掃除
次の日。俺とシアは律儀に広場まで集まり、シーナ先生を待った。広場付近にはロープが張られて封鎖されており、辺りには魔力をぶつけた後の残骸が散らかっていた。
そしてしばらく、お互い無言の状態が続き、やっとシアのほうから話しかけてきた。
「クロード、掃除は得意?」
「逆に、得意に見えるか?」
「見えないね。もちろん私も苦手だ」
シアはニヤリと笑う反面、大きなため息をついた。
「だからこそ、掃除なんてやってられないよねぇ」
すると、ちょうどそのタイミングでやってきたシーナ先生が言った。
「自分で散らかしたんですから、それぐらいはしましょうね」
「……はい」
昨日確信したが、シーナ先生はとんでもない人物だ。魔法学園のトップ達による全力の魔法のぶつかり合いを相殺し、平然としていられる魔力量……きっと、俺達勉強会組が束になっても敵わないほどに強いんだろうな。
そして、愉快な掃除が始まった。まずは散らかった瓦礫を、箒でかき集める作業をした。これがまた面倒で、石畳の隙間に瓦礫が挟まってやりづらいのだ。
掃除しながらも、シアは何度も俺に話しかけてきた。
「クロード、趣味は?」
「散歩」
「クロードの好きな学食のメニューは?」
「色々」
「クロードの好きな教科は」
「ない」
「クロードの────」
「なんだか質問が多いな?」
俺はとうとう鬱陶しくなって、話を遮った。シアは、ニヤニヤしながら掃除の手を止め、それに答える。
「君のことが気になって仕方ないんだよ。かんなに〝おもしろい〟人がこの魔法学園にいたなんてね」
「俺はおもしろくないぞ? ギャグとか言わないし」
「そういう問題じゃなくてだね、もう存在自体がおもしろいっていうか」
なんだよそれ。半分バカにしてないか? 俺はなるべく普通の生徒を装っているはずだから、存在がおもしろいはずはない。
すると、同じく箒を持って掃除していたシーナ先生が言った。
「サボると日が暮れますよ?」
俺達は気だるげな返事をして、また掃除を再開した。
日が暮れる直前になった。俺達が掃除を終えると、シーナ先生が金貨を徴収した。壊れてしまった広場の床を直すためには少し足りないらしいが、そこは先生が出してくれるとか。
先生にお礼を言い、各々で解散しようとしたその時……俺はシアに呼び止められた。
「ねぇ、クロード」
「なんだよ?」
「君の魔力ってさ、変だよね?」
その瞬間、シーナ先生が足を止め、俺達のほうを見た。
「私、魔眼を持ってるんだけどさ。クロードの魔力は変な色をしているよ」
魔眼とは、あらゆるものの魔力の流れや量を見ることができる、生まれつきの才能のようなものだ。
「気の所為だろ」
「私の魔眼は嘘をつかない」
「なら、俺が偶然変な奴なのかも」
「そういうこと。だからさ、ますますおもしろくなってきたよね」
シアはニヤリと笑って、翻った。
「その魔獣みたいな魔力は、どこから湧いてくるんだい?」
俺は返事をせず、そのまま歩き出した。彼女も、シーナ先生も、その後は何も言わずに解散した。
俺は少し不安になった。もしかすると、彼女に俺が魔獣であることを勘付かれるかもしれない……そうなったら、ネルのときとは違い退学────。
いや、最悪の場合処刑か。
俺は、なるべく自分を落ち着かせる努力をした。
よければ評価等よろしくお願いします!




