噂の勉強会組
シアと決闘をしてから三日後の放課後。
珍しくみんな予定が空いていたので、勉強会をすることになった。図書館の広い自習室も、いつもより狭く感じるほどだ。新たに加わったアランが軽く自己紹介をして、ネル先生による授業が始まる。
彼女は次以降習う項目の予習を中心に、みんなが試験でわからなかったところを教えてくれた。四位だったアランでさえ、座学ではネルに教えてもらうことばかりである。
そんな中、俺達の平穏を切り裂くように、訪問者が現れた。そう、俺の視界の先にはシアの姿があった。いつの間にか、突然。
「シア……?」
「やぁ、クロード。なるほど、図書館の使われていない階を拠点にするとは。流石は噂の勉強会組だね」
「……」
みんなの視線がシアに向いて、何故ここにいるのかと疑問の表情を浮かべた。それに、彼女自身が応える。
「後をつけてきたのさ、クロードのね」
「それって相当変だぞ?」
「自覚してるよ。でも、それだけ君に会いたかったのさ」
「俺は別に会いたくなかったがな。というか、お前は勉強会組じゃないんだからここにいないでくれないか」
すると、シアはニヤリと笑って言った。
「ならさ、私を勉強会組に入れてよ。いいでしょ?」
「よくない」
「いやいや……クロードはわかるでしょ?」
そして、シアが俺の隣の席に座ると、小さな声で耳打ちした。
「君の正体が魔獣であること、バラしちゃうよ?」
「……」
「いいの?」
「……考えておく。考えておくから、ひとまず今日は帰ってくれ」
シアは俺から離れると、立ち上がってひらひらと手を振った。そして、自習室から去っていく。なんだったんだ……アイツは。
しばらく自習室が静かになり、ジルが最初に言葉を発した。
「変なヤツだったな。クロードはアイツと仲良くなったのか?」
「なってない」
「だよな。だとしたらあの行動、変すぎるぜ」
「俺もそう思う」
しかし、勉強会組はおろか、学園中の生徒たちに俺の正体がバレたとすれば……いや、考えないでおこう。今は、どうやってシアに口止めするかを考えないと。クソ……最初にバレたのがネルで良かったとは思っていたが、まさか一番嫌な奴にバレるとは。
魔眼持ちには魔力の種類までわかるのか……盲点だった。
「なぁ、ジル。もし勉強会組に彼女が入ったら嫌か?」
「別に……俺はいいけど。ただ、アイツ勉強する気あるのか?」
「そうだよなぁ」
困ったな。
「リリーはどう思う?」
「私は勉強会ができた当初から、人数が増えるのを見越していたから。勉強の邪魔さえされなければいいかな」
「ネルは?」
「ぐぬぬ……難しいね。まぁ、一人増えたところでやることは変わらないんじゃない?」
「レオは?」
「ジルと同じ意見だ」
「シオ?」
「レオさんがいいなら」
「アランはどうだ?」
「新参者の俺に決定権はない」
みんな〝邪魔しないなら入ってもいい〟ぐらいの意見ばかりだな。どうするか、やはり口止めのために入らせるべきか……?
ひとまず、この話は保留としよう。
「すまないみんな、このことは後ほど決めることとする。じゃあ、勉強会を再開しよう」
その後の勉強会の内容は、あまり頭に入ってこなかった。おかしいな、ネルはちゃんと教えてくれたはずなのに……。




