ライバル
結局、レオやシオには「その件について手伝えることはない」「自分で解決することこそが一番の正解だ」と言われてしまった。その後、しばらくは一緒にネルを待っていてくれたが、レオとシオは空腹に負けて先に食堂に言ってしまった。
ポツンと取り残された俺は、まだぼーっとネルを待っていた。待っている間教科書でも開けば有意義な時間になるのに、それすらやる気にならない。俺は、少し動揺しているのかもしれない。
当たり前のように俺に会いに来て、当たり前のように一緒に帰る。いつもそうだった。しかし、今日は違う。体調不良で休んでいるのだろうか。それとも、ジル達の言うように俺が何かしたのか────。
そこへ、教室の外から声をかけられた。
「おい、施錠の時間だから出ろ……って、クロードか?」
「お前は……誰だっけ?」
「アランだ! ライバルの名前くらい覚えろ!」
「ライバルじゃないからな」
「なっ、俺を舐めているな!? 今に見てろ!」
コイツはずっと怒っているな。出会った日も終始怒ってたし。疲れないのか? それに、俺をライバル視していたのか。ネルに対しても同じような態度だったよな……ネルか。
「で、アランはなんでここに?」
「先生の手伝いで鍵を閉めに来たんだ。だから早く出ろ」
「わかったよ」
俺は立ち上がり、教室を出た。アランはすぐさま鍵を閉めてその場を去ろうとする。いや……待てよ。一応だな。うん、聞いて損はないはずだ。
「なぁアラン」
「なんだ? 俺はお前と違って忙しいんだが」
「相談したいことがある」
「断る! ……いや、聞くだけ聞いてやるよ。なんだ?」
「ありがとな、意外と優しいじゃないか」
「ふざけるな、あんまりくだらないこと言ってるとキレるぞ!」
「キレてるぞ、既に」
そして、俺は昨日の出来事を話した。
「ほう、まずクロードは五位……もといネルと仲良くしていたが、態度が急変したと」
「あぁ」
「で。その原因は昨日同級生ら告白されたことにあると見たわけだ。しかし、他のみんなは何故か何も教えてくれないわけだな」
「そういうことだ。不思議だろ?」
「不思議なのはお前の脳みそだぞ、このポンコツ!」
「え……」
アランは腕を組み、ずいぶんと偉そうに言った。
「恋愛マスターである俺がヒントを与えてやろう! 見ての通り俺はモテるんだよ」
「恋愛とこの話に何の関係が?」
「……ポンコツめ。いいか、とにかくだな! お前はネルとどうなりたい?」
「うーん。わからない」
「その答えが見つかれば、お前がやることもネルの考えもすべて見えてくるはずだ」
「そうなのか?」
アランは翻ると、背中越しに言った。
「ま、このヒントがあっても答えが見つけられないようなバカならば、学イチは無理だろうな」
「……そうか」
「じゃあ俺は用事があるから行くよ。人間関係に惑わされて勉強が怠らないよう、せいぜい注意することだな」
「ありがとな、アラン」
「……やりにくいな、お前」
そう言って、スタスタと歩き出すアラン。俺は彼に対する印象が少し変わっていた。困ったときにはほとんど他人である俺の相談に乗ってくれるんだな。そういう奴だと覚えておこう。
で、だ。俺がやるべきこと……か。ネルに対して何かするのか? 謝る? でも何を?
人間関係というのは難しい……でも、ここで諦めたらネルとはもう会えないかも。それは嫌だ……って、それか。
『自分で考えろ。そんなことも理解できないようじゃこの先やってられないぞ』
『自分で解決することこそが一番の正解だ』
『ネルさんの気持ちを優先すべきだね』
『お前はネルとどうなりたい?』
そうか、俺はネルに嫌われたかもしれないのが……怖いんだ。たったそれだけのことなのに、どうして気づかなかったのだろう。
なら、やることは決まってるな。




