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達成感

 翌日、俺は前にレオと決闘をした広場に来ていた。何故か、ネルやジル、さらにはリリーまで見学にやってきていた。ネルとリリーは「クロードが怪我したらすぐに治せるように」と言っていた。ジルは単に気になっていたみたいだ。



 しばらくすると、レオとシオ、それから決闘委員会の委員長がやってきた。


 俺は、レオに向かって声を上げた。



「コンディションはどうだ」


「バッチリだぜ! リベンジマッチといこう」


「かかってこい」


「前回みたいな戦法は通用しないから覚悟しておけよ」


「言われなくても本気でやってやるから安心しろ」



 レオは嬉しそうな笑顔を浮かべた。今度こそ俺を倒してリベンジを果たすつもりなのだろうか。それとも、決闘が好きなのか。しかし、俺の頭の中は賞金のことで一杯だった。



 レオが委員長に言う。



「俺は『クロードが俺に謝る権利』を賭ける」



 俺も同じく委員長に宣誓した。



「俺は『金貨十五枚をもらう権利』を賭ける」



 委員長は深く頷くと、天高く手を掲げた。



「これは、決闘です。殺し合いではありません。審判である私が勝敗を決め、それを拒否することは許されません……」



 長々と決闘のルールを言い終わった委員長は、その手を振り下ろした。



「始めっ!」



 ────俺は、勢いよくレオに飛びかかった。同時に、レオもこちらに拳を振りかざす。その刹那、拳がレオの顔面を捉えた感触がした。が、ほぼ同じタイミングでレオの拳が俺の頬に直撃した。


 お互いが本気の一撃を喰らい、勢いで身体が後ろにグラつく。レオが体勢を立て直す前に、俺は彼の腹部に蹴りを繰り出した。



 レオは数メートル吹き飛ばされたが、すぐさま受け身を取り、服についた埃を払う。



「やるな……クロード」


「お前こそさっきのパンチ、効いたぞ」


「でもな、加減してるだろ。お前の特技は魔法のはずだ」


「そうか。加減はなしだったもんな。なら見せてやる」



 俺は手に魔力を込めて、大きな火の玉を作り出した。それを、レオに向かい発射する。彼はそれをかわすと、俺をめがけて走ってきた。それに向かいいくつかの火の玉を放つも、全て避けられてしまう。



「やるな」



 レオは俺の目の前まで迫り、回し蹴りを放ってきた。俺はそれを避けようと試みるが……その速さに追いつけなかった。俺は胴体に重い蹴りを喰らい、そのまま地面に叩きつけられる。息ができないほどの威力だ。



 レオは勝ちを確信したのか、俺にトドメを刺そうと駆け寄ってくる。



 しかし、突然レオの動きが止まった。その表情は焦りに変わった……なぜ自分の身体が動かないのかとでも考えているのだろう。


 これは、俺が先日シーナ先生に受けた闇魔法の力だ。俺なりに真似してみたが、うまくいったみたいだ。



 俺は立ち上がると自分をヒールし、拳を突き上げたまま動かないレオの目の前に立つ。



「どうだ、闇魔法の力は」


「…………っ!」



 レオは必死に抵抗しているようだったが、魔力のツタに絡まって動けないままだ。これが闇魔法か……習得するのが難しいだけあって、効果は絶大だな。



「レオ、約束通り加減しないから覚悟しろ」


「…………」



 俺は動けないレオに向かって思いっきり殴りかかった────。



 しかし、目の前にネルがやってきて止めに入った。



「す、ストップ! クロード、もうやめにしておかない?」


「何故だ? 加減するなといったのは向こうだぞ」


「でもほら、勝敗は決まってるんだし……それに、その。クロードが無抵抗の人を殴るのは見たくないって言うか……」


「なら、まぁ。やめておく」



 俺が闇魔法を解除すると、レオはその場にへたり込んだ。その瞬間、委員長が勝敗を知らせる。



「勝者、クロード」



 俺はふぅとため息をついて、服についた砂埃を払った。委員長が「私はこれで」と言ってその場を去るのを見送る。


 思ったより手こずったな、なんて考えつつも……ふとレオの方を見た。彼はかなり落ち込んでいる様子だった。シオも少しばかり心配そうにしていた。



「おい、レオ!」


「……なんだよ、金貨ならシオから受け取れって」


「それはまぁ、きっちり貰うが。そうじゃなくて……この後夕飯でも行くか?」


「はぁ?」



 レオは立ち上がると、不服そうに言った。



「同情か? 勝者の余裕アピール?」


「ちげぇよ。というかお前は腹減ってないのか?」


「減ってねぇよ────」



 その瞬間、レオのお腹が鳴った。強がろうと、自称・最強の不良だろうと、空腹には抗えないんだな。わかるぞ、その気持ち。



「減ってるんだな。じゃあ行くぞ」


「なんでお前なんかと飯食わなきゃ行けないんだよ!」



 すると、シオが俺の横に立って言った。



「僕は行くけど? 昨日も相席させてもらったし」



 ジルやネル、リリーも同じように俺の横に立って頷いた。レオはしばらく考えてから小さな声で言った。



「いいか、俺はシオについていくだけだからな……」


「なんでもいいからさっさと行くぞ」



 俺が翻り、夕暮れの広場を後にすると、皆それについてきた。石畳を鳴らす六人分の足跡が、疲労しきった身体に染み渡る。



 金貨十五枚はもちろんだが、もしかすると新たな友達を手に入れることができたのかもしれない。



 俺はなんとも言えない達成感に包まれていた。

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