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躊躇い

 シーナ先生に記憶に関する呪いの話を聞いた数日後の放課後。俺は勉強会を開催しようとみんなに提案してみたものの、集まれるのはネルとアランだけだった。


 レオとシオはジルを誘ってクエストに、リリーはそれの随伴……シアはサボりでユアは演劇部の活動があるとか。


 アランだけは何故か乗り気だったので、まぁよかったが。



 なので、仕方なく三人で勉強会を開くことにした。


 例のごとく図書館に集まり、ネルが教科書を開こうとすると……それをアランが止めた。



「なぁ、ネル。三人で勉強会ってのも、何か違う気がしないか?」


「え、せっかく集まったのにやらないの?」


「いやその……正直に言うと、二人に相談があったんだ。だから勉強会は一旦中止で、それを聞いてくれないか?」


「うん、いいよ。クロードもいいよね?」



 俺が頷くと、アランが少し躊躇いながらも話し始めた。



「実は俺、ユアともっと仲良くなりたいんだよな。前までユアがクロードのことを好きだったって聞いて、どうしたら彼女に好かれるのか気になってな」



 俺はアランに問いかけた。



「お前は以前恋愛マスターを自称していただろ? ならば自分で解決すればいいのに」


「なっ……恋愛とは限らないだろ?」


「そうか。まぁ、なら違うか」


「それに、あれはお前を勇気づけるために言った嘘だ。そもそも恋愛マスターってなんだよ」


「それもそうか」



 ネルが今にも「なんの話?」と言い出しそうな顔をしていたが、アランが話を変えた。



「とにかく、俺はユアともっと仲良くなりたいんだよ」


「ほう。だが、俺たちにできることは少ないぞ?」


「まぁそうだが……うーん」



 すると、ネルが挙手した。



「一緒に何かすれば? 例えばそうだな……街に出て買い物に行くとか」


「買い物か。彼女が買い物に興味があるかは分からないからなんともいえないが」


「多分あるよ」


「そうなのか? なぜそう思う?」


「ま、なんとなくかな? それに、買い物に興味がない人なんていないでしょ」



 アランは「うーん」と唸ってから、納得したように頷いた。



「なら、誘うだけ誘ってみるか。もちろん、お前ら二人も参加するよな?」


「俺とネルが? それだとややこしくなるだろ」


「頼む、来てくれ。そうすれば二人きりよりもハードルが低くなるだろ?」



 俺がネルの方を見ると、彼女は「いいんじゃない?」言った。



「じゃあ、四人で買い物に行くか。今度ユアを誘っておいてくれ」


「おう」



 すると、アランは立ち上がってカバンを背負った。



「俺は帰ることにするよ。ありがとな、相談にのってくれて」


「おう。以前お前が相談にのってくれたお返しだ」



 アランはひらひらと手を振って自習室を後にした。残された俺とネルは目を合わせると、ほとんど同時に言った。



「これってさ……」


「これって……うん。やっぱそうだよね」



 そう、俺とネルはつい先日、ユアから相談を受けていた。彼女から「アランについて教えてほしい」と頼まれた上に、色々あって「アランと買い物に行くのが夢」という話も聞いていた。よって、ネルがわざと買い物に行くことを提案したのだ。



「ナイスだな、ネル。ちゃんとアランが買い物に行く気になったみたいでよかった」


「うん。これでユアさんも喜ぶよね」


「でも、俺たちも一緒とはな」


「そうだね……そこは予想外だったけど。つまりクロードと買い物に行けるってことでしょ? 楽しみだなぁ」



 ネルは嬉しそうだった。俺と買い物に行きたかったのなら、そう言ってくれればよかったのに。断る理由だってないし。


 買い物といえば、魔法学園からしばらく歩いたところに栄えた街がある。大抵の生徒はそこで買い物をしたり食事を楽しんだりするのだ。俺も用事があって何度か足を運んだことがあるが、いつも一人だったな。



 今度、アランとユアが集まった時に予定でも立てよう。とは言っても試験や学園祭のような大きなイベントを終えた今、大抵の学生は暇だろうから。



 その後、俺たちも図書館を出て、寮へ帰った。

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