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俺だけが広場に残った



俺だけが広場に残った


 食事を終えた俺は、魔法学園に戻りネルを探していた。しかし、待ち合わせ場所を決めなかったせいか、ネルは一向に見つからない。あの時俺が焦っていなければ、待ち合わせができたのに……。



 俺は必死にネルを探すが、やはり彼女はどこにもいない。そもそも、こんなに広い学園がこれほど混雑しているんだ。見つからないのも当然か。



 すると、勉強会組が集まっているのを見つけた。ジルとリリー。レオにシオ、シア、アランにユア……しかし、ネルはそこにはいなかった。すると、ジルが俺を見つけた。



「おーい! クロード」


「ジルか」


「お前さ、ネルさんと店に行く約束をしていたんじゃなかったか?」


「それが、ネルが見つからないんだよ。俺のクラスにも、その店の前にもいなかった」


「はぁ? もうすぐ全部の店が閉まるんだぞ?」



 ジルはおろか、勉強会組全員の視線がこちらに向いた。そして、ジルが言う。



「リリーと俺は寮の方を探そう。クロードはここで待機な」



 すると、レオが言った。



「レオ・ファミリーは総出で店のあるエリアを探すことにする。シアも手伝ってくれるよな?」


「まぁ、クロードが困ってるみたいだし」



 アランとユアも頷いた。



「俺は図書館を、ユアは食堂を探してくれるか?」


「うん、わかった。見つかり次第、ここで待機してるクロードくんのところに連れてこればいいんだね?」



 みんな、信じられないくらい協力的だった。まるでそれが当然みたいに……丁度困り果てていた俺にとって、みんなの言葉一つ一つが胸に響いた。



「みんな……助かるよ」



 すると、代表してジルが答えた。



「ま、お前の日頃の行いが良かったからだな。じゃあみんな、手分けしてネルさんを探そう! あ、クロードはもしネルさんと会えたら俺たちを待たずに店に直行しろよ」



 勉強会組は散り散りになり、俺だけが広場に残った。みんなが探しに行ってくれてはいるが、俺は気が気でなかった。ネルとの約束を、俺の空腹のせいで破ることになれば……どう思われてしまうのだろう。



 俺が辺りを見渡しながら勉強会組の帰りを待っていると、昼間出会った変人がやってきて俺の隣に座った。



「よう、クロード」


「お前……変人か」


「そうだ、私が変人だ」



 彼女は俺の顔を見て、不思議そうにした。そして、獣耳をペタンとさせる。



「元気ないな、どうしたんだ?」


「それが……ネルと店に行く約束をしていたのに、どこにも見つからないんだよ。このままだと約束を破ることになる」


「ネルさんと……やっぱりお前らそういう関係なんだな!?」



 変人は少し嫌そうな顔をしていた。が、何を思ったのか立ち上がった。



「私は変人だが、野蛮人ではない」


「どういうことだ?」


「ま、そのままの意味だよ」



 そう言って、彼女は人混みの中へ消えてしまった。なんだったんだよ……なんて思いつつ、俺は勉強会組を待った。



 やがて、人混みの中からネルが現れた。その瞬間、ほんの数秒、俺の中の時間が止まったように思えた。ネルはこちらに向かって走ってくると、嬉しそうに言う。



「クロード! 見つけた!」


「ネル! すまない、その……魔獣の空腹で森に行ってたんだ」


「そういうことだったんだ……良かった、見つかって! ずっと探してたんだ」


「でも、なぜここにいることが分かったんだ? 勉強会組に会えたのか?」


「ううん、知らない生徒が教えてくれたの……でも彼女、どこかで会ったような気がするけど覚えてないんだよね」



 変人のことか。アイツ、粋だな……今度飯でも奢ってやるとしよう。


 俺は立ち上がって、ネルと共に約束していた店へと駆け足で向かった……しかし、その店はおろか、すべての店が閉まっていた。俺は残念な気持ちになった。そして、ネルに謝る。



「ネル、すまない……俺のせいで遅れてしまったから」


「ううん、今日はクロードと沢山周れたから満足だよ。それにほら、この後は花火があるでしょ?」


「そうか、そうだな」



 すると、背後からジルの声が聞こえた。



「あーあ、誰よりも早く見つけて、クロードに飯を奢ってもらおうと思ったのにな」



 振り返ると、勉強会組が全員集まっていた。



「安心しろ、全員もれなく奢ってやるから」



 すると、ネルが不思議そうにこちらを見た。



「えっ、なんの話?」



 その瞬間、みんな可笑しそうにして俺の方を見た。そして、レオが言う。



「ま、色々あったんだよ」



 そしてとうとう全員揃った勉強組は、人混みから少し離れた図書館の近くに集まって、今日あったことや食べたものを報告し合った。



 いつの間にかメンバーが増えて、賑やかになったこの会……いざとなると、あんなにも協力的なんだな。俺はきっと、いい仲間を持ったに違いない。



 ────すると、塔の上の鐘が鳴った。その瞬間、全員が手を天に掲げ、魔力を込める。そして、一斉に魔法の花火を上げた。



 まるで昼間かのように周囲が明るくなる。色とりどりの花火が咲き乱れ、魔法学園の上空でキラキラと輝く。



 俺は、花火に照らされたネルの顔を見る。彼女もまた、俺の方を見ていた。そして、何も言わずに微笑むので……俺は同じく笑いかけた。



 花火が消えるまでのわずか数十秒の間、学園祭が終わるその瞬間、俺は確かに幸せだった。


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