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変人

 メイド喫茶を離れた俺は、とにかく午後まで暇になってしまった。ジルは入れ違いでメイド喫茶に行ってしまったし……食事はさっきしてしまった。


 俺は、何をするわけでもなく学園内を歩き回っていた。すると、知らない女子生徒に声をかけられた。この学園では珍しい獣人みたいだ。



「なぁ、お前がクロードだろ?」


「あぁ、そうだが。誰だお前?」


「私はただの変人だ」


「ほう? で、変人が俺になんの用だ」


「単刀直入に言う、私にネルさんを紹介してくれないか?」



 ……ネルを紹介? よくわからないな。



「どういうことだ?」


「今日メイド喫茶なるものに行ってみたのさ。なにせ変人だからな。そしたら、ネルさんが私のメイドだったわけだ」


「はぁ、接客してもらったと」


「それで、あまりにも素敵だったから……ネルさんのファンになってしまったんだよ」


「はぁ」



 彼女はいかにも変人らしい顔をして言った。



「あの初々しい感じがいいんだよなぁ。この業界に慣れてないというか……わかるだろ?」


「わからん」


「とか言って、お前もムッツリ変人なんだろ? 内なる変人を隠すでない」


「意味がわからない」



 俺は、もしかすると面倒なことに巻き込まれてしまったのかもしれないな。



「いやぁ、ネルさんはいいよなぁ。だからさ、お近づきになりたいんだよ」


「はぁ……悪いが、ネルのことは紹介できないな」


「まさか、お前ネルさんを独占するつもりか?」


「独占……? というより、そうだな……」



 何故か、自分以外の人間がネルと親密になるのを避けたかった……のか? いやいや、そんなんじゃないよな。きっと、こんな変なヤツとネルを関わらせるわけにはいかないと思ったんだ。



「とにかく、ネルのことは紹介しない」


「その感じ……まさかネルさんとデキてるのか!?」


「何をできてる?」


「……あ、もういいよ。くそぅ、あんなに素敵な人はなかなかいないってのになぁ」



 変人はそう言って去っていった。


 本当に何がしたかったのかわからないし、結局彼女は誰だったんだ? ……やっぱりネルに近づけなくて正解だった。



 しかし、ネルは他の客が来ても同じように接客をしているのか。そのたびに「ご主人様」と呼んで、料理が美味しくなる魔法をかけている……何故だろう。そう考えると、少しだけ胸が苦しくなった。

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