自分で考えろ
次の日、長かった授業が終わった。
きっとネルが来るだろうと思い、教室で待つことにした。隣にいたジルも、リリーが来るのを待っているみたいだ。
「なぁ、クロード。今日はリリーと用事があるから勉強会はなしな」
「おう」
そして、例のことを相談することにした。
「なぁジル、昨日同級生の女子に『付き合ってくれ』と言われたんだが」
「なっ、お前とうとう告白されたのか!? 相手は誰だ?」
「名前は知らない。確か黒髪で小柄で……」
「もしかしてユアさんか?」
「そうなのか? 知らん」
「やっぱりか……今日彼女休みだったんだよな。原因不明の体調不良でさ」
彼女はどうやらユアという名前だったらしい。まぁ、今後会うこともないだろうし覚える必要はないが……体調を崩していたのか。魔法学園での体調不良というのは、軽いものならすぐに治すことができる。
よっぽど重い症状なのか……それとも俺が原因なのか? ありえるよな。
「なぁ、クロード。お前フッただろ」
「あぁ」
「まぁそうだよな。お前にはネ……いや、なんでもない」
「?」
「とにかく、彼女がクロードのことを好きだってのはそこそこ有名な話だ」
「そうなのか。まったく人間ってのは噂話な好きだな」
「人間? まぁ、だから多分ショックだったんだろうよ」
すると、そこへリリーがやってきた。そして、すぐさま問いかける。
「クロードくんが告白された話してる?」
「まぁ、そうらしいな。俺としてはそんなつもりないんだが」
「クロードくんがそんなつもりなくても告白されたものはされたんでしょ」
ネルは俺やジルの前にある席に座った。
「実は、私相談を受けてたんだ……ユアさんにね」
「相談? どんな」
「『クロードくんと仲良くなる方法』をね、聞かれたよ。私が勉強会組だって知ってるから」
勉強会組か。しかし、まさか彼女とリリーに接点があったとはな。
「で、私は言ったんだよ『クロードくんと仲良くなるのは難しいんじゃないか』って。でも、そしたら彼女、相当元気をなくしちゃって」
「そうだったのか」
「だからその、私言っちゃったんだ『まだチャンスはあるかも!』って。励ましたつもりだったんだけど。まさか告白までするとはね……」
リリーは複雑そうな顔を見せた。俺がそれを断ったことによって、彼女も責任を感じる羽目になったのか。難しいな、恋愛とかそういうのは。
すると、ジルが言った。
「まぁ、告白するかしないかはユアさんの責任だから仕方ないけどな……で、ネルさんはそのことを知ってるのか?」
「一応話しておいたんだ。その直後に待ち合わせしてあったからな」
「ほう。それで?」
「そのことを話してから少し、様子がおかしかったように思う」
「ほ、ほう?」
ジルとリリーは、同じタイミングで同じような表情をした。これから俺が話す内容に警戒しているような、そんな感じだ。
「約束していた夕飯も用事があるからって断られた」
「な、なんだって! ……その、一応聞くけどネルさんに『ユアさんからの告白は断った』ってのは言ったよな?」
リリーも隣でコクコクと頷く。
「言って……ないな。多分」
「……はぁ。お前って本当さぁ」
「なんだよ」
「キレそう」
「なんで」
「普段は温厚で寛容な俺でも、本当にキレるぞ」
リリーは隣で大きく頷いて「私もキレるよ」と言った。何故二人に怒られなきゃいけないんだ。こっちは相談しているのに。難しいな……俺が何かミスをしたとでも言いたいのか?
「じゃあジル、逆に聞くけど俺はどうすればよかったんだ? 何か大きなミスをしてしまったってことだろ?」
「自分で考えろ。そんなことも理解できないようじゃこの先やってられないぞ」
「そ、そうなのか?」
「あぁ、そうだ! ちゃんと理解して反省しろ!」
「うーん、まぁ……わかった」
俺がリリーの方をチラッと見るも、彼女も同じような反応をした。
「クロードくんのそういうとこ、弱点だと思うよ」
「え……」
「ネルさんの気持ちを優先すべきだね」
「そう、か?」
別にネルのことを軽視していたわけじゃないんだが……難しいな。というかネルの気持ちって何だ? 別に傷つけるようなことはしてないぞ。
まずいな、この二人が「自分で考えろ」っていうスタンスになり始めたぞ。俺としてはどれが正解なのか教えてくれるだけでいいのに。
そこへ、レオとシオがやって来た。そして、レオが俺達に問いかける。
「勉強会、今日はやるのか?」
「レオか。今日はジルとリリーが用事でできないらしい」
「なんだ、せっかくシオもやる気を出してたのに」
「シオは勉強会組じゃないだろ」
「いや、シオは勉強会組だ。今日からな」
「まぁなんでもいいが」
すると、リリーが「そろそろかな」と言って立ち上がった。ジルも同じように、カバンに荷物を詰めて立ち上がる。そして、俺に言った。
「とにかくクロード、お前は色々反省しろよ」
「……あぁ」
「じゃあまたな! クロード、レオ、シオ」
「おう」
俺達は教室を出ていく二人を見送ると、俺達三人は取り残された。ネルはまだ来ない。すると、シオが俺に問いかけた。
「さっきジルが反省とか言ってたけどさ、何をやらかしたの? つまみ食い?」
「違うな……そうだ! 丁度いい。お前ら二人に相談することにしよう。それがいい」
「君が相談なんて珍しいね」
レオはなんだか張り切っている様子だった。
「お、なんでも聞いてくれ! 場合によってはレオ・ファミリーが総出で解決してやるぞ」
「それは助かる……のか? まぁいい。聞いてくれ」
俺が昨日あった出来事を二人に話した。しかしその間も、ネルが教室に来ることはなかった。




