再会
学園祭の準備は順調に進んでいった。俺は仕上がった台本を読みふけって、必死に台詞を覚えた。俺は最後に少しだけ現れる役なのでまだ楽だが、主役はきっと大変だろうな。覚えるだけで精一杯だろう。
俺は演技のことが何一つわからないので、困り果てていた。明日は実際に役者組で集まって練習するとのことなので、不安でいっぱいだ。ジルめ、このことを一生忘れないからな。
昼休みになり、いつものように勉強会組の暇な人を集めて昼食を摂ろうと考えていたが、どうやらみんな準備のために色々やっていて遅れるらしい。
結局、暇になったのは俺とアランだけだった。アランと食堂に向かいながら、役者に無理やり選ばれたことを話した。
「……ということがあって、晴れて俺は役者組に入れられたわけだ」
「ほう、いいんじゃないか。思い出になるぞ」
「俺としては不服なんだがな。思い出だって、別のでいいし……というか、俺は演技には疎いんだ」
「演技か……俺の知り合いに、演劇部がいるんだが、何か聞いてみるか?」
「演劇部? あぁ、そんなのもあったな」
俺は藁にも縋りたいし、猫の手だって借りたいほどに困っていたので、それを承諾した。アランは一度教室に戻り、その演劇部の人を連れてきてくれるらしい。昼食を食べながら演技について聞いたりでもしよう。
アランの知り合いか。一体どんな人なんだろうか。奴のことだから、やっぱり勤勉な人だったりするのか。
そんなことをぼんやりと考えながら食堂の前で待っていると、アランが戻ってきた。しかし、彼が連れてきたのは見覚えのある人物だった。
彼女は俺を見るなりサッとアランの後ろに隠れ、目を逸らした。そう、アランが連れてきたのは先日俺に告白をしてきたユアだったのだ。
アランはその様子を見て不思議そうにした。
「なんだ、お前ら知り合いだったのか?」
俺はなんとも言えない気持ちのまま「多分?」と答えた。ユアはアランの後ろでコクコクと頷く。
まさかこんなところで再会を果たすとは……。
その後、三人で席について、アランに経緯を説明した。経緯とは言っても、俺としてはあの一日だけ話しただけの関係性だったので不思議な感覚だった。
事情を聞いたアランは少し気まずそうにしていた。そういえば、このことがきっかけでネルの態度が急変した時も、アランに相談していたな。あの時はまだ、勉強会組ですらなかったが。
「なんだかすまないな、二人とも……」
俺としては、あまり気にしていないのだが……彼女はどうなのだろうか。やはり、気まずいのか。証拠に、日替わり定食に手を付けずにずっと俯いている。俺もそれが気になって、手が止まってしまった
そんな状況を見たアランは、いつもより明るめのトーンで言った。
「もうすぐ学園祭だぞ。楽しみだよなぁ」
「そうかもな」
「クロードもそう思うか」
「まぁな。ただ、今年は劇でしかも役が決まっているから大変なんだよ」
「あぁ、その話だったな」
アランはユアの方を見て言った。
「まぁ、そういうわけでクロードが演劇部のユアに色々と教えてもらいたいらしい」
「……私に?」
「そうだ。俺にも、ついでに色々教えてくれよ。部活動とかやったことないし」
「いいよ。その、クロードくんがいいならね」
俺は首を縦に振った。別に断る理由もないしな。




