相席
その日の夕飯は、俺とネルとジルの三人で食べることになった。リリーは用事があって今回は不在だ。
俺はいつものように日替わり定食を注文し、席に着く。ネルやジルも日替わり定食にしたみたいだ。何気ない会話をしながら食べ進めていると、知らない男がこちらに近寄ってきた。レオのように制服を着崩しており、いかにも不良といった感じだ。それに、ポケットに手を突っ込んで眠そうな顔をしている。
「誰だお前?」
俺がそいつに問いかける。
「君がクロード?」
「俺が聞いてるんだが」
ヒリついた空気が流れ、ネルは食べる手を止めて心配そうにこちらを見ていた。
「僕はシオ。レオ・ファミリーの幹部ってやつ」
「ほう? で、その幹部とやらが俺に何の用だ」
「その前に注文ししてきていい?」
「は?」
「晩ごはんがまだなんだよね」
シオは淡々とそう説明すると、カウンターまでゆっくりと歩いていった。
ジルは小声で「喧嘩すんなよ」と言ってきた。俺もその気はなかったので頷いた。しかし、レオ・ファミリーは本当に存在したんだな。ジルですら奴のことを知っている様子だったし。
しばらくして、日替わり定食を持ってやってきたシオは、当たり前のように俺の隣に座った。
「何勝手に座ってるんだ。しかも隣」
「日替わり定食、今日のは当たりだね。嬉しいね」
「聞いてるのか?」
「聞いてないよ」
「……」
シオはしばらく定食を食べ進めていた。ネルとジルも、仕方なく残りに手を付けていた。
やがて、シオがとうとう口を開いた。
「クロード、君はレオさんに決闘で勝ったんでしょ」
「まぁ、一応」
「そのせいでさ、最近レオさんが元気ないんだよね」
「だからなんだよ。あいつが悪いだろ」
「まぁそうなんだけど」
シオはようやく俺の方を見た。そして、小さく言う。
「レオさんともう一回決闘してくれないかな?」
「何故?」
「もう一度、今度は普通に戦って負ければ、また元気になってくれるんじゃないかなって」
「色々意味がわからない。まず、なんでそれに協力しなきゃいけないんだ? それに、俺がまた勝ったら余計に落ち込むだろ」
「レオさんは潔く負けを認めてくれるはずだよ」
シオは定食を食べ終わると、皿を持って立ち上がった。
「もちろんタダじゃないよ。協力してくれたら、レオ・ファミリーに入れ────」
「協力しない」
「待って、会員特典も聞いて。なんと、三日にに一度くらいレオさんとお話できるよ」
「アイツとは沢山お話したからそんな権利はいらない」
「そっか、残念だ……」
そしてシオは去り際に、ネルの方を見て言った。
「ネルさんだっけ? 君にとっては、関係ない話とは言えないんじゃないかな? レオさんの過去を知れば……」
ネルは少しだけ、心当たりがあるようだった。
「それって、あの……?」
「これ以上は会員限定だ。レオ・ファミリーに入りたかったら旧・薬草学棟までどうぞ」
そう言ってシオは去っていった。
しんと静まり返って、不思議な空気が流れた。シオの言う、ネルとレオの関係とは何なのだろうか……。
しばらくしてからジルが口を開いた。
「アイツ食べるの早いな」




