやってくれよ」


「助かるぜ」



 丁度そこへレオの料理が届き、俺たちは雑談をしながら食事を楽しんだ。



 人助けをしたつもりだったが、村長には随分と助けられてしまったな。

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