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失言

 次の日、授業が終わるなり、いきなり俺の周りに三人が集まってきた。そして、当たり前のように教室を後にし、図書館へと向かう。つい昨日までは初めましてだったのに、よくそこまでできるなと感心した。それと同時に、安心もした。


 ネルもどうやら今日の勉強会を楽しみにしていたようだ。



 そして、図書館の三階に集まり、昨日と同じ配置で着席する。ネルは立ち上がって、教科書を開いた。



「昨日の続きからするね。ジルくんは……教科書持ってる?」


「あぁ、バッチリだぜ!」



 俺が「珍しいな……」と呟くと、リリーはコクコクと頷いて同意していた。教科書を持ってきているというだけで、彼のやる気が高いことが証明された。


 しかし、その直後に判明した。彼が持ってきた教科書は「薬草学・二」だったのである。俺たちが今やっているのは「薬草学・三」の範囲だ。よって、ジルは泣く泣くリリーに教科書を見せてもらっていた。



 ネルは、気を取り直して授業を始める。




 どのくらいの時間が経っただろうか。いつの間にか外は暗く、皆少し疲れている様子だった。それを見たネルが提案する。



「そろそろお開きかな」



 皆それに同意し、教科書などを鞄にしまいはじめた。今日教わった範囲は次の試験でもかなり重要とされている。なので、しっかり復習できて良かったと思う。



 すると、リリーが挙手した。



「ねぇ、提案があるんだけど。この勉強会、定期的に開催しない? もちろん、みんな……特にネルさんがよければだけど」



 ジルはそれに同意し、俺も黙って頷いた。ネルは、少し考えてから不安そうに言った。



「私も……それに参加していいの?」



 リリーは力強く頷く。



「もちろん! ネルさんがいなかったら勉強会成り立たないし」


「そっか! なら、私も仲間に入れてもらおうかな!」


「うん、よろしくね!」



 ネルは嬉しそうだった。これは、勉強会が好きというよりは、皆とこれからも関わっていけることが嬉しいんだな。俺にはわかるぞ。



 ……そしてふと、リリーが言った。



「私達はネルさんが〝呪われている〟ことなんて、全然気にしてないから」



 俺は思わず聞き返した。



「呪われている? ネルが?」



 俺の発言に、急いでジルが割り込んできた。



「リリー、お前っ……! クロード、なんでもないんだ。気にすんな! ただのくだらない噂だからさ!」



 リリーもすぐさま訂正する。



「えっと……そうそう! ごめん、信憑性のないただの噂話だから! 気にしないで!」



 俺がふと、ネルの方を見ると、彼女は俺たちに背を向けていた。



「ネル……?」



 その途端、彼女は走って図書館を出て行ってしまった。その表情はよく見えなかったが、確かに泣いていた。突然すぎる出来事に、頭が追いつかない。


 俺は、驚きのあまり彼女を追いかけることができなかった。ただ、その場の空気がしんと静まり返り、しばらく誰も、何も言わなかった。



 やっと口を開いたのはジルだった。



「クロード、その……本当にくだらない噂話なんだ。あんまり信じなくていいから」


「噂話……一体どんな?」



 ジルはしばらく迷ってから、渋々説明してくれた。



「この学園のほとんどの人が知っている話で……ネルさんの家は有名な貴族の家だったんだ」



 ────しかし、ある日その家に住む人々が次々と姿を消し、何故か幼い少女……ネルだけが一人残ったという。その後、親戚たちはその現象を恐れて、ネルを呪いや魔法に精通した者たちのいる魔法学園へ入学させた。


 つまり、ネルを「呪われた子供」として、魔法学園に押し付けたということだ。しかも、学費は将来彼女が返済しなければならないという。



 その話は次第に形を変え、魔法学園中に浸透したという。



「……まぁ、そんな話だ」


「くだらないな。この学園の奴らはそんなくだらないことに囚われているのか?」


「それには俺も同意だ。だからクロード、その。ネルさんのことは嫌いにならないでやってくれよ?」


「当たり前だ」



 これが、以前からジルが言っていた〝あの噂〟の正体か。蓋を開けてみれば本当に大したことないな。


 俺は、半泣きで話を聞いていたリリーに問いかけた。



「お前はその噂について、どう思っているんだ?」


「もちろんどうでもいいと思ってるよ……だって、ネルさんはネルさんだし」


「だよな……うーん」



 すると、リリーはとうとう泣き出してしまった。



「ごめん……本当に泣きたいのはネルさんのはずなのに」



 すると、ジルはすこし冷たい口調で言った。



「その通りだよ。ネルさんはきっと、それでつらい思いをしてきたんだろうからな」


「…………」


「でもリリー、まだ弁明のチャンスはあるだろ! 本人に直接会ってそのことを謝ればいいんだ! 肝心のクロードがその噂を気にしていない時点で大丈夫だろ」


「でも、きっともう会ってくれないよ」



 リリーは下を向いて黙ってしまった。ジルもそれを見て動揺しており、同じく黙り込んだ。


 こんな時どうすればいいんだろう。ネルとはまた話したいし、リリーやジルとも仲良くしていてほしい。こういう時に誰かに相談できればいいんだがな。そんな人はいない……いや、待てよ。いるかもしれない。



 困った時に、めんどくさそうな顔をしながらすべてを解決してくれそうな人が────。

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