反省文
シオのときと同じ……体内の魔力が暴走し、理性すら失う現象。これは厄介なことになったぞ。アイツ、無理するなと言ったのに。
すると、アランは逃げていた無抵抗の魔獣に対して魔法を撃ち始めた。
「おい、アラン! その魔獣たちはもう森に帰るだけだから、攻撃する必要はない!」
俺が声を荒らげると、アランは小さく呟いた。
「魔獣は……殺さないと」
「……いや、でも」
「魔獣は殺さないといけないんだ……何があっても」
彼は理性を失っている。俺はひとまず、闇魔法で彼の動きを止めようとするが……彼の体内にある大量の魔力によってそれは叶わなかった。
レオがアランの方に近づくが……アランは彼を見た途端、火魔法を足元に放った。
「レオか……邪魔するならお前も殺す」
「ぐっ……目を覚ませ! なんで無茶したんだ! 作戦は失敗したが、それよりも命が優先だとネム先生も言っていただろ?」
「知るか、そんなこと。それより俺は、魔獣を殺さなきゃいけないんだ」
すると、ネム先生がシアに言った。
「シア、闇魔法使える?」
「少しだけなら……」
「クロードと一緒に、全力でアランの足を止めてくれる?」
「はい?」
「私が魔法陣を描き終わるまで粘ってほしい」
ネム先生は瓦礫の中から手頃な棒を拾い上げ、目の前の地面に魔法陣を描き始めた。それを見て、シアがアランに闇魔法を放つ。俺もそれに続き、全力で闇魔法をアランにぶつけた。彼の中の魔力がそれを拒むが……ネム先生が魔法陣を作る僅かな間なら、なんとか拘束できそうだ。
俺は魔力を強く込め、必死に彼の動きを止めた。
「アラン、シア! ありがとう、準備できたよ」
ネム先生がそう言った瞬間、丁度闇魔法の効果が切れ、アランがこちらに迫ってきた。
「お前ら、邪魔するのか……」
彼が俺たちに向かい、ゆっくりと歩み寄ってくる。そして、ネム先生が描いた魔法陣の真上に差し掛かった瞬間────眩い光と共に、アランはふっとその場に倒れた。
ネム先生がアランの元に駆け寄って、息があることを確かめる。
「ぐっすりと寝てるみたいだね……見たところ、暴走した魔力はもう消えているみたい」
すると、リリーが監視塔の上から聞いた。
「ネム先生、今のは?」
「この魔法陣は、生き物の魔力を放出するものだよ。基本的には大型魔獣のためのトラップとして使われることが多いけど……まさか役に立つとはね」
「じゃあもう、アランは大丈夫ということですか?」
「しばらく安静にしなきゃだけど、無事だね」
すると、レオが言った。
「なんで先生の言うことすら聞けないんですかね、コイツは」
「まぁまぁ、おかげで村が助かったんだから叱れないよねぇ」
「それは甘いですよ。本人を含めて、沢山怪我人が出そうになったんですから」
「ま、後で注意はしておこうね」
これで、ひとまずスタンピードの脅威は去ったか。しかし、アランの言っていた「魔獣を殺す」という発言……以前も、魔獣が嫌いだと言っていたな。何か理由があるのだろうか。
すると、背後から村長の声が聞こえた。
「もしかして君たちが……村を救ってくれたのか?」
振り返ると、さっきまで隠れたり避難しようとしていた村人たちが、俺たちの方を見ながら目を丸くしていた。ネム先生が代表して、それに答える。
「魔力溜まりについては後ほど確認するとして、ひとまず脅威は去ったよ」
すると、村人たちから歓声が上がった。俺たちに向かい、多くの者が称賛する。拍手に包まれて、俺たちはやり切ったんだなと実感した。
村長がネム先生のほうに駆け寄ってきて言う。
「すまない、先生と学生さんたち……本当に迷惑をかけた。しかし、この村をを助けてくれて本当にありがとう」
「いえいえ」
「あの、アランは大丈夫なのか?」
「疲れて寝てるけど大丈夫だよ」
「よかった……」
そこから、村人たちは俺たちに無料で宿や食事を用意してくれた。この村の料理も、中々興味深い素敵なものだった。その日は疲れと魔力切れで、ぐっすり眠ることができた。
翌日、アランは目を覚まし、全員に謝罪して回っていた。どうやら、当時の記憶も少しはあるらしい。ネム先生曰く、学園に帰ったら反省文を書かされるとのことだ。




