ネル
試験から数日後の放課後、教室でジルと話していると、リリーがやってきた。それも、少し焦った様子である。
「どうした? リリー」
「あ、クロード。その、前に言ってたネルさんの不調についてだけど……」
「あぁ、その話か。やはり、試験を頑張りすぎたのが響いているのか?」
「そうかもね……それでね、とうとう今日ネルさんが早退したんだ」
「ネルが早退? そうか……」
リリーは不安そうに言った。
「試験の日以降、ネルさんは次第に元気がなくなっていたから、ずっと心配だったんだけど……」
「ならリリー、今日女子寮にでも出向いて様子を見てやってくれないか?」
「もちろん、そのつもりだったよ」
ネルの調子が悪くなってから、俺は気が気でなかった。本人に訊くと、勉強の疲れだとか寝不足だと言っていたが、ネルは自己管理ができる人のはずだ。
試験のために無理したのか? それが今になって響いてるとか?
何にせよ、リリーに様子を見てもらうまで待機だな。
その後、今まで通り勉強会が開催されたものの、教える側のネルが不在なため大したことはできなかった。また、勉強会組のみんなも彼女の体調が心配らしく、居ても立ってもいられなくなったリリーが、図書館を飛び出して女子寮へ行ってしまった。
ジルがポツンと言う。
「ネルさんが体調を崩すなんて珍しいよな。何かの病気ならシーナ先生のところへ駆け込むはずだけど、今日偶然医務室に立ち寄った時は先生は何も知らないって言ってたぜ」
レオがペンを置いて言う。
「なら肉体的疲労か、あるいは精神的なものになるのか? 学イチを獲得して喜んではいたがなぁ」
外はすっかり暗くなっていた。依然として進まない勉強と、こみ上げる不安。ここ最近は、ネルのことしか考えてないとさえ思えた。
すると、シアが言った。
「そういえば、ネルが学イチの権利を使ったって聞いたよ。内容は知らないけどね」
「それ本当か?」
「あぁ。情報屋の獣人に聞いたから間違いない」
「サヤの情報か……なら本当なのか。しかし、俺にはずっと秘密にしているんだよな」
「うーん。君にあえて言ってないというのは不思議だよねぇ」
すると、ドタドタと階段を駆け上がる音が聞こえたかと思えば、リリーが戻ってきた。しかし、その様子から察するに、いい報告ではなさそうだった。
リリーが息を整えている間、俺は身構えた。
「みんな、聞いてほしい……! ネルさんがいない! どこにも!」
ネルがいない……?
「どういうことだ!」
「話によると、寮の自室で療養してるって聞いて、見に行ったらいなかったの。それで、友達に訊いたら、寮から出ていくネルさんの姿を見たって! しかもなんだかフラフラしてたって」
「寮から出たのか? 体調が悪いのに?」
「と、とにかく私は医務室を探してくるね」
すると、ジルが立ち上がった。
「俺は食堂を探すよ。もしかすると、腹が減っただけかもしれねぇからな」
レオが座ったまま言った。
「一応、レオファミリーに声をかけつつ、学園の広場辺りを探すことにする。シオもついてこい。後はそうだな、シアも」
すると、シアは首を横に振った。
「私はここで待機するよ。もし、勉強会組に伝えたいことでもあった場合、いなかったら困るでしょ?」
アランも、席から立ち上がる。
「まずは購買でも見に行くか。何か買いに行くのかもしれない。ユアも一緒に探そう」
勉強会組は、そのまま図書館を出て、散り散りになった。俺はポツンと取り残されて、そして思った。
ネルがいない。
……行きそうな場所か。わからない。なんで体調不良なのに寮から出たんだ?
ひとまず俺は、寮の前まで行くことにした。




