暴力
帰り道、ジルと別れてネルと二人きりになった。夕暮れの校舎の長い影を踏みながら、ゆっくりと歩いて寮を目指す。その間わずか数十分だが、なんとなくこの時間は充実しているように思う。
ネルは今日シオが言っていたあの言葉が今も気になっているみたいだ。
「ねぇクロード、今日シオくん? が言っていた言葉についてなんだけど」
「あぁ」
「私がこの学園に入学させられた時に、同じくもう一人の男子生徒が入学したんだって。でも周囲からは、私と同じタイミングで来たってことは、彼も『呪われた生徒』なんじゃないかって思われてさ。結局、そのことを気に病んで……最後は不良になってしまったらしいんだよね」
「ほう? その『彼』がレオなんじゃないかと、そういうことか」
「そう」
思わずため息が出てしまった。
「もし仮にソイツがレオだったとしても、ネルは一切悪くないだろ」
「まぁ、そうだけど。ちょっと罪悪感があるというか」
「ほっとけ。そんなので不良になるような奴なんか」
「うーん、まぁ。そうだよね」
ネルは少し複雑そうにしていた。俺からすれば、ネルは被害者なんだから、そんなことで責任なんて感じなくていいと思うんだがな。
しばらくして、彼女が口を開いた。
「明日、旧・薬草学棟まで行ってみようかな」
「あまりおすすめしないが」
「でも、なんだかモヤモヤしてさ」
「まぁ、ネルが行くなら俺も行くが」
「え? でも迷惑かけちゃったら悪いし……」
「一人で行かれるほうが迷惑だ。その間心配で勉強にも手がつけられなくなるからな」
ネルは少し迷ってから答えた。
「なら、ついてきてもらおうかな……不良ばっかりいるだろうから、正直怖いしね」
「俺がいれば大丈夫だろう。何せ、リーダーであるレオに勝ったからな」
「あはは……でも、喧嘩とかはしないでね?」
「多分な」
「多分って……」
ネルは少しだけ嬉しそうだった。そのモヤモヤとやらを解消できるのが楽しみなのだろうか。それとも、俺がついて行くと言って安心したのだろうか。
人間は好きだ。憧れているし、尊敬もしている。しかしそんな人間にも、くだらない噂話に振り回されるという弱点があるのも事実だ。
もし、レオ・ファミリーが責任をネルに押し付けようものなら……その時は暴力で解決してやる。




