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湖のほとり



湖のほとり


 魔獣はアランを追いかけながら、地面を揺らして走り続ける。やがて、魔力溜まりに差し掛かった……そこでアランは罠に魔獣を誘い込んだ。


 彼に向かい前足を振り上げた魔獣は、そのまま俺達の用意した罠によって拘束された。ロープに繋がれていた木がミシミシと音を立てている。魔獣も、そこから脱出しようともがいている。これは長くは保たないな。



「アラン! 一旦こっちに逃げてこい!」


「いや、俺には作戦がある!」



 そう言うとアランは、魔力溜まりのある水辺に近づいて手をかざした。まさか……そこにある魔力を利用して魔法を撃つつもりか。



「無茶だ!」



 俺の叫びはアランには届かず、彼の手には魔力が込められていた。そして、魔力溜まりから膨大なエネルギーを吸い上げると、巨大な火の玉を頭上に作った。


 俺は咄嗟に、接近戦に持ち込もうとしていたレオとシオの前に魔法で土壁を作った。そして、ネルに指示する。



「ネル、衝撃に備えろ! 爆発したらすぐに消火だ!」


「わかった!」



 アランが天に掲げていた手を振り下ろすと、魔獣に向かい大きな火の玉が飛んでいった。そして、着弾した瞬間に、周囲が昼間のように明るくなった。轟音が響き渡り、土煙で視界が奪われる。



 爆風によって地面に倒れ込んでいた俺は、すぐさま起き上がると、煙やネルによる水魔法の雨の中、アランの元へと駆け寄った。


 彼は地面に倒れ込み、ひどい傷を負っていた。俺が魔力を込めてヒールをすると、その傷はすぐに塞がった……しかし、彼は疲弊したのか、立ち上がらなかった。



「アラン、何故あんな無茶したんだ。魔力溜まりを利用するなんて……怪我人が出て当然のことをしたんだぞ」


「……魔獣は嫌いだ」


「え?」


「どんな魔獣であろうと、俺は嫌いなんだ……だから、俺の手で倒したかった。それだけだよ」


「……そうか」



 何故か少し、胸が締め付けられる感覚がした。どんな魔獣であろうと嫌い……ならば、俺の正体を知っても、彼はそう思うのだろうか。


 ピクリとも動かなくなった大型の魔獣の方を見る。アランは確かに、自分の手でコイツを倒したようだ。



 煙が晴れた頃、背後からネルの声が聞こえた。



「みんな大丈夫!?」



 俺は手を上げて「こっちは大丈夫だ」と伝える。すると、今度はレオの声が聞こえた。



「なんとかな。土壁のおかげで直撃は免れたよ」



 シオも同じく無事みたいだ。



「僕も壁に助けられたよ……まったく、怪我したらどうしてくれるの、サブヒーラーさん」



 アランは寝転んだまま小さく「すまない」と言って謝った。


 ネルの水魔法により、辺りの火は消え、湖のほとりには静寂が帰ってきた。その瞬間、俺は勝利を悟った。

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