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なんだその笑みは

 その後、テンは学園から姿を消した。きっと、何らかの処罰が下されたのだろう……しかし、彼がどうなったかは知る由もない。


 また、テン率いる不良集団だが……ほとんどが金で雇われており、テンが告発してほとんどのメンバーが処罰を受けることになった。



 しかし、シオは依然として寮から出ることは出来ず、コダマはそのことをずっと心配していた。テンに騙されていたとはいえ、シオのやったことが帳消しというわけにはいかなかったようだ。



 俺は、テンの言っていた言葉がずっと引っかかっていた。恋は呪いに似ている……か。恋というものがよくわからない以上、それがそうとも違うとも言い切れないのに、何故かふと頭によぎる。それに、『同じく呪われた身』という言葉も気になる。


 



 そんな中、魔法学園は長期休みに入ろうとしていた。勉強会組の中でもジルやアラン、ユアは帰省する予定があるらしい。魔道具開発部のコダマも同じく帰省、ニアは……シオを置いて帰るわけにはいかないといって残るとのことだ。


 残ったのは俺とリリー、レオ、シオ、それからシアくらいか。



 長期休みの間は授業は開催されないが、学校の食堂や図書館は使えるようになっている。俺は毎年、本を読んで時間を潰していた……そういえば、ネルはこの長期休みをどう過ごすのだろうか。帰省せずに、学園に残ると言っていたが。



 俺は全ての授業が終わった放課後、ネルが来るのを待った。


 隣でジルが、ニヤニヤしながら話しかけてくる。



「なぁ、クロード。もうすぐ長期休みだぜ? 楽しみだなぁ。故郷に帰って沢山飯を食うんだ」


「いいじゃないか。俺は帰省とかはないから、学園でゆっくりするよ」


「そうか、学園も寒くなるから風邪ひくなよ」


「ひいてもヒールすればいい」


「それはそうだが。ん、そういえばクロードの故郷ってどこなんだ? 前にサヤが言っていたラン────」


「秘密! ということにしておこう」


「そうか。色々あったんだな……」



 色々あったのかどうかすら分からないんだよ……記憶がないからな。しかし、森の中だったのは覚えている。しかし、あれを故郷と言えるのか?



「そういえばネルさんも帰省しないって言ってたぜ? 一緒に何かしたらどうだ」


「そうだな。料理でも教えてもらおうかな」


「お、楽しそうだな。全く、仲良しだなお前らは」


「仲良し? そう見えるか?」


「は? 仲良しだろ絶対」


「まぁ、俺はそう思っているが」



 俺の発言に何か言いたげなジルだったが、丁度そこへネルがやってきた。



「クロード、ジルくん。こんにちは」


「お、丁度ネルの話をしていたんだ」


「私の?」


「そうだ。長期休みに料理でも教えてもらおうかなって」


「え、えっとね……そのことなんだけど」



 ネルは何か言い淀んでいた。



「私、今回の長期休みは帰省しなきゃいけないことになったんだ……前に話していたディアンタさんっていう人がね、どうしても会いたがってるからって」


「……そ、そうなのか」


「でも、もしかすると後半には学園に戻ってこれるかも……!」


「そうか」



 なんだかガッカリしてしまった。ネルが悪いわけじゃないので何も言えないが……。



「く、クロード……ごめんね。私も本当はクロードと遊びたかったよ。そのために新しい料理のレシピとかも買ったりとかしたのに」


「いや、ネルは悪くないんだ。ただ、ちょっと驚いただけで」


「うぅ……ごめんね」



 すると、ジルが言った。



「クロード、あまりネルさんを困らせるなよ。また後半になったら何かすればいいじゃないか」


「まぁ、そうだが……」


「よっぽどネルさんと遊びたかったんだな」


「……」



 俺は仕方ないなと思う気持ちとは裏腹に、うまく返事ができなかった。そうか……なら俺はこの長期休みは何をして過ごそうか。



「そうだ、ネル。帰省は長期休みに入ってすぐ始まるのか?」


「ううん、一日だけ空いてから出発だよ……あ、じゃあその日に遊ぶ?」


「そうしよう。なら、そうだな……二人で街へ出かけないか?」


「いいね! そうしよっか。えへへ、楽しみになってきた」



 すると、そんな俺たちの会話を見ながら、ジルが微笑んでいた。



「なんだその笑みは」


「いやぁ。なんでもない」


「……?」



 こうして、俺はネルと一緒に出かける約束をした。最近はネルに冷たいと言われるくらいには、一緒に何かすることがなかったからな……楽しみだ。

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