第十六話 研究の成果
「さて、こいつの出番かね?」
バサっとおもむろにシートを引き剥がすハカセMr−Ⅱ。
その先にあったのは、
「これは10式?」
「いや、量産型に"少々"手を加えたものだよ」
確かに、試作型にあった無骨な感じが、少々洗練とした見た目になっている。
何より、
「携行する武装が豊富だな…」
アサルトライフルは元より、ロケットランチャーを多数詰め込んだ重武装機体。
反対に、抜き身の刀のようなシャープな機体もあり、武装も剣一本という実に潔い機体まである。
「ま、いろいろとりそろえたからね。何せ戦闘データには事欠かなかったからねえ」
「まあ、色々あったからな…」
「で、アイル君にはこれだね」
「これは?」
そう言ってハカセMr−Ⅱが渡したのは、銃剣のような武装。それも、人用のサイズではなく、明らかに機体に装備する馬鹿でかいサイズのおおよそ人が持つには適さない大きさのものだ。
「忘れそうになるが、アイル君は元々機体であったからね。こちらの武装の方が取り回しがいいだろう」
事実、その銃剣を片手で軽々と振り回すアイル。
人間サイズに何故か縮んでしまったが、その膂力は、量産型の重武装機体ですら遠く及ばないほどのものであるからだ。
「使い方はわかるかい?」
「はい、なんとなくわかります」
「さすが天才」
アイルはアークの操縦の経験からもわかる通り、非常に飲み込みが良く、土壇場にも強い。
「困ったらこれも使いな」
「はい、ありがとうございます!」
と、武装につけるオプションパーツのようなものもいくつか受け取るアイル。
「俺はこいつで出るか」
ハルは先ほどの刀一本のみの機体を選び、
「私はこれかな?」
ミカは見た目から高火力の機体にさらに武装をガン済みし、
「ふむ。我も参加していいのか?」
「そうだね、手伝ってもらえると助かるね」
「なら、これでいいか」
と、多声の王は一番ベーシックな機体を選んだ。
「さて、では敵さんもお待ちかねのようだし、出陣といこうじゃないか」
格納庫のハッチが開き、
「そいじゃ、お先〜」
と気の抜けた言葉と共にトリックスターが敵陣のど真ん中に突っ込んでいった。
「俺は先頭のやつを狩るから、ミカは抜けてくる敵の処理を頼む」
「了解!」
「アイルは俺についてこい!」
「わかった!」
「我は適当に動かせてもらおう」
チームワークが取れてないようでいて、的確に敵を処理していく面々。
量産型の動きは試作型とは比べ物にならず、パワー、スピード、正確性、豊富な武装。
どれをとっても文句なしだ。
そして何より、
「えい!」
可愛らしい掛け声で振り下ろされたアイルの銃剣は敵を真っ二つにし、
弾丸として打ち出せば、正確に全てのコアを同時に打ち抜き、一瞬で敵の機能を停止させる、模範的とも言える戦い方だった。
「補給が楽だとこんなにも戦いやすいとはね」
オーバーヒートしたガトリングガンを放り投げ、次の武装を手に取りながら全体のサポートにまわっているミカ。以前対峙した時とは何もかも状況が違っていた。
「さて、俺も多少はいいところ見せないとな」
と、言いながら、すでに二桁以上の敵を切り捨てているハル。
使われているブレードは光子収束型で、エネルギーさえあれば刃こぼれを気にせず戦えるという代物だ。
「ふむ。玩具かと思いきや、なかなか面白いじゃないか」
と、マイペースに敵を狩り続ける多声の王。
殲滅スピードこそ他のものより遅いが、一般の機体、一般兵装。何より、なんの訓練も受けていないものが挙げる戦果としてはこれはこれで異常だった。
ーーーー
「なんなんだ、こいつら・・・」
「あれ、結構大変なのよ?あのサイズまで成長したデブリを処理するのは・・・」
研究室のモニター越しに、愕然とする境界の管理者たち。
「まあ、以前のワタシ達なら尻尾を巻いて逃げるしかない状況だったが、何せイレギュラーが多くてねえ」
「本当にのう。試作型だけでも作るのが大変だったというに、ハル達のおかげでどんどん新しいものが生まれておる。加えて、調律者達の存在じゃ」
「えへへ〜、それほどでも〜」
「・・・あまり調子に乗らせると危険じゃが、こいつらの発明品は特級品ばかりじゃからな。いい意味でも悪い意味でも・・・」
「そんなに褒めても、新兵器しか出ないよ?」
「・・・相変わらずの作成能力じゃな。それは今どこに?」
「あれ」
そう言って調律者達が指差すのはまたもや変なメガネを装着されているタケルとコードに繋がれた胃薬。
「・・・あれはなんじゃ?」
「ん〜、補給物資?」
「なぜ疑問系なんじゃ・・・まあ、大体想像はつくが」
タケルの視覚を通して、エネルギーや弾薬に変換したものを前線に補給しているのだろう。前、トリックスターのやったことの応用である。
「さて、特にあれも必要なくあらかた片付いたみたいだけど、あと掃除の方が大変そうだねえ」
そこには巨大脅威の残骸が山と積み上がっていた。
「ま、軍の連中が嬉々として回収するだろうさ。素材の山だからね。ワタシ達は美味しいところだけ回収しようかねえ」
ーーー
「で、では、失礼する・・・」
「ああ。“報奨“の方もよろしく頼むよ?」
「も、もちろんだ・・・」
顔を引き攣らせた軍高官を見送るハカセMrーⅡ。
「・・・これがハカセ案件というやつか?」
「・・・でも、ハカセって男性じゃなかったでしたっけ?」
「・・・正直、もう情報が錯綜しすぎてな。上も把握しきれてないんだよ」
「・・・大丈夫なんですか、それ?」
「・・・大丈夫ではもちろんないが、手段もなく、こうも戦果を上げられては何も言えんさ」
「・・・確かに・・・」
ヒソヒソ話をしながら去っていく中間管理職達を気にもとめず、
「さて、これだけあれば何ができるかねえ?」
「これは、すごいものができそうな予感!」
「自爆装置の質も強化しとく?」
「「やめてくれ、頼むからそれだけはやめてくれ・・・・」」
胃があるのかどうかはわからないが、顔色・・・もよくわからない境界の二人が体調を崩しそうになっている中、
「さて、俺も何か考えるか」
と、巨大脅威のコアの山を前にして考え込む一同であった。




