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距離

 ネルにノックされて目を覚ますと、俺はすぐさま扉を開けた。ネルはまた眠そうにしていた。そして俺から目を逸らすと小さな声で言った。



「クロード、おはよう」


「おはよう……なぁ、ネル。昨日から、目を合わせてくれなくなったよな? やはり、俺が無茶したことを怒っているのか」


「え? それは、ごめん……別に怒ってなんかないよ。ただ、その……距離を詰めすぎたかなって、あはは」


「距離? 俺にはよくわからないが、だからって逆に距離を取られてしまうと、こんな俺でも少し……寂しくなる」



 ネルはそれを聞くと、顔を上げて、俺の目を見た。



「ならその、こうすればいい……?」


「それでいい」


「は、恥ずかしいけどね……!」



 俺はネルとともにデッキに出て、眠る前に考えた考察について話すことにした。あくまで仮説だが、昨日仕掛けた罠が無駄になるかもしれない。



「ネル、聞いてくれ。俺の考察だと、また今日、魔獣が現れるかもしれない」


「え? そうなの?」


「魔獣としての俺は、決まって夜に空腹を感じるんだ。いわゆる夜行性ってやつだが……例の魔獣も同じなんじゃないか?」


「それで、昨日食事をしそこねた魔獣は……また今日そのために動き出すと?」


「そういうことだ」



 ネルは少し身構えている様子だった。そして、湖の方を注視する。



「俺のもう一つの考察だが、多分あの罠は機能しない。昼間、ずっと湖の中にいるような魔獣が魚を食べるなら、泳いで魔力溜まりの方まで行けばいいだろう。それに、奴の手には爪があった。大きな爪が」


「た、確かに……」


「奴の食事は恐らくこっち、森林のほうで行われるのではないか」



 俺は月明かりに照らされた、暗い森の方を指差した。あの森は、確かに方角的には湖から見て魔力溜まりのほうにある……だから俺達は勘違いしたのだろう。



「じゃあその、今日を逃したら次の食事はいつになるかわからないよね?」


「そういうことだ。魔獣が考察通り現れたら、一緒にみんなを起こしに行こう」


「そうだね。全員で集まってから戦闘を始めよう」



 その後、二人で魔獣の討伐について話し合いながら監視をしていると、例の魔獣が出現した。水面が大きく飛沫を上げて、大きな体の魔獣がはい上がってくる。


 俺達は、すぐさま分担して各部屋に行き、みんなを起こした。全員が目を覚まし、集合したのを確認すると、外に出て魔獣の存在を確認した。



 レオが全員に指示する。



「フォーメーションにつけ。シオは俺の隣、後ろにクロード、アラン。最後列はネルだ」



 俺達は配置につくと、それを崩さないようにしながら静かに接近した。そして、魔獣にある程度近づいたところでレオが言う。



「ストップ、まだ気づかれてない。魔法が使える奴は、全員遠距離魔法を貯めろ。俺の合図で放つぞ」



 俺とアラン、そしてネルは、各々が得意な魔法を手のひらに込めた。俺も、なるべく多くの魔力を込めて、威力を高める。



「三、二、一……放て!」



 レオの合図で、俺達は一斉に魔法を放った。それと同時に、シオもナイフを投げる。すべての魔法が命中し、ナイフが刺さった魔獣は、耳をつんざく大きな咆哮を上げた……そして、こちらを認識する。



 ────その瞬間、周囲がパッと明るくなったかと思えば、魔獣が口から放った炎の球が目の前の地面に着弾し、俺達は吹き飛ばされた。


 受け身を取って、体勢を立て直した俺は、爆発の煙をかき分けて全員が無事であることを確認した。そして、すぐさま次の攻撃のために手のひらをかざした。


 そして、レオが言う。



「もう一度同時に魔法をぶつけるぞ。命中した瞬間、俺とシオが距離を詰める」



 俺は「わかった」と返事をして、魔力を先ほどの倍、溜めることにした。魔力の温存など考えないほうがいいな。それよりも早く決着をつけなければ。



 俺達はもう一度、レオの合図で魔法を放った。そして、そのままレオとシオが近接攻撃を仕掛ける。見事な連係から繰り出す連撃は、確かに魔獣の足に命中した……が、魔獣が足を使って二人を薙ぎ払う。


 宙を舞い、地面に叩きつけられた二人に、すぐさま俺とネルがヒールをする。アランは牽制のため、少し離れた場所で、魔法を撃ち続けた。



 すると、魔獣のターゲットがアランの方へと向いた。



 アランはそこで、何を思ったのか俺達とは反対方向へと走り出した。魔獣はそれを追いかけて、同じように走り出す。



「アラン、どこへ行くんだ!」



 俺が声を上げるが、彼が足を止めることはなかった。その行き先は、例の魔力溜まりと罠がある方角だ。そして、彼のやろうとしていることを悟った。


 俺はレオに言う。



「アランは恐らく魔獣を罠にはめる気だ。俺達も追いかけるぞ」


「あぁ、流石に一人だと危険だろ……それに、罠で拘束できても、倒す方法がない」



 俺達はアランと魔獣を追って、ただ全速力で走った。

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