俺の学園祭は終わってない
「嫌すぎる! 授業が!」
朝、登校して教室に入ると、ジルが駄々をこねていた。
「仕方ないだろ、もう学園祭は終わったんだ」
「終わってねぇ! 俺の学園祭は!」
「諦めろ。というかちゃんと教科書は持ってきたのか?」
「持ってきてないから借りる。ありがとな」
「貸すとは言ってないが」
なんだかいつもの日常に戻った感じがするな。そういえば学校は勉強をするところだった。長いようで短い学園祭の期間が終わり、俺はまた勉強漬けの毎日を送ることになるのか。
「そういえばクロード、サヤがお前に会いたがってたぞ? 今日の放課後あたりでって」
「誰だよソイツ」
「あぁ、そうか。変人と言えば分かるだろ?」
「アイツ、そんな名前だったのか……というかジルはなんでソイツのことを知っているんだよ」
「友達だからな」
ほう、変人と友達か。ぴったりじゃないか。
しかし、サヤには世話になったからな。それこそ、夕飯でも奢ってやらないと……しかし、向こうが俺に会いたがっているのは何故だろう。
すると、ジルが言った。
「あのサヤとも仲がいいとは……クロードは本当にすげぇよな」
「あの……? そんなに有名なのか。まぁ、確かに変人だとは思っていたが……自他ともに認める最強の変人だったというわけか」
「変人だから有名なんじゃねぇよ! 確かにアイツは変だけど! そうじゃなくてさ……〝情報屋のサヤ〟って聞いたことないか?」
「知らん」
「この学園ではそこそこ有名だぞ? 俺は幼い頃からアイツと友達だから接点があるけど、今や学園には中々現れないし、情報が欲しいやつが次から次へと寄ってくるんだ」
「ほう」
〝情報屋のサヤ〟か。たしかに、ネルと近づきたいがために俺にコンタクトを取ったのもその力なのか?
「それに昨日の夜、俺たち勉強会組が総出でネルさんを探しても見つからなかったのにさ……サヤはそれをいとも容易く見つけ出しただろ?」
「確かに……」
「それに、この学園の成績トップであるお前やネルさんたちのことを教えてくれたのもサヤなんだ」
「そうだったのか」
「すごいだろ」
アイツ、実は情報屋と呼ばれるほどの存在だったのか。ただの変なヤツだと思っていたが、意外だったな。
「でもそうなると、なおさら何故サヤは俺に会いたがっているんだ?」
「それがさ、〝ある情報〟を手にしたらしいんだよ」
「ある情報?」
「それ以上は教えてくれなかった。実際に来てから教える……だってさ」
「なんだそれ」
これで大したことのない情報だったら拍子抜けだな。まぁ、昨日のお礼ができればそれでいいか。
「あ、そうだ。クロードがもしこの情報に興味を持たなかったら、〝ある言葉〟を言ってみろってサヤに言われたんだよな」
「ある言葉?」
「そう〝ランジャー村の伝説〟ってな────」
突如、視界がぐらついたかと思えば、俺は強烈な吐き気に襲われた。
「すまない、ジル……トイレ行ってくる」
「おいおい、大丈夫か?」
突如、無理やり記憶がこじ開けられたような感覚。それに頭が追いついていないんだ。
俺は走って教室を飛び出して、その言葉について考えていた。どこで聞いたのか、どういう内容だったのか……考えれば考えるほど気分が悪くなる。
俺は最初の授業をサボるほどに、大きなダメージを受けていた。でも、その理由すら分からなかった。
俺にとってあの言葉は何を意味するのだろう。かつて魔獣だった頃の記憶と関係があるのか……?




