権利
食堂について、アランの姿を見た勉強会組は何かを悟った様子だった。ジルは何度も頷いて、納得していた。
「どうやらクロードの必殺技が炸裂したようだな」
「そんな技はない」
「とにかく、人数が多い方が賑やかでいいだろ」
「そうだな」
レオは少し不満そうである。
「何故コイツがいるんだ」
「まぁ、罰ゲームみたいなものだ」
「それだと俺にとっても罰ゲームになるだろ」
アランは言い返したりせず、下を向いていた。本当、試験前の威勢はどこへいったのか。しかし、レオも文句を言いつつも本当に嫌がってはいなかった。みんな優しいな、さすがは勉強会組だ。
みんなで食事をしている間、アランはずっと無言だった。なんだか気の毒になったので、話を振ってみることにした。
「なぁアラン、お前学イチに随分とこだわっていたが、一体なにをするつもりだったんだ?」
「……学費だよ。正直、こうして朝食をとることすら厳しいくらい、金がないんだ」
「それを免除してもらうために、か」
「そうだ。ライバルであるお前らを挑発したのも、動揺させて成績を悪くしようとしたんだが……思ったよりも冷静だった」
「なるほど。どうしても獲りたいのは分かるが、そんなやり方では無理だな」
アランは食事の手を止めた。
「でも、学費は今年一杯で払えなくなる。来年の学イチには間に合わないんだ」
すると、レオが言った。
「レオ・ファミリーと一緒にクエストを受けないか? 俺の部下たちにはそれで学費を稼いでる奴らが山程いる」
「……ほう?」
隣にいたシオもコクコクと頷く。
「勉強に明け暮れていて気づいてないかもしれないけど、クエストはちゃんとしたものを受ければ相当稼げる」
「……でも、俺は別に戦えるほど強くないし」
「ヒーラー枠なら空いてる」
アランはレオの方を見て、少し複雑そうな表情を見せた。わかるぞ、その気持ち。自分が散々文句を言った相手に優しくされて、どうすればいいかわからないんだな。非常に人間らしい行動だ。
すると、シオが言った。
「レオ・ファミリーに入りたければ旧・薬草学棟までどうぞ」
俺も続けて言う。
「勉強会組に入りたいなら図書館に来い。勉強なら成績二位のネル先生が教えてくれる。まぁ、来年の学イチは俺が獲るが」
「…………」
アランは黙ったまま、食事の手を進める。そして、食べ終わると食器を持ってすぐさま立ち上がった。
「これで決闘の約束は果たした。俺は帰る」
「あぁ。また気が向いたら来い」
「……まぁ、お前らがそう言うなら」
「違うな、そこは『ありがとう』と言うべきだ」
アランは嫌そうな顔をしてから、周りの音にかき消されるくらい小さな声で言った。
「……ありがとう」
「それでいい」
彼には、一度相談を受けてもらった事があったな。その恩もあるし、それに困っている人間を放置しておけるほど心も狭くない。どうせアランは勉強会にもレオ・ファミリーのクエストにも参加するだろう。顔にそう書いてあった。
試験を終え、結構学イチを手にすることはできなかったが、これでよかった気がする。
新たな仲間が増え、目標もできた。
そしてふと、ジルが言った。
「今回総合成績が一位だったシアは、学イチでなにをするつもりだろう」
「それは確かに気になるな」
「一昨年もシアが獲ったんだが、その時はその権利を放棄したらしい。だから、今年もそうなのかも」
「権利を放棄? 何故だ」
「さぁ?」
しかし、どうせまた今年も権利を放棄するんじゃなないかと考えていた。シアとは接点もなければどんな人物かもわからない。だからこそ、彼女を甘く見ていたのかも知れない。
まだこの時は、あんなに大事になるとは思っていなかった。




