ニア
サヤがテン達の悪事を暴き、無事に覆面の不良集団を解散させることができたら、レオ・ファミリーから金貨が贈られることになった。サヤは最初からこれが目的だったようだが、覆面で悪事をはたらく彼らに対して不満があるのも確かだと言っていた。
しかしシオはというと、決闘のラインを超えた暴力を多くの人に振るったとして、しばらく寮から出ることができなくなった。また、成績は下がり、反省文を書かされているという。
今後の行動によっては退学もあり得るとか……。
目が覚めたシオはほとんど何も覚えていなかった。薬草をあえて食べなかったことだけは、辛うじて覚えているらしいが……とにかく、これからは無茶するなとレオが説教していた。
そうしてしばらく待つだけの月日が流れ、とうとうサヤからコンタクトがあった。どうやら、テンの悪事を暴くための情報と作戦を思いついたらしい。
俺は魔道具開発部の部室にやってきたのだが、教室にはサヤとニアだけでコダマの姿はなかった。
「サヤ、コダマはどこへ?」
「シオが不調だからって言ったらもっといい薬草を手に入れなきゃって言って街にね」
「ほう」
「丁度いいよ。この件にコダマを巻き込むわけにはいかないし」
「そうだな」
すると、サヤが机の上にとある物を置いた。それは変わった色の薬草で、強い魔力を感じる……これって。
「クロード、これは違法に取引されている薬草だ。冒険者協会が定めた規定の魔力量を大幅に超えた危険な一品で、一度接種すると一時的に強い魔力を手に入れるが……その後は依存してしまったり体を壊したりする。知ってるか?」
「まぁ、話には聞いたことあるが……何故これを?」
「これは、テン率いる覆面の不良集団が栽培していたものだ。金貨を積んだら匿名で入手することができた」
「ほう……これがいわゆる、テン達の悪事の一つか」
これを先生に報告できれば、確かにテン達に叱るべき処罰を与えてくれそうだ。しかし、これを彼らがやったという証拠はどこにもない。
「お、クロードのその顔。『どうやって証拠として提出するんだ?』と言いたげな顔だね」
「……まぁ」
「安心してくれ。そこら辺も考えてある。まず、信頼できる先生……シーナ先生あたりがいいか。に、協力を仰ぐんだ」
「ほう」
「シーナ先生をタンスとかに隠れさせて、その目の前でクロードとテンを接触させる。そこでクロードは、この薬草を渡して『覆面の不良集団の仲間に入れてくれ』『金がなくて困っている』などと嘘をつくわけだ」
「それで、テン本人の口からそれを引き出す……ということか」
サヤはコクリと頷いて、薬草を俺に手渡した。
「シーナ先生のところへ行ってこい。テンとの引き合わせは情報屋として私がやっておこう」
「わかった」
「場所はそうだな……旧・薬草学裏の倉庫にしよう。そこなら人もいないし、シーナ先生が隠れる場所が山ほどある。明日の放課後でどうだ」
「じゃあ、頼んだぞ」
「任せておけ」
すると、ニアが言った。
「クロード、頼んだよ? シオの敵討ち」
「あぁ、わかってるよ」
「ありがとう。シオは悪い子じゃないから、このまま一方的に悪者扱いされるのはかわいそうだよ」
「俺もそう思う。大丈夫、なんとかするから」
ニアは終始不安そうな顔をしていたが、俺の言葉で少し安心したようだった。彼女は今回の件で相当なショックを受けており、きっとテンの悪事を暴くまではその傷は癒えないだろう。
俺は二人に背を向け、魔道具開発部を離れた。




