嫌な予感
レオがデッキにグリルを用意すると、魔法を使い炭に火をつけた。次にシオが魚を網に並べていく。その間、アランはひたすら火を仰いでいた。
ネルは俺の隣に座って、彼らを見ながら苦笑いして言った。
「ねぇ、クロード。いざこうなると申し訳なくならない?」
「いや、今から食べるのは俺達のチームが釣った魚だ。これくらいしてもらって当然だろう」
「そうだね……まさか他の二チームともが一匹も釣ってこないなんて思わなかったよ」
日が暮れ始めた頃、釣りを終えてみんなで集合してみたところ、レオもシオをアランも渋い顔をしていた。なんと、俺達のチーム以外は何も釣れなかったらしい。
しかし、変だな……竿も餌も同じはずなのに。ネルが上手なだけなのか? そんな俺の表情を読んだのか、ネルが言った。
「ちょっと変だよね。湖なのに何も釣れないなんて……」
すると、魚を焼いていたシオが言った。
「その、仮説なんだけど……レオさんが不器用な以上に、釣れなかったのには理由があるんじゃないかな。例えば、クロネルチームが釣った場所の近くに魔力溜まりがあったとか」
クロネルチームってなんだよ……と言いたいところだったし、レオも「不器用だと?」と言おうとしていたが、それどころではなかった。シオの言う、魔力溜まりの説にピンと来たからだ。
魔力溜まりとは、特定の場所が、突如魔力の発生源になる現象で、そこに魔獣を含む多くの生物達が集まってくることがある。それが後に拡大していったものが、ダンジョンとなって魔獣達の巣窟になることもしばしば。
俺はその現象について、嫌な予感がした。そして、ネルに小声で耳打ちする。
「俺がさっきビビっと来た釣り場って……そういうことだよな?」
「そうかもしれないよ……魔力溜まりに魔獣の勘、関連してそうだね」
俺はシオに言った。
「それで、偶然俺達は魔力溜まりの近くを釣り場に選んでしまったわけだ。偶然な」
「だから、湖全体の魚が一点に集中していたのかも」
「そうなると、やはり例の大型魔獣と関係が?」
「わからない。今のところ、少なからず何かあるように思えるけどね……あ、焼けたよ」
シオは串に刺した焼き魚を全員に配ると、また考察を続けた。
「今回のターゲットになる大型の魔獣は突然この森に現れたんだよね。それに、その魔力溜まりも同じように、急に現れたはず」
「村長から聞いた釣り人が言っていた話はそれか」
「そうだろうね。だからこそ、その二つの事象に関連性はありそうだ」
少しずつだが、見えてきたな。今回の依頼の謎である部分が。魔獣と魔力溜まりの関係性を知ることができれば、今回の討伐もうまくいくかもしれない。一番考えられるのは、近くの森にある湖住んでいた大型の魔獣が、魔力溜まりに惹かれてこちらの湖に居場所を移した……といったところか。
俺達は焼き魚を貪りながら、今後の予定を立てた。ひとまず、明日の昼に例の釣り場である魔力溜まりを調査しつつ、その付近に罠をセットする。これが、一つ目の作戦だ。
食事を終えた俺達は、罠作りに取りかかった。
今夜、交代で見張りをしつつ、明日作戦を決行する。
俺はワクワクしている反面、少し心配だった。ダンジョンの奥にある魔力溜まりでエネルギーを得た魔獣は……ボスと呼ばれ強大な力を持つ場合がほとんどだ。
大型の魔獣がそうでないという確証はどこにもない。やはり、早いうちに討伐しないと……この綺麗な湖が魔獣の巣窟になるかもしれない。




