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もうクエストは始まっている

 放課後、様々なクエストが掲示されている掲示板の前に集まった。俺とレオ、シオ、アラン、そしてネルが今日のメンバーである。


 どのクエストを受けるかどうかは、ベテランであるレオが決めることになっている。シオ曰く、「どの依頼を受けるかどうかを決める時点で、もうクエストは始まっている」らしい。



 そして、しばらく悩んでいたレオが俺に聞いた。



「二択までしぼったぞ。報酬が少ない代わりに簡単な方か、報酬が多い代わりに難しい方か。どっちがいいかはお前が決めろ」


「言わなくてもわかってるだろ?」


「一応聞いたんだよ。報酬が多い方な」



 レオは掲示されていた紙を持って、冒険者協会のカウンターまで持っていった。その間、俺はみんなの持ち物に注目した。これからは実際に魔獣と戦うことになるんだ。武器だってちゃんと持ってきている。


 まず俺は、腰に短剣を装備していた。魔法使いだが、一応な。ネルやアランも同じ理由で短剣を持っている。


 次にレオだが、背中に大剣を背負っていた。随分と似合うな、なんて思いながらシオの方を見る。彼は短剣よりも短い、ほとんどナイフのようなものを手に持っており、それからさらに小さなナイフを沢山ケースに仕込んでいた。



「シオはナイフ使いなのか?」


「ナイフはいいよ。いざという時に投げたりできるし、お料理にも使えるからね」


「クエスト中に料理はしないだろ」


「お腹すいたら教えてね」


「聞いてたのか?」


「聞いてないよ?」



 シオはいつもの調子だった。ふと、アランにも声をかけてみる。なんだかんだ、彼が一番緊張しているようにも見えた。



「アラン、お前緊張してるだろ?」


「そりゃするだろ。逆にお前は平気なのか? 初めてなんだろ?」


「しないな。狩りに比べたら危険性が少ない」


「狩り?」


「……昔猟師だったんだ」


「そうだったのか。やけに魔法を使った戦闘に慣れているわけだ」


「……そうだろ?」



 セーフだな。そう、これによって俺は昔猟師だったという設定が誕生した。少々面倒ではあるが、魔獣であることがバレるよりいい。



「いいか、アラン。お前は威勢が良かった時のほうが生き生きしていて良かった。緊張とかするな」


「なんだそれ……今更そんなこと言われてもな」



 と、言いつつも少し緊張がほぐれた様子だった。これでよし、準備は整ったな。レオが俺達の元へ戻ってきて、いよいよクエストが始まった。


 しかし、まずはその目的地に行かないといけない。学園から出ている馬車に乗って、今からしばらく揺られることになる。シオ曰く「クエスト内容を馬車の中で確認することも、とても大事なこと」だと言っていた。



 全員が馬車に乗り込むと、ネルが代表してクエストの内容を読み上げることになった。



「えっと、『とある大型の魔獣の狩猟依頼。私たちの村の近くにある湖に、大型の魔獣が住み着くようになりました。それを討伐し、証拠を持ってきていただければ、その対価として金貨六枚をお渡しします』だってさ」



 金貨六枚か。かなり多いな。みんなで分ければ一枚余るが、とにかく大物だということがわかった。そして、その討伐対象も大物らしい。湖に住み着いた大型の魔獣か……本当に俺達で倒せるのだろうか。


 ふと、ネルの方を見ると彼女も同じように思っていたのか、苦笑いした。



「ちょっと不安になってきたね……」


「大型、と言ってもどのくらいなのか気になるな。魔獣の討伐なんて久しくやってないし」



 〝夕飯〟以外はな。



「まぁ、危険そうだったら辞退してもいいみたいだね。できればしたくないけど」


「そうだな。まぁなんとかなるだろ」


「うん、今はどうやって湖から魔獣をおびき寄すかを考えたほうがいいかもね」



 すると、シオが挙手した。



「囮とかどう? 釣りみたいに引っ張り上げるの。餌はレオさんとか丁度いいんじゃない?」



 すると、レオが声を荒らげる。



「はぁ!? シオ、お前正気か? レオ・ファミリーにはあるまじき提案じゃないか?」


「正気じゃないよ。冗談だよ」


「……シオのそういうとこ、嫌いだぞ」


「嫌わないで」



 二人は仲がいい……はずだよな。それに、シオはレオを尊敬しているんだよな。なんだか変な関係だ。見ていて少し面白いと感じてしまったぞ。


 とにかく、俺達は湖から魔獣をおびき寄せるヒントを得るために、到着次第村人たちに聞き込み調査をすることを決めた。



 そして、レオが言う。



「このクエスト、多分だが数日かかるぞ……明日以降の欠席も覚悟しておけよ」



 試験後で良かった……俺は心からそう思った。今から始まる高難易度クエストへの期待と、ほんの少しの不安を胸に、馬車は走り続けるのであった。



 果てしなく続く、新緑の地平線をめがけて。

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