有効活用
有効活用
例の依頼主がいる村に着いた。とてものどかで、見渡す限り畑が広がる素敵な場所だった。村の入り口の小さな看板には旅人を歓迎する旨の言葉が書かれていた。
小さなゲートをくぐると、草や土の匂いがして、爽やかな風が吹き抜けた。魔法学園と違い、背の高い建物などはなく、本当に小規模の村だった。
クエストの依頼主を探すために村を歩き回っていると、年老いた男に声をかけられた。
「君たち、もしかしてクエストの?」
レオが代表して返事をした。
「あぁ、そうだ。お前が依頼主か?」
「そうとも。私がこの村を代表して、冒険者協会に依頼をな……しかし」
「こんな学生ばかりで不安か?」
「……少しばかりな」
「安心しろ。俺達も本気だ。そこらの学生の小遣い稼ぎとは一緒にするな」
すると、男はふっと笑った。
「気に入った。今回の依頼について説明するから集会所までついてきてくれ」
「わかった」
「そうそう、自己紹介がまだだったな。私はこの村の村長だ」
なるほど、だからこの村を代表して依頼をしたのか。ということは、やはり例の魔獣の脅威は相当なものなんだな。
そして、俺達は集会所へ向かいながら軽く自己紹介をしていった。
「俺はクロードだ。魔法使いをやっている」
「私はネル。同じく魔法使いだよ」
「俺はレオ。見ての通り剣士だ」
「僕はシオ。それだけ」
「俺はアランだ。まぁ、魔法使いだな」
全員の役職や名前を把握してもらった後、俺達は村の集会所に着いた。そこは、他の建物よりは大きく村人が全員集まれるくらいのサイズだった。
集会所に立ち入り、全員が地べたに座るよう指示された。
そして、村長が今回の依頼内容について説明し始める。
「ここからしばらく歩いたところに、大きな湖がある。しかし、そこで住み込みで漁をしていた釣り人が行方不明になるという事件が起きた。それを不審に思い、私は村の冒険者に調査を頼むことにした」
村長は強く言った。
「しかし数日後、彼らは謎の大型の魔獣に襲われて逃げ帰ってきた……現在はその湖には近づくなということになっている。また、その魔獣が現れる条件は不明で、住み込みの依頼になるかもしれん」
住み込みか……レオの言っていた通りだ。クエストの進行状況によりやむを得ず欠席する場合は、学園側に申告すればなんとか許してもらえるはずだ。問題は、その魔獣と遭遇できるかどうか。そして、倒せるかどうか……。
すると、村長は俺に向かって鍵を投げた。俺はそれをキャッチすると、質問した。
「これは?」
「湖のほとりにある小屋の鍵だ。ここから遠い湖の見張りを効率よくするには、そこにみんなで泊まってもらうのがいいと思ってな」
「ほう、わかった」
「ベット付きの個室が五部屋ほどあったか……それに、釣り用のボートと竿が何セットかあったはずだ。自由に使っていいぞ」
「食料は自給自足と?」
「いやいや、食料は別で支給する。ただ、せっかくのリゾートには何か楽しみがないといけないだろう?」
「はぁ」
こっちは遊びに来ているんじゃないんだぞ、と言いたいところだったが、確かに数日間魔獣を張り込むのにやることが何もないというのはかなり気が滅入りそうだな。
「君たちは学生なんだから、せめて時間を有効活用しないとな。私も昔は、魔法学園で沢山学んで、放課後には沢山遊んだものだ」
「気遣いに感謝するが、依頼はちゃんとこなすから安心してくれ」
「もちろんだ。ただ、依頼のことばかり考えて怪我しないよう、くれぐれも注意するんだぞ」
俺達は大きく頷いて、その覚悟を伝えた。
「あぁ、それと。最近はあまり大物が釣れないと釣り人が言っていた」
「ほう?」
「まぁ、釣りを楽しむ分には問題ないと思うがな」
「わかった」
湖に潜む大型の魔獣の討伐依頼。それが正式に受注され、俺の初クエストが始まろうとしていた。




