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あること

 学園生活三回目の試験までの間、俺はひたすら勉強し続けた。ネルやアランも、かつてないほど熱心に試験の準備を進めていた。シアはまぁ、いつも通りだったが。


 そして試験当日、学園全体に走る緊張感を肌で感じながら登校した。寮の近くの待ち合わせ場所でネルと合流すると、挨拶もなしに言った。


「ネル、俺が学イチを獲っても悪く思うなよ?」

「全く同じ言葉、クロードに返したいよ」

「気合い十分だな」

「今回はクロードに魔法を教えてもらったからね。自信あるよ」


 すると、勉強会組のメンバーがちらほらと集まってきた。ジルとレオ、そしてリリーは相変わらず暗い顔をしていた。よっぽど試験が嫌いなんだな。

 アランとユアは緊張してるのがよくわかる。シアは……いないな。まぁ、そのうち来るだろう。


 俺たちは、試験の内容を復習したりしながら教室へと向かった。



 昼までの筆記試験は、特に詰まることもなく解くことができた。勉強会でやった内容を復習しているような気分にすらなった。これなら、ジル達も無事に試験を終えることができるだろう。


 昼食の時間になり、食堂へ行くと、勉強会組の集まっている席を見つけてそこに向かった。心なしか、皆いい表情をしていた。


 そして、端の席に座っていたシアが言う。


「筆記はみんな大丈夫だと思うけど、真の勝負は午後からだね。今年は厳しいみたいだよ」


 すると、アランが言った。


「シア、お前も学イチを狙っているんたよな?」

「前に得た権利は、クロード達の騒動のために使っちゃったからねぇ」

「それは、その……すまない」

「謝る必要はないよ。今年は私が穫るから」


 午後からの試験が重要なのは何も成績上位者だけではない。ジルは不安そうに言った。


「クロードに言われた通りにやればなんとか乗り切れるよな?」

「あぁ。魔法なんてものは緊張したら負けだ。安定した精神状態こそが、試験突破の鍵と言ってもいい」

「あぁ、わかったよ」


 その後、勉強会組で誰が学イチを穫るのかを話し合ったり、筆記試験の復習をしながら昼食を食べた。

 試験を一大イベントとして、楽しみながら受けることができるようになったのも、全てネルのおかげだな。


 俺はふと、ネルのほうを見た。彼女とばっちり目が合うと、優しい笑顔を見せてくれた。


「ねぇ、クロード」

「どうした?」

「私が学イチ手に入れたらその、きっと……」

「?」

「いや、なんでもない。その時のお楽しみってことで」

「そうか……?」


 何を言おうとしていたのだろう。まぁ、これ以上言及するわけにもいかないし、それこそ結果を楽しみに待つことにしよう。


 午後からの実技試験も頑張れるよう、俺はしっかりと昼食を食べた。



 試験の結果発表の日になった。俺はあの日、自分のできる限りの努力はしたつもりだ。これで学イチを逃しても文句は言えないだろう。


 魔法学園はいつもよりざわついていた。足早に、掲示板へ向かう生徒達の表情は、焦りや期待、不安や高揚など様々である。


 俺はネルと合流すると、挨拶を交わし、広場へと向かった。そして、人混みをかき分け順位を確認する。十位から順番に、少しずつ上へ上へと視線を滑らせる。


 四位、アラン。


 三位、シア。


 二位、クロード。


 一位、ネル。


 俺は何度も何度も、順位を確認した。ネルが一位だ……! ハッとして視線を真隣に移すと、涙目のネルがこちらを見て微笑んでいた。


「クロード……!」

「ネル……! 一位になったんだな!」

「そうだね、信じられないよ!」

「おめでとう。負けたのは悔しいが、ネルが一位になったのは素直に嬉しいよ」


 俺はネルの笑顔を見ながら、幸せな気持ちになった。今回は二位という結果だったが……それでも、ライバルだったシアやアランを追い抜くこともできたし、これで良かったのかもしれない。



 掲示板から離れ、人けのないベンチに座り、二人で試験の結果について話し合っていた。確かにネルは、今回誰よりも努力していたように思う。


「しかしネル、とうとう学イチの権利を手に入れたわけだが……何に使うんだ?」

「それは秘密! だけど、多分その……クロードにとっても私にとっても、いいことだと思う」

「そうなのか?」

「うん。多分……ね」


 俺にとってもネルにとってもいいこと……か。まぁ、そのうちわかるってことだよな。


「まだ実感沸かないな……一位になったんだ」

「そうだな。でも、ちゃんと確認した。ネルは一位だよ」

「嬉しいな」


 ネルは泣きそうな顔でこちらを見た。

 丁度その時、ぞろぞろと勉強会組のみんながこちらへと歩いてきた。そして、ジルが俺の顔を見て言う。


「お、一位と二位がいるぞ」

「なんだよ、みんな集まって」

「飯食いに行くぞ」

「だと思ったが。行くか、ネル」


 ネルはコクリと頷いて立ち上がった。


 こうしてみると、俺たちはきっと、勉強会組という仲間たちのおかげで頑張れているのだなと実感した。リリーの気まぐれで始まった小さな会も、こんなに温かい居場所と呼べるようなものになったんだな。


 ……しかし、俺はまた気づいていなかった。ネルが学イチの権利を使ってしようとしていた〝あること〟の存在に。

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