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お前が言え

 次の日の朝、ネルと下校していると背後から声をかけられた。振り返ると、ユアが暗い表情をして立っていた。


「どうした? ユア」

「あの、クロード。男子寮でアランと会った?」

「いや、会ってない。どうやら食事の時以外は部屋から出てないらしいな」

「そうだよね……」


 すると、ネルが言った。


「やっぱり、アランくんは先日の件でクロードに申し訳なさを感じてるのかな?」

「俺にか? ……なぜ?」

「いやぁ、友達のクロードを疑ったり拘束したりすればまぁ、そうなるよね」

「そういうものか」

「うん」


 すると、ユアが小さく呟く。


「アランに会いたい……」


 俺は少し考えてから、ユアに言った。


「俺がアランを寮から引きずり出してやるよ」

「え?」

「アイツが望んでることならなんとなく分かる気がするんだ」

「アランが望んでること?」

「そうだ。アイツは多分、俺たちなりの〝話し合い〟がしたいんだと思う」


 ユアが首を傾げるも、俺はそのまま歩き出した。


「まぁ、明日まで待っててくれ」


 心配そうなユアに、ネルが言う。


「クロードを信じてくれればいいよ。アランくんもすぐに元気になるから!」


 俺は男子寮へと、急ぎ足で向かった。



 アランの部屋はここか。そういえば一度も入ったことがないな。他人の部屋に入ったのは、ジルが間違えて持って帰った教科書を取りに行った時以来か。


 そっと扉にノックをするも、返事は返ってこない。俺は仕方なく、もう一度ノックするが、返事はない。


「アラン、俺だ。クロードだ」


 すると、部屋の奥からドタドタと足音が聞こえ、扉がガチャリと開いた。中から顔を出したアランは、いつになく暗い表情をしていた。


「クロードか……なんだよ?」

「アラン、ちょっといいか?」

「……なんだ?」

「いいか、俺とお前はライバルだ。時に共に飯を食ったり出かけたり、アドバイスをし合ったりすることもあるが……」

「……」

「やっぱり俺たちが腹を割って話し合うには、〝これ〟しかないだろ?」


 俺はそう言って、アランの部屋に背を向けて歩き出した。彼も、その後から付いてくる。これで俺の気持ちが伝わったようだ。


 向かう先はもちろん、あの広場だ。一部の生徒からは決闘の場として定番とされているあの広場……。


 すると、背後からアランの声が聞こえた。


「手を抜くなんていう生ぬるい真似はするなよ……」

「当然だ。多少の痛みは我慢してくれよ」

「はは。そのつもりだよ」



 広場に着いてすぐ、俺たちはぐっと伸びをした。すっかり暗くなった辺りに、人の影はない。


「アラン、この決闘が終わったら……」

「終わったら?」

「もう、あの日のことは気にするな。むしろ、お前はネルのために俺を解放してくれた。ありがとう」

「……始めるぞ」

「あぁ」


 俺は手に火魔法を込め、アランの方へと放つ。彼もまた、火魔法で応戦してきた。俺はまた、あの侵入者と戦った時のように火魔法と水魔法を組み合わせて蒸気を発生させて視界を奪った。

 お互い何も見えない空間において、嗅覚の鋭い俺のほうが有利である……が、今日は何故か調子が悪く、アランの居場所を嗅ぎ分けることができなかった。


 俺は仕方なく、蒸気の中に闇雲に火魔法を放って牽制した。


 すると、アランが突如として目の前に現れた。そして、そのまま俺に殴りかかる。俺はそれを回避し、言った。


「レオよりキレが悪いな」

「くっ……」


 アランはそのまま水魔法で俺を攻撃するも、それを火魔法で相殺し、アランを煽る。


「シアよりも勢いがない」

「これならどうだ!」


 アランは低姿勢の状態から回し蹴りをし、それを回避した俺の顔面目掛けて拳を放ってくる。次々と繰り出される攻撃を全て受け流すと、アランが声を荒らげた。


「手を抜くな、クロード! お前は俺が憎いはずだ! なら、好きなだけ俺を痛めつければいいじゃないか」

「違うな、アラン」

「……なんだよ?」


 アランの息はすでに荒く、そのまま弱々しく地面に座り込んだ。


「俺はお前のことを憎んではいない」

「……」

「逆に、魔獣である俺が憎いか?」

「……いや、もうそうは思わない。ただ……」

「ただ?」

「すまなかった」


 アランはゆっくりと立ち上がると、俺の目を見た。


「謝る必要はない。ただ、本音が聞きたかっただけだ」

「……そうか」

「こうしている間にも、試験の日はは迫っている。それに、ユアがお前に会いたがってたぞ」

「ユアが?」

「そうだ。半泣きで俺に相談してきたぐらいだ」

「すまなかったと言っておいてくれ」

「お前が言え」


 俺は服についた埃を払うと、寮の方へと歩き出した。その少し後を、アランが着いてくる気配がする。


 お前は間違いなくライバルだ。今回の学イチは俺が獲ってしまうかもしれないが、悪く思うなよ。


 やけに静かな魔法学園は、試験の日を待ち望んでいるようにみえた。

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