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学園最強

 次の日の放課後、ネルの用事を待っている間、前にジルが座っていた日時計のある広場のベンチまでやってきた。どうやら待ち合わせるならここが定番らしい。



 待っている間暇なのでぼんやりと、遠くに見える、学園の中心にある塔を眺めていた。あれの上には確か、大きな鐘があるんだったか。生徒は立ち入れないが……少し登ってみたいな。あれだけ高ければ景色が良さそうだ。



 ────すると、背後から「おい」と声をかけられた。振り向くと、そこには知らない青年が立っていた。赤い髪をしており、制服を着崩していた。



「何か用か?」


「よぉ、お前がクロードだろ? 知ってるぜ」


「まぁそうだが、だから何だ? というかお前誰だ?」


「俺はレオ。学園最強の不良だ……まぁ、自称だけどな」


「で、自称・学園最強のお前が俺に何の用だ?」



 レオは俺の隣にどっかりと座った。



「お前、学イチを狙ってるんだろ?」


「まぁな」


「単刀直入に言う。その権利、手に入れたならば俺に譲ってくれないか?」


「嫌だ」


「まぁ待て。続きがある」



 レオは学園で一番大きな塔を指さして言った。



「学イチの権利をくれたならば、お前をレオ・ファミリーに入れてやろう。あの塔よりも大きな名誉だぞ」


「レオ・ファミリー……なんだそれ? 劇団か?」


「ちげぇよ! 俺のかわいい部下たちの名前だ。レオ・ファミリーのメンバーならば、みんなからは一目置かれるし、喧嘩をふっかけられることもなくなるだろう」


「喧嘩みたいなものをふっかけてきたお前に言われたくないんだが」


「まぁ、とにかく学イチの権利をよこせってことだよ。さもなくば────」



 レオが言いかけた途端、後ろからネルの声がした。



「クロード、お待たせ! ……っと、もう一人は? クロードの友達?」



 俺は首を横に振った。すると、レオが顔をしかめた。



「クロード、お前〝呪われた子〟とデキてるのか?」



 俺は立ち上がって、レオの胸ぐらを掴んだ。



「誰が呪われてるって? お前か?」


「おいおい……図星か? 俺に喧嘩を売るなんて百年早いぞ」



 レオも同様に立ち上がって、俺の胸ぐらを掴む。しかし、俺が手を振りかざした瞬間、ネルが止めに入った。



「す、ストップ! クロード、やめなよ!」


「何故?」


「もう、私はその話は気にしてないからさ……それより喧嘩とかしてほしくないから」


「まぁ、ネルがそう言うなら」



 俺が手を離すと、レオは面白くなさそうな顔をした。



「チッ……俺に喧嘩を売って逃げ切れると思うなよ」


「誰が逃げるって?」


「お、なら今から続きやるか?」



 ネルが俺とレオの間に入って「や、やめよう」と言ったので、仕方なく俺は引き下がった。レオも、流石に彼女に手を出すようなことはしなかった。


 しかし、去り際に捨て台詞を吐いていった。



「おい、クロード! 明日、決闘委員会に頼んで公式に勝負するぞ。ここで集合だ。賭けるものを考えておけよ!」



 ネルは俺の手を引いて急いでその場を去ると、俺に言った。



「絶対に決闘なんか受けちゃダメだよ? 決闘委員会だって、非公式のものなんだから」


「決闘ってのはどういう?」


「私もよく知らないけど……お互いに賭けるものを決めて決闘し合う。それで、勝ったほうがその権利を手に入れる、的な?」


「ほう? いいじゃないか。俺が勝つし」


「そういう問題じゃないよ!」



 ネルは珍しく声を荒らげる。



「そうなのか?」


「とにかく、暴力はダメだからね!」


「〝暴力はダメ〟ね。わかったよ」


「ならいいんだけど」



 ネルは安心したように俺の手を離した。そして、何かにハッとして顔を赤くした。



「どうした?」


「いや、その……手、ごめん。つい……」


「別に気にしてないが」


「そっか、それなら良かった……のかな?」



 ネルはしばらくそうやってソワソワしていた。



 彼女は決闘は受けるなと言っていたが、正直な話興味がある。自称とはいえ学園最強を名乗る男に勝てば俺も自称・最強になれるのではないだろうか。獣の血が騒ぐな。


 そしてなにより、勝ってレオに謝罪させよう。ネルのことを悪く言った罰を与えなくては。



 俺は少しだけワクワクしていた。

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