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 放課後、とぼとぼと現れた暗い顔をしたリリーに、昨日その件が解決したことを話した。すると、すぐさま彼女の表情は明るくなり、初めて会った日の元気一杯なリリーに戻った。



「そっか! また勉強会できるんだね!」


「あぁ、ネルもやりたがってたからな」


「よかったぁ……でも、ちゃんと謝らないといけないね」


「まぁ、本人は気にしていないみたいだが」



 すると、丁度そこへ〝本人〟が現れた。ネルは俺たち三人の元へ駆け寄ってきて、少しだけ照れくさそうな顔をした。きっと気まずいのだろう。俺にはお見通しだ。



「えっと……昨日はごめんね? 急に帰っちゃって」



 すると、リリーはネルの手を握って言った。



「私もごめん! というか私がごめん!」


「いやぁ……あの噂についてはみんな知ってることだからさ、気にしてないよ」


「ううん! ごめん!」



 リリーは精一杯謝って、ネルはそれを許した。というより、最初からそれについては気にしていない様子だったが、まぁこれで仲直りと言えるだろう。


 ジルは安心したのか、大きなあくびをした。寝不足なのだろうか。



「お前が眠そうなのも珍しいな。昨日徹夜で勉強でもしてたのか?」


「違ぇよ! お前たちを仲直りさせるべく色々考えてたら遅くなったんだよ!」


「ほう? それはその……うん」


「うんってなんだよ! ありがとうだろ?」


「うん」


「うんってなんだよ!」



 俺は心の中でジルに「ありがとう」と言った。しかしながら、それを声に出すのは少しばかり躊躇してしまった。なんだか癪だったのかもしれない。


 それでも、今度夕飯くらいは奢ってやろうと心に決めたのであった。



「で、次の勉強会はどうするんだ?」



 俺が問いかけると、三人は口を揃えて言った。



「今日?」


「今日だろ」


「今日にしよう」



 その後、俺たち四人はまた図書館の例の自習スペースに集まった。そして、ネルの授業を聞きながら各自の苦手なところを対策していく。俺も同じように、ネルから色々なことを教えてもらった。


 これなら、あまり得意ではない筆記試験もなんとかなるかもしれない。



 試験は、筆記と実技の二種類があり、筆記はその年に習った範囲の中から出題されるテストに答えるというもの。実技は、指定された魔法を試験官の前で披露するというものだ。



 魔獣は人間よりも数倍聴覚が鋭く、嗅覚も同様に敏感である。だが、それ以上に体内に保持している魔力の量が人より何倍も多いのだ。魔力は、魔法を使う時に必要なエネルギーで、魔力量が多いイコール魔力をたくさん使えることを意味する。


 俺の実技試験の成績がいいのはそういう理由だ。



 すると、ジルが挙手した。



「なぁ、ネル先生」


「先生!? ……えっと、何かな? ジルくん?」


「ここが分からないんだけど」


「どれどれ」



 ジルはネルのことを先生だと認識しているらしく、次から次へと質問していた。まぁ、ネルも楽しそうだしみんなの仲が良くなってなによりだ。



 図書館の寂れた自習室は、俺たちの勉強の場となった。なんだか人間みたいで楽しいな。



 しばらく勉強してからその日は解散となり、ジルとリリーはまた用事があるらしく先に帰ってしまった。明日以降はネル先生に用事が入ってしまったため、勉強会は数日間は開催されないらしい。



 ネルと二人きり、夜の魔法学園をゆっくり歩いた。そして、今日ジルから聞いた成績トップの面子について話す。



「どうやら、俺たちのライバルになりかねないのはシアとアランの二人らしい。まぁ顔すらしらない奴だがな」


「アラン……? あ、知ってるかも」


「知り合いか?」


「いやぁ……ついこの間出会ってすぐに『学イチは俺が獲る! お前の出る幕はないだろう!』って言ってどこか行っちゃった」


「それは、相当変な奴だな」



 初対面なのにその態度か。成績が優秀だからといって人間として優れているわけではないのかもしれないな。現に俺は人間ですらないし。



「クロードも気をつけてね。きっとライバル視されてるはずだから」


「まぁ、気をつけようもないが。心に留めておこう」


「うん。あ! そういえば明日さ。放課後用事があるんだ。だから一緒に帰れないかも」


「そうか……なら用事が終わるまで待っておこうか? 夕飯も食べたいから」


「なっ、なるほど……待たせるのは申し訳ないけど夕飯は一緒に食べたいから……むむむ」



 ネルはしばらく悩んでから言った。



「用事とはいってもすぐに終わるから、もしよければ待っててもらえる?」


「あぁ、そうしよう。どうせ急いで帰ったところで寮でやることがないからな」


「そっか、ありがとね」



 ネルと明日についての約束をしたところで、丁度寮に着いた。



「じゃあ、またね」



 ネルが小さく手を振る。



「あぁ」



 俺も同じように、手を振り返した。いかにも人間らしい別れの挨拶だ。


 この後は、水浴びをしてから試験に向けて勉強でもしよう。アランという人物についても気になるな。次の勉強会も楽しみだし。そうか、シーナ先生にお礼も言いにいかなくては。



 ネルと出会ってから、俺の人生は変わったのかもしれない。 

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